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スタンフォード大学医学部やフェイスブック(現メタ)社など、世界の名だたる企業が、リーダーシップ教育に牧場研修を採用してエリートを育成しています。札幌で自身の農場を持ち、日本での牧場研修の第一人者として活躍する小日向素子さんの著書『ナチュラル・リーダーシップの教科書』の内容を一部ご紹介します。

( Life )

世界のエリートから必要とされる「牧場研修」の効用とその中身

JUL. 28, 2024 11:00 Updated DEC. 23, 2024 21:29
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スタンフォード大学医学部やフェイスブック(現メタ)社など、世界の名だたる企業が、リーダーシップ教育に牧場研修を採用しています。

日本の牧場研修の第一人者として活躍する小日向素子さんの元には、経営者、役員、幹部候補、そして、識者の方々が、何度も札幌の牧場に足を運んでは感覚を磨き、自分を取り戻しています。

なぜ、牧場研修は世界のエリートから必要とされ、どのような効果があるのでしょうか? 小日向さんの著書『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(あさ出版)の内容から解説します。

  • ※画像はイメージ

■世界のビジネスエリートが自然から積極的に学びを得る背景

自然からの学びを重視するというスタンスは、欧米で積極的に研究・導入されてきました。スタンフォード大学医学部もその1つです。

アメリカの医療機関では、「医師がカルテばかりを見て目の前の患者を見ない」といった問題が頻発しています。

本来であれば、医師は目の前の患者を観察し、言語化されない内面を瞬時に汲み取って、適切に対応することが求められます。しかし、それが行われていないために、求められるケアができていないのです。

そこでスタンフォード大学医学部は、「患者を機械的に扱わない」「医師としての感覚を研ぎ澄ます」「ストレス低減」といった目的で、2005年に牧場研修を導入しました。

馬と感覚でやりとりをする体験を通じて、自らの感覚を研ぎ澄ましていくのです。同時に、集中力の強化も図るそうです。救急患者を受け入れた時は、医師の1分1秒の判断が生死を分けるため、「10秒を10分と感じるような集中力」が求められます。馬と対峙する経験を重ねることで、このような集中力を身につけるというわけです。

私が提供しているナチュラル・リーダーシップを身につけるための牧場研修も、ここ数年、参加者が増えてきました。

激動の時代において、多種多様な環境に対応できるリーダーシップは組織、個人問わず必要とされ、自然から学びを得ることの大切さに人々が気づき始めたのでしょう。

最初に牧場研修を本格導入してくださった企業は、資生堂でした。

幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学ぶ、育成塾の企画運営を担当していた田岡大介さんは、牧場研修を選んだ理由を次のように述べています。

社員の8割が女性、国内における女性リーダー比率30%以上(2017年当時)という資生堂ですが、女性リーダーの多くに「女性がリーダーをやるのは大変。男性のようにはできない。偉人でなければできない」といった「意識(思い込み)」があったそうです。

  • ※画像はイメージ

「彼女たちのある種の思い込みを解きほぐし、意識変容していくには、決まりきった正解を真似ていくような研修ではなく、自分の個性や強みに自分自身で気づく、あるいは自分を縛っている価値観や思い込みに気づくことで、自分らしさをコアに据えたリーダーシップを発見、体現する必要があると考え、探していました。自分の思考だけでなく、身体感覚、感情に全身全霊で向き合う牧場研修こそが、ふさわしいと思ったのです」

実際、研修を終えた幹部候補生たちの姿を見て、当時の社長はたいへん驚かれたそうです。ひと目でわかるほど、表情が変わっていたとのことでした。

最近は、俳優や漫画家、音楽家など、アーティスティックな仕事をしている方々も、牧場研修にいらっしゃいます。

牧場研修を横展開し、ご自身と組織の成長のために活用されるケースもあります。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』等の作品を世に出した著名な編集者、佐渡島庸平さんは、非常に存在感のあるリーダーでした。

起業家仲間と初めて牧場にいらした時は、強い態度で馬と接するシーンが目立ち、ほかのメンバーから、圧の強さをフィードバックされていました。この経験を通じて、佐渡島さんは、自分が無意識のうちに周囲にプレッシャーを与えていることに気づき、「いかにして自分の存在感を消すか」「どうすれば“いる”だけで相手の力を引き出せるか」を追求されるようになりました。

