4年連続でミシュランガイドに掲載されている名店「鮨由う 銀座」(すしゆう)や、半年先まで予約で席が埋まっている人気店「鮨結う翼 恵比寿」(すしゆうつばさ)。これらの系列店で修練を積んだ、若き大将、黒田直輝氏がにぎるカジュアルな江戸前鮨「鮨結う 遥」(すしゆう はるか)が、2024年12月19日、東京・御徒町にオープンした。
ミシュラン1つ星掲載の「鮨由う 銀座」の大将、尾崎淳氏はテレビなどにも出演している有名料理人でもある。彼の薫陶を受けた愛弟子、黒田氏による"黒田劇場"にさっそく潜入してきた。
にぎり鮨の提供前から黒田劇場の一興に熱くなる
東京メトロ銀座線 末広町駅や、JR御徒町駅から徒歩圏内にある「鮨結う 遥」は、カウンター9席、テーブル全6席からなる静謐で清らかな空間。L字型カウンターに立つ、大将、黒田直輝氏のきびきびとした所作や真剣な表情が、お客たちの期待を高める。
夜の営業は2部制で、開始時間になると黒田氏が爽やかな笑顔でお客たちに語りかけ、一斉に先付けが提供される。
この日はシャンパーニュにも合う濃厚でなめらかな嶺岡豆腐、もずく酢、そして肉厚で歯応えのある三陸産わかめのぽん酢。できたてのふんわりとしたアオサ入りの卵焼きや、三陸産わかめのお代わりまでいただいていると、とろりとなめらかな茶碗蒸しが提供される。黒田劇場の幕が上がる。
黒田氏は目の前のお客さんの目をしっかりと見ながら、「茶碗蒸しは半分まで味わったら、最後まで食べ切らずに、器を一度、カウンターに戻してくださいね。後からシャリと自家製の海苔醤油を加えますので――」と説明する。何やら仕掛けが用意されているようだ。
口の中には穴子とクリームチーズの旨みがそれぞれ際立った茶碗蒸し。真綿に包まれたような幸せな口福だ。名残惜しい気持ちでいったん器をカウンターに戻し、追加の素材を入れてもらい、口に含むとお客たちは皆、目を見開いた。
もはや茶碗蒸しではなく、殊勝な鮨に変わっているではないか。茶碗蒸しのやさしい味わいの中で、海苔の芳醇な磯風味とシャリが見事に鮨を表現している。鮨をにぎる前から黒田氏のサプライズに胸が熱くなる。
次は身がふっくらした太刀魚の焼きもの。少しだけ発泡を含んだ「風の森」(油長酒造・奈良)を合わせて。生酒ならではの溌剌(はつらつ)さと柑橘風の味わいが、上質な太刀魚の旨みを一層引き立てる。日本酒は約10種揃うが、「風の森」と「醸し九平次」はプレミアム扱いで、おひとり様1杯のみ注文できる。
お酒は他に日本ワインの甲州品種やシャルドネの白ワイン、ビール、焼酎、ウィスキー。そして日高見の日本酒とレモンリキュールをブレンドしたオリジナルの「お寿司屋さんのレモンサワー」も。ノンアルコールにも「特別焙煎ほうじ茶」といったプレミアムティーがラインアップ。日本酒とワインは持ち込みもできる(赤ワインはNG)。
これらドリンクはすべて飲み放題。前述の前菜の品々に11カンの鮨がつくおまかせコースが13,200円というから驚き。これまでの「鮨ゆう」系列店と比較すると、コースの価格が27,500円(ドリンク代は別、「鮨由う 銀座」)、16,500円(ドリンク込み、「鮨結う紬 六本木」)、15,000円(ドリンク込み、「鮨結う翼 恵比寿」)と系列店の中で同店が最もリーズナブル……そうなると、気になるのが鮨のクオリティだ。