毎回ユニークな時計デザインの企画で来場者を楽しませてくれる東京・原宿の「Seiko Seed」。今回は、セイコーの機械式腕時計「キングセイコー」を昭和の漫画感たっぷりのヒーローとして紹介する『駆動せよ!超戦士キングセイコー』展を開催中だ。概要はすでに別記事『セイコー、キングセイコーの魅力を伝える展覧会「駆動せよ!超戦士キングセイコー」』でお伝え済みだが、ここではその見どころをより詳しくご紹介しよう!
- 特設サイト:駆動せよ!超戦士キングセイコー(https://www.seiko-seed.com/kingseiko/)
- 会期:2024年7月19日~9月23日 11:00~20:00(会期中は無休、入場は19:45まで)
- 入場料:無料
- 会場:Seiko Seed(東京都渋谷区神宮前1-14-30 WITH HARAJUKU 1F)
「動け! 俺の回転錘(カイテンスイ)!!」
今回の企画化に伴い、セイコーウオッチは『超戦士キングセイコー』のコミックを作成。原作を同社が担当し、漫画にはキャラクターイラストを得意として漫画家としても活躍中の鈴木夏菜氏を起用した。
会場の「Seiko Seed」の壁には一面には、そのコミックのストーリー部分(全42ページ分)が並ぶ。
また、タイトルロゴや登場キャラクターのデザイン、設定とストーリーの詳細などすべて作り起こしだ。それらの端々には、思わずとクスりとさせられる仕掛けが仕込まれている。
たとえば、主人公「清戸(せいこ)ケースケ」が変身する「キングセイコー・KSK」と、いわゆる2号キャラ「西光寺九郎(さいこうじくろう)」が変身する「キングセイコー・KS1969」には、昔のヒーローロボのド定番イメージであるカットイラストを用意。子ども心に「こんな中身で動くのかいな」と思ったものだが、その雰囲気もしっかり再現されている。
絵柄こそ、かわいらしさと懐かしさを感じさせるが、セリフは妙に説明的だ。たとえば、キングセイコー・KSKが敵にエネルギーを吸い取られても駆動するシーンで、メカニックの亀戸キヨコが語るシーン。
「電池式でなく機械式だから 腕を振れば自動でゼンマイが巻かれて、駆動するのね!」
「するのね!」って、キングセイコー・KSKを開発した亀戸博士の孫でメカニックなのに……。
また、どんな物体もたちまち腐らせる敵の技「腐食」がキングセイコー・KSKには効かないのを見て、一般人(!)が……、
「サス316L(※1)のボディーにはサビは効かないんだ!!」
と叫ぶなど、解説的なセリフ回しがたまらない(そのための漫画なので)。そんな「ツボを突くネタ」が並んでいる。
※1:「SUS316L」、耐食性を向上させたステンレス鋼の一種。
1/1サイズの模型も展示!
極めつけは「キングセイコー・KSK」が必殺技「鉄拳・ライターカット」を繰り出す腕や、「キングセイコー・KS1969」が使う武器「針剣」の1分の1スケール模型展示だ。
腕は3Dプリンターによる出力で、関節にはボールジョイントも使われ、可動も意識した作り。指の背に施されたライターカット(やすり目のようなパターン)は、実際の(時計の)「キングセイコー KSK」の12時インデックスに使用されている仕上げがモチーフ。超戦士のキングセイコー・KSKは、この強固なやすり目のパンチで敵を容赦なく破壊する。
ちなみに展示状態では見えないが、手のひらには亀甲パターンのモールドが刻まれている。これはキングセイコー110周年モデルのダイヤルパターンを模したデザインで、キングセイコーが誕生した第二精工舎の本社・工場があった江東区亀戸に因(ちな)んでいるという。
一方、針剣は実際の「キングセイコー KS1969」の分針をイメージした武器。この模型にも時計製造技術を生かした研磨技術が使用されている。
このほか、裏ぶたのデザインを落とし込んだ文字通り「ダイヤシールド」(盾)の1分の1模型も製造。ダイヤシールドとは、セイコーの表面硬化技術の総称。実にシャレが効いているが、なんと、この盾は漫画に登場しない(!)のだ。
そして、冒頭でも触れたオリジナルコミック。会場に展示している漫画ページはすべてこの中に収録。キャラクター資料館や、セリフのバイリンガル表記(英語)まで掲載されているという気合いの入り方だ。
秋田書店のチャンピオンコミックスを彷彿とさせる懐かしいデザインが(筆者の個人的な感想です)、我々中高年の胸を熱くさせる。このコミックは会場でアンケートに回答した来場者にプレゼント。ぜひ手に入れてほしい。
会場では親子で参加できる(時計に関する)ワークショップも開かれている。これに参加すると、あのチョコレート菓子のオマケを思わせるシール(筆者の個人的な感想です)を1枚もらえるというからビックリだ。
さらに、現行キングセイコーシリーズの試着コーナーやフォトスポットなど、見どころが盛りだくさん。時計の展示イベントとしては異色中の異色ながら、誰もが楽しめる『駆動せよ! 超戦士キングセイコー』展。この夏の思い出作りに、ぜひ。