ここ数年、金相場の高騰が続いていた。しかし、2024年7月17日に過去最高値を更新したのも束の間、「令和のブラックマンデー」に合わせて金の価格も急落。今なお不安定な状態が続いている。
今後、金の価値はどうなっていくのか。そもそも今は売り時なのか、それともまだ様子見すべきタイミングなのか。現在の金事情を探るべく、大手買取専門店「買取大吉」を訪問し、鑑定士の木村健一さんに話を聞いた。
株価とともに下落傾向!? どうなる今後の金相場
――まず、直近の金相場についてご説明いただけますか?
8月22日時点で、金1gあたり1万2,800円となっています。7月17日には史上最高値となる1万3,800円を記録していたので、ちょうど1カ月で1,000円ほど下落しています。
――下落した原因はハッキリしているのでしょうか?
8月上旬の株価暴落と円高の影響が大きいですね。
金は国際市場においてドル建てで取引されているので、ドルが下がると金も連動して下がってしまいます。そこにきて経済状況も不安定になったことで、金も株も買い控えが広がる状況に陥ったという流れだと思います。
――日経平均株価は一度ガクッと下がったあとに、買い戻しもありましたよね。
そのときは金も1万2,200円くらいまで下がって、そのあとまたちょっと上がったんですけど、今も上がり下がりを繰り返しながら徐々に下がりつつありますね。
――このまましばらくは下がり続けていくんですか?
経済が不安定すぎて、正直今後の流れは読めませんが、日本では金融緩和や為替介入などの影響もあって円高に振れてきているので、もう少し下がる可能性はあると思います。
今売るのは得か損か……金の"売り時"と"買い時"
――きっと金の売り時、または買い時がわからなくて悩んでいる人も多いですよね。
1g=1万3,800円というMAXの数字を一度見てしまうと、どうしても今の相場が低く見えてしまいますよね。ただ、「金が初めて1g=1万円を突破した!」と盛り上がったのがちょうど去年の今頃だと考えると、1g=1万2,800円は十分高い状態です。
――では、金を売るタイミングとしては……。
売るなら早いほうがいいかもしれません。2022年は1g=8,500円、2021年は1g=6,900円くらいだったので、当時と比べれば今の相場はやはりかなり高いです。
金は発掘できる量が限られていることもあって、暴落することはありません。それ故に安定資産と言われ、これまでは不況になると株価が下がる代わりに金相場が上がるという定説がありました。しかし、今は経済状況が複雑・不安定なので、その定説も破綻しかけています。
そういう意味でも、売るなら早いほうがいいのではないでしょうか。仮に相場が2~3年前の水準まで下がってしまったとしたら、さすがにもう少し様子を見てもいいかもしれません。ですが、今ならまだMAXのときと比べても1,000円しか落ちていないので、躊躇する理由はないと思います。
――買取大吉での金の買取状況に、変化はありますか?
売り控えしている方が多い印象です。今年の3~6月頃は金がじわじわ上昇し、毎月約1万2,000~1万3,000件ほど売却のご依頼がありました。そのときのペースと比べると、今は7割くらいまで落ち着いた感じでしょうか。猛暑でお持ち込み自体が減っている可能性はありますが、やはり金相場の下落の影響はありそうです。
意外と身近にある? よく持ち込まれる"金製品"アレコレ
――せっかくなので自宅に眠っている金製品を探したいのですが、買取大吉ではどんな金製品が持ち込まれているんですか?
まずはネックレスや指輪、バングル、ブレスレットといったアクセサリー類。あとは、メジャーどころでいうと記念硬貨、いわゆる「金貨」と呼ばれるものなどもよくお持ちいただきますね。
特に、「天皇陛下御在位60年記念」の10万円金貨(1987年に100万枚発行された記念金貨)は非常にお持ち込みが多いアイテムです。この金貨には20gの金が使われていて、当時のレートで10万円に満たない程度だったのですが、今の相場ですと25万円くらいまで上昇しています。
他にも、金杯、万年筆のペン先、眼鏡のフレーム、タイピン、ブローチなどのお持ち込みが多いですね。昔は金歯にも金が使われていましたが、今はインプラントがほとんどなので、珍しくなってしまっています。
繰り返しになりますが、今後の金相場の流れはどうなるかわかりません。もっと下がるかもしれませんし、もっと上がるかもしれませんが、今の相場も十分に高い状態ですので、最高値で買い足した方以外は売却しても損はないと思います。