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2024年3月、日銀はついにマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを断行。さらに、7月には0.25%の追加利上げを決定しました。これを受けて10月1日から、大手銀行が軒並み住宅ローン変動金利の基準金利を0.15%引き上げました。

( Money )

変動金利アップで借換・新規借入が急増!? 住宅ローンの現場でいま起こっていること

OCT. 11, 2024 11:30 Updated DEC. 23, 2024 17:16
Text : 春奈
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2024年7月の日銀の追加利上げを受けて、ほとんどの金融機関が住宅ローン変動金利の基準金利を引き上げました。住宅ローンは長期高額の借り入れであることから、0.15%程度の利上げでも返済額に大きな影響が出てきます。

変動金利アップを受けて「ラストチャンス」とばかりに借り換えや新規借り入れを検討する人も増えているそう。各銀行の金利状況はどうなっているのでしょうか。また、借り換えや借り入れをするならいつがベストなのでしょうか。住宅ローン比較診断サービス『モゲチェック』を運営する株式会社MFSの塩澤崇氏に聞きました。

  • ※画像はイメージ

多くの金融機関の住宅ローン金利が約0.15%上昇! ただし例外も

――2024年7月の日銀の追加利上げを受けて、10月以降の各銀行の金利状況はどうなっていますか?

10月1日、多くの銀行が住宅ローン変動金利の基準金利を0.15%~0.25%引き上げました。多くは基準金利の引き上げ幅をそのまま適用金利の利率に反映していますが、一部例外的な動きをしている銀行もあります。

例えば、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は、新規ユーザー向けの適用金利を据え置きました。三菱UFJ銀行は基準金利を0.15%引き上げたものの、引き下げ幅を0.15%拡大したことにより、適用金利は従来の0.345%を維持しています。一方のみずほ銀行は基準金利も引き下げ幅も変えておらず、適用金利は0.375%のままです。

ただし、みずほ銀行は新規ユーザー向けの基準金利と既存ユーザー向けの基準金利の2本立てになっており、既存ユーザー向けの基準金利は0.15%引き上げられました。そのため、今新規向けの適用金利0.375%で借りたとしても、2025年7月からは金利が自動的に0.525%に上がります。

  • 各銀行の基準金利一覧※MFS提供

金利アップで借り換え・借り入れ需要が急増

――金利アップを受けて、住宅ローンの借り入れを検討している人、すでに借りている人はどのような行動を取っているのでしょうか?

SNSを見ても「いよいよ変動金利が上がった!」と、住宅ローンユーザーが戦々恐々としている様子がうかがえます。住宅ローン金利が上がり、今後も上がり続けるかもしれないという状況を受けて「今のうちに見直そう」と、これまであまり借り換えを考えていなかった人も重い腰を上げ始めている印象です。

住宅ローンの借り換えは特別なきっかけがないと後回しになりがちですが、金利アップによって「今じゃなくてもいいや」から「今やっておかないとまずい」にユーザーの思考が変わったようです。

『モゲチェック』への借り換えの相談も通常の3倍程度に増えており、とある銀行との協業で実現したモゲチェック限定優遇金利0.29%(2024年10月末まで)にもお問い合わせが殺到しています。

2022年頃に『モゲチェック』を利用して住宅ローンを組んだ方からの借り換えの相談だけでなく、数年前に一度借り入れの相談をされたものの、借り入れを保留にされていた方からの相談も増えています。

いよいよ変動金利が上がり始めたのを見て、住宅購入を検討していた人がラストチャンスとばかりに住宅購入を決心しているとみられ、住宅ローンの駆け込み需要で住宅購入者も増える可能性があります。

今後も金利は緩やかに上昇見込み

――今後の住宅ローン金利の見通しを教えてください。石破新政権発足の影響はありますか?

まず日銀の政策金利についてお話します。物価上昇率が賃金上昇率を上回っており、実質賃金はマイナスではあるものの、賃金が前年同月比で3%上がっており(2024年8月実績)、賃金が改善傾向にあります。

賃金上昇を起点とした経済のサイクル(賃金上昇⇒需要増大⇒インフレ)が回りつつあることから、今後も緩やかな利上げが続くとみています。具体的には2025年末から2026年のはじめに政策金利が1.0%程度になるというのが私の見立てです。

石破首相も岸田路線を踏襲して株価を意識した金融政策を行う可能性が高いため、今のところ新政権発足による大きな影響はないと考えられます。

この予測を踏まえると、住宅ローン金利は0.75%程度上がり、現在の0.5%前後から1.25%前後にまで上がる可能性があると考えておいたほうがいいでしょう。

一方、金融機関間での新規ユーザー向けの融資合戦は依然として熾烈です。金利が1.25%まで上がったとしても、ペア連生団信の上乗せ金利の引き下げや無料付帯など、住宅ローンに付帯する団信(団体信用生命保険)を充実させて差別化を図る動きが顕著になっていくのではないでしょうか。

つい金利にばかり目がいきがちですが、住宅ローンを選ぶ際は団信の充実度もしっかりと比較した上で借りることが大切です。

借り換え・借り入れは早いほうがいい

――今後の住宅ローン金利の見通しを踏まえて、住宅ローンの借り換え・新規借り入れのベストタイミングはいつでしょうか?

借り換えについては、現在よりも好条件の住宅ローンがあるならできるだけ早く行動を起こしたほうがいいでしょう。未返済で残っている元本が大きければ大きいほど借り換えメリット額も大きくなるので「いかに多くの元本が残っている状態で、高金利の住宅ローンから低金利の住宅ローンに乗り換えるか」が、借り換えのポイントになります。

新規借り入れ(住宅購入)についても、状況が許すなら早いほうがいいと考えます。首都圏の好立地の物件を中心に住宅価格の高騰が叫ばれていますが、高いからと先送りにするとさらに値上がりする可能性もあります。

インフレが起きている中、不動産価格も今後、年2%ずつ上昇してもおかしくありません。また、住宅購入を待っているあいだに払わなければならない家賃は掛け捨てコストです。一方、住宅ローンは積立投資なので、限られた資金をどちらに振り向けたほうがいいかを考えると、やはり資産になる住宅ローンではないでしょうか。

変動金利の上昇は今後も緩やかに続いていくと思うので、首相や日銀総裁の発言、日銀の金融政策決定会合についての報道などはしっかりとウォッチしておくことをおすすめします。これからの時代、経済ニュースにアンテナを張り、将来の利上げに先回りして備えておくことがとても大切です。

塩澤崇(しおざわ・たかし)/株式会社MFS 取締役CMO

2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、モルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスに参画。モーゲージバンクの設立やマーケティング戦略立案、当局対応を担当。2009年、ボストン・コンサルティング・グループで、金融機関向けの経営コンサルティングに従事した後、2015年9月より現職。

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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。