なかなか新品を買うことも難しい高級腕時計を求めて、中古市場に出回っている商品をチェックすることも珍しくない。時計愛好家にとって、2024年の市場はどのように映ったのだろうか? この記事では、2024年1月~11月のヤフーオークションで取引された高級腕時計のうち、いくつかブランドをピックアップして1年間のハイライトと総評をお届けする。
まずは高級腕時計の代名詞、ロレックスを振り返る。中古品でも高値で取引されるブランドだが、ひも解いてみるといくつかは値段と価値のバランスが微妙なものも。時計ジャーナリストの渋谷康人氏に解説してもらった。
依然バブルは継続、落札額に疑問が残る二次流通品も
今回はオークファンプロPlusにて調査したデータ結果を参照。2024年1月~11月の期間、ヤフーオークション上で取引されたロレックスの商品(最低金額8万円以上)を価格順にランキング化した。
なお、ここで取り上げている商品名は基本的に出品時の表記に沿っている。
まとめてみると、取引されたロレックスのうち月別に最も高値が付いたモデルは、1月がアイスブルーダイヤルのデイトナで1,500万円、7月に箱や証明書といった付属品つきのシグマアルファが995万1,000円、そして11月にメテオライト文字板のデイデイトが3,069万4,000円といった顔ぶれだった。年間最高値となる4,616万3,637円で落札されたモデルは、オレンジサファイアベゼルのデイトナだった。
年間90万本生産されているという噂のあるロレックス。渋谷氏によると、1990年代に巻き起こった機械式時計の流行に影響されて世界的な供給不足に陥っている状況は現在も変わらず、"バブルが崩壊した"と言えるほどではないという。
「時計全般に関していえば、やはり中古品の価格のほうが新品の定価より安くなるのが一般的です。ここまでのプレミア値がついていることを、どう考えるか。ご自身のお財布と相談して、もし『高いな』と思ったら、無理をするのはやめましょう」
中古品のメリットは、入手困難なモデルをすぐに手に入れられる点だ。しかし、修理部品の保有期間の目安である25年を過ぎているモデルは、ブランド側が修理を受け付けてくれない可能性もあるため、壊れたときのリスクが高い。さらに、内部のムーブメントも現行品のほうが確実にクオリティが高く、「ロレックス自身が正規のメンテナンスをして1年間の保証を付けたCPO(Certified Pre-Owned)ロレックスを購入するか、正規販売店で新品の予約リストに登録して気長に待つ方が良いと思います。中古時計の販売店で地道に探すのも手です」とアドバイスしてくれた。
「例えば、1月に1,500万円で落札されたアイスブルーダイヤルのロレックスは、現行品の価格が1,099万2,300円。お金があって今すぐ欲しいという方ならいいかもしれませんが、もし投資価値として考えているならおすすめはできません」
「古いものも新しいものも、メカニズムに真面目、というのがロレックス。定価で買うのなら、世界でも最高の時計ブランドです。ただ中古品がそうだ、とはいえません。ひとつひとつコンディションも価値も違いますから」
「デイトナ オレンジサファイアベゼル」が4,500万円超の値を付けたワケ
2024年11月までに取引されたロレックスのうち、最も高値をつけた「デイトナ オレンジサファイアベゼル」(リファレンス:116588SACO)は、ゴールドのケースに黒いダイヤルを組み合わせ、ベゼルにもインデックスにもオレンジサファイアを採用したラグジュアリーなモデルだ。
これほどの高値を付けた理由を渋谷氏に尋ねると「このモデルはシークレットモデルといって、カタログには載っていないんですよ。誰かの特注品や本当に数が少ない、半分受注生産のようなものです」と答えてくれた。
「特にこのオレンジサファイアモデルは、ベゼルにセッティングされている宝石も色を揃えようと思うとかなり高くなります。希少性、レア性は間違いないので、この値段で取引されるのは納得できます」
依然バブルが続くロレックスの二次流通市場、投資価値を考えるなら、妥当な取引額であるかどうかを見極めることが必要そうだ。