マイナビニュースマイナビ

緊急時や重要なお知らせのタイトルが入ります。

Large

アッパー層が選ぶ「街」と「建物仕様」の傾向について、 Modern Standardが調査した「年収1,000万超えプレイヤーが選んだ『住みたい街ランキング2024』」のデータをもとに、コンドミニアム・アセットマネジメント※の視点から考えてみたいと思います。

( Money )

年収1,000万円超えのプレイヤーが暮らす「街」「建物仕様」の傾向とは?

SEP. 12, 2024 11:00 Updated DEC. 23, 2024 17:16
Share

「富裕層」という定義はなかなか難しいものがありますが、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」(2022年)によると、2021年時点で給与で年収1,000万円を超える方の割合は4.9%となっています。

その人口の約5%のアッパー層が好む「街」と「建物仕様」の傾向について、 Modern Standardが調査した「年収1,000万超えプレイヤーが選んだ『住みたい街ランキング2024』」のデータをもとに分析。

不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんが、コンドミニアム・アセットマネジメント(不動産を「土地(街)」「建物」「管理」に分解した上で、賃料をベンチマークに資産性を分析する考え方)の視点から解説します。

年収1,000万円超えのプレイヤーが選ぶ街とは

年収1,000万超えプレイヤーが実際に選んだ「住みたい街ランキング2024 by Modern Standard」は、同社で成約した賃貸物件をエリアごとに集計して作成されたもの。「勝どき(中央区)」が2位以下を圧倒的に引き離しトップの座につきました。

2位以下は、「白金(港区)」、「三田(港区)」、「赤坂(港区)」、「西新宿(新宿区)」と続いたほか、6位には「海岸(港区)」が入り、昨年18位から大幅にランクアップしました。

これについて同社は、タワーマンションの開発エリアが上位にランクインしていると分析。4位「赤坂(港区)」、8位「六本木(港区)」、10位「神宮前(渋谷区)」については4年連続でベスト10入りしたことから、不動の人気を得ているとコメントしています。

  • ランキングトップ10※Modern Standardが調査した「年収1,000万超えプレイヤーが選んだ『住みたい街ランキング2024』」より引用

属性により居住エリアの選択基準は異なる

一言で「年収1,000万円以上」と言っても、その内実は属性によってさまざまです。なぜ上記のような結果になったのか、下記3つのタイプに大別して、住みたい街や物件仕様の傾向を分析してみたいと思います。

(1)年収が今後も上がっていくことが想定される業種・ポジションの方
(2)年収が想定上限に達しており、今後上がっていく確率が低い業種・ポジションの方
(3)資産家等で自己所有の法人からの給与を得ている方

(1)年収が今後も上がっていくことが想定される業種・ポジションの方

このタイプの方は年収的な余裕があり、会社の家賃相当額の補助(給与)等も大きく受けられますが、非常に多忙であるケースが多いのが実際です。そのため、よりオフィスエリアや交通の要所へのアクセスがよい街を選ぶ傾向が強く出ます。

具体的にはオフィスが多く存在する丸の内・大手町・八重洲・日本橋・虎ノ門・麻布台・品川といったメインオフィス街や、東京駅・品川駅・羽田空港といった交通の要所にアクセスの良い街が選ばれます。

一定の年収が確保されていることもあり、この層が選ぶ物件は現在のトレンドに合致した高仕様物件であり、昨今の傾向からはいわゆるタワーマンションが該当します。

結果として賃貸タワーマンションが多く存在するエリア、その中でも新築物件の竣工等のドライバーがあるエリアが強いのが実際です。

そのため、2023年に竣工したエリアのフラッグシップマンションである「パークタワー勝どき」や、「晴海フラッグ」を擁する勝どきエリアの人気が高まっていることは容易に想定ができます。

(2)年収が想定上限に達しており、今後上がっていく確率が低い業種・ポジションの方

このタイプは今後の資産形成を強く意識する傾向が強く、昨今の金融緩和を受け、個人の資産状況に合わせて郊外・都心部の安定物件を検討する方が多いです。そのため、高級賃貸のゲームからは離脱するケースが多いのが実際です。結果として、当該データのフォーカス外となるかもしれません。

尚、ペアローンを活用し中心エリアのタワーマンション等のハイスペック物件の購入、郊外エリアの戸建て等含め、購入の選択肢は多岐に渡ります。

(3)経営者

一定の資産を承継しており、既に自身の法人(資産管理会社等)による資産マネジメントを行っている層です。詳細は「富裕層が『丘からおりている』、社長の住む街ランキングからわかること」記事内での解説を読んでいただきたいと思いますが、事業継承系法人の経営者に関しては、赤坂・六本木・南青山・代々木・西新宿など、地位(ちぐらい)を意識した街選びをする傾向にあります。

一方、多忙を極めるスタートアップ・起業系の経営者は、アクセスに特化しつつ、「好物件仕様」のタワーマンション等を選ぶ傾向があると言えるでしょう。

不動の人気エリアに加え、湾岸エリアが台頭

このように分析すると、従来型のアッパー層と新たに台頭するアッパー層とで、街を選択する基準が若干異なることが見て取れます。

従来型のアッパー層が、赤坂、西新宿、六本木、南青山、神宮前などの地位(ちぐらい)の高いエリアを好む一方で、新たに台頭するアッパー層は、勝どき、海岸(港区)などの湾岸エリアを選ぶ傾向にあると言えるのではないでしょうか。

ただし、従来型のアッパー層も新興エリアにネガティブな感情を持たなくなってきていると私は感じています。投資物件としての価値に加え、歩道が広く商業施設も増えつつある湾岸エリアに住んでみたら実は快適であるというお声を、移住された皆様から聞くことも多くなっているからです。

こうした変化が、「勝どき(中央区)」が2位以下を引き離し、「海岸(港区)」が大幅にランクアップした背景にあるのではないでしょうか。

渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター

2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。


Share

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。