■自分本来の能力を取り戻し、感覚を目覚めさせる

自然の中での研修が、なぜ、これほどまでにビジネスエリートの学びの場となっているのか。

この点をもう少し具体的にご理解いただくために、ここで1つ、牧場研修で行う簡単なワークをご紹介します。

自然に敏感になってもらうための、「音いくつ」というワークです。

とても簡単なワークなので、ぜひチャレンジしてみてください。(3)の共有が大事なので、できれば複数人で同時に行い、15分くらいかけて感想を話し合ってください。

日常生活に気づきを与えてくれる「音いくつ」のワーク
(1)3分間、目を閉じて、聴覚に集中する。
(2)聞こえてきた音をできるだけ細かく記憶する。
(3)目を開けて、周りの人と音がいくつ聞こえたのかを共有する。
※おひとりで行う場合は、(2)のタイミングで紙に書き出してみましょう。

  • ※画像はイメージ

普段、私たちは日常の中で、「自分に関係する音」しか意識していません。

いつも仕事をしている場所で「音いくつ」のワークをすると、あなたの周りには無数の音があふれていることに気づくはずです。

「いかに自分の聴覚が鈍っているか」
「人と違うか」
「どのような癖があるか」

といったことを認識できます。それと同時に、日々の生活の中で、実にたくさんの感覚を切り捨てていることにも気づくでしょう。

複数人で同時にワークを行っても、10種類以上の音が聞こえる人もいれば、数種類しか聞こえない人もいます。また、同じ音であっても人によって聞こえ方や印象が変わることもあります。一見すると同じ場所でも、立ち位置が少し違うだけで、聞こえる音が変わることもわかるでしょう。

「聞く」という行為は、周囲の音が自然と耳に入ってくるため、受動的です。受動的ですから、他の人と自分の「聞こえ方」はだいたい同じはずなのですが、「音いくつ」のワークを行うと、音を受け取った時に、他者と大きく違いが出る、また、聞こえた音にバイアスをかけて解釈している、ということに気がつきます。

このことは、職場での自分の「聞く」行為の在りように、示唆を与えてくれます。

リーダーは、相手の言っていること、あるいは、発している音を、よく聞き、理解する必要があります。

その際、自分がどれだけ多く聞くことができているか、いかにバイアスをかけずに受け取れているかが問われます。「音いくつ」のワークで得た気づきはそのまま、現場での“聞き方”に応用することができるというわけです。

このワークでもわかるように、人間はどうしても、バイアスにとらわれたものの見方や考え方をしてしまいます。

本来、人は自分の感覚で、ありのままの自分や他者、周囲の環境を捉える力を持っているのですが、その感覚に自分で蓋をしてしまっているため、活用できていないのです。

世界のビジネスエリートは、この弊害に気づき始めています。人間本来、自分本来の能力を取り戻すために、今こそ、自然界の力を借りて、学び直す必要があるのです。

***

リーダーは日々様々な人たちの声を聞き、事象に対面し、知らず知らずのうちに、また何かしらのバイアスにとらわれてしまったり、感覚が鈍くなってしまったりすることもあります。

自分の感覚に敏感でありましょう。

小日向素子

株式会社COAS Founder,Owner。東京都生まれ。国際基督教大学卒業。NTT(日本電信電話株式会社)入社後、外資系企業に転じ、マーケティング、新規事業開発、海外進出等を担当。2006年、グローバル企業の日本支社マーケティング部責任者に、女性として世界初、かつ最年少で就任。2009年独立。新たな学び・成長プログラムの開発を始動し、馬と出会う。2016年株式会社COAS設立。欧米各国の馬から学ぶ研修を巡り、米国EAGALA認定ファシリテーター取得。同時に、組織開発、リーダーシップ、コーチングを学び、スイスIMD Strategies for Leadership修了、キャリアコンサルタント試験合格、ICF認定コーチングコースアドバンスト受講。2017年、札幌に牧場を持ち、馬から学ぶリーダーシップ研修を導入。株式会社資生堂をはじめ様々な業種の企業研修として活用されるほか、エグゼクティブ、リーダー、起業家等、延べ2000名を超える受講者を輩出している。本書が初の著書。

『ナチュラル・リーダーの教科書』(小日向素子 著/あさ出版 刊)

ありのままの自分で、自然や他者の一部であるという感覚に基づいて発揮する本来のリーダーシップ=「ナチュラル・リーダーシップ」。欧米で高い支持を集め、AppleやFacebook(現Meta)、資生堂などの有名企業がリーダー研修として取り入れている人材育成法「牧場研修(ホースコーチング)」では、馬や自然との関わりを通し、このナチュラル・リーダーシップを学ぶことができます。本書は、ナチュラル・リーダーシップを身につけられる、日本で初めての書籍。しなやかで柔軟な「感覚」を磨く9個のワーク付きです。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。