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レストランでワインを注文したとき、赤ワインと白ワインで異なる形のグラスが出て来た経験はありませんか? 結婚式ではテーブルに最初から2種類のワイングラスを置いてあったりします。これは別に見映えなどではなく、しっかりとした理由があるのです。今回は、お酒とグラスの関係についてご紹介しましょう。

( Life )
8 バーで役立つ洋酒の知識

お酒の味わいや香りを驚くほど左右するグラス

DEC. 27, 2024 14:00 Updated JAN. 09, 2025 19:09
Text : 柳谷智宣
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お酒はグラスの形状や素材によって、驚くほど味わいや香りが左右されます。プロフェッショナルのソムリエがワインをサーブするとき、あるいはバーのバーテンダーがウイスキーを差し出すとき、そのグラス選びには長年の知見と工夫が詰まっているのです。

比較的分かりやすいワインから見ていきましょう。前述の通り、ワインであれば赤ワイン用と白ワイン用でグラスの形が異なります。赤ワインは豊かな香りが魅力なので、ボウル部分が大きく、口径が少し狭まった形のグラスが使われます。グラス内でワインと空気を十分に触れ合わせてから、香りが鼻に届くようになっています。

  • 左が赤ワイングラス、右が白ワイングラス

一方で白ワインは、フレッシュさや清涼感、果実味を楽しむことが多いため、やや小ぶりで口が広めのグラスが適しています。温度管理しやすく、冷たく爽やかなままの白ワインを楽しめます。

もちろん、赤用と白用の2種類しかないわけではありません。例えば、赤ワインであれば、ボルドーグラスとブルゴーニュグラスなど、細分化されたグラスもたくさんあるのです。

ブルゴーニュのワインはピノ・ノワールというブドウを使うことが多く、繊細で華やかな香りが特徴です。そのため、グラスに入る空気を抑え、スワリングしても香りが飛ばないよう、ボウルがとても大きく、口元は小さくなっています。その形状から、飲むときには大きくグラスを傾ける必要があります。すると、口の中に流れ込むワインのスピードが速くなり、ぱーっと香りが広がるのです。

  • ブルゴーニュワインを飲むときはずんぐりとしたグラスが適しています

ボルドー地方のワインはおもカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったブドウを使い、タンニンが豊富なうえ、濃厚で力強いのが特徴です。そこで、ボルドーグラスは比較的細く縦長の形状をしており、そこまで口元も狭めていません。パワフルな香りが立ち上がりやすく、ワインの口中滞留時間が長くなります。

シャンパンなどのスパークリングワインを飲むときには、細長く高いグラスが定番。泡立ちを美しく見せ、炭酸が抜けにくい設計になっているためです。

このように、ワインの産地やブドウ品種に合わせて特徴を引き出せるように、さまざまなワイングラスが考案されてきたのです。

  • リーデル社のシャンパーニュ フルートグラス(画像はリーデル社のWebサイトから)

実は、お酒の種類によってグラスを使い分けるのは、ワインに限ったことではありません。ビールであれば、ピルスナーには細長いピルスナーグラス、エールビールには香りを閉じ込めるチューリップ型や、よりカジュアルなパイントグラスなど、銘柄やタイプによって適したグラスの形があるのです。

ウイスキーなら、ロックで飲む場合はロックグラス、ハイボールを飲む場合はタンブラーが適しています。タンブラーは口が広く、背が高いグラスです。

ストレートを楽しむ場合は、ブレンダーズグラスやテイスティンググラスという小ぶりのグラスを使うことが多いですね。口元が狭まっており、香りを逃がしません。

ブドウが原料のブランデーも、ワインと同じように香りを楽しみます。ワイングラスは手で持つことで温度が上がらないように脚が付いていますが、ブランデーグラスは手のひらで持っても構わないので、脚が短いのが特徴です。

  • ウイスキーをストレートを飲むならテイスティンググラスがぴったりです

  • ブランデーをストレートで飲むなら、やはりブランデーグラスを使いましょう

グラスの形は、お酒を口に含むときの香りの広がり方や温度変化などを左右しますが、そのほかの条件もお酒の味わいに影響を与えます。例えば、グラスの素材ももちろん重要です。ガラス素材は無味無臭であるためお酒本来の風味をストレートに届けますが、紙コップやプラカップは、ときとして独特のニオイや風合いが加わり、微妙な違和感が出てしまいます。

試しに、同じお酒をプラカップとガラスのグラスに入れて、飲み比べてみてください。同じお酒だと思えないくらい味が変わります。いつも自宅や飲食店で飲んでいるグラスのビールをキャンプ場や野外イベントで紙コップに注いで飲むと、少し味気なく感じるのはそのためです。筆者も、グラスメーカーの勉強会で体験し、そのあとはバーベキューでも花見でもグラスで飲むようにしています。

ニオイが移るだけでなく、グラスの素材そのものや口当たり部分の厚さも味に影響します。縁が薄い上質なグラスは、唇に触れたときにジャマをせず、飲み物がまるで直接口内に流れ込むような感覚が得られます。微妙な苦味や酸味、香りをクリアに感じることができるので、美味しく感じられるのです。

そのため、高級なグラスの多くは薄く作られています。そしてご想像の通り、薄いグラスは割れやすいもの……。酔った状態で洗うと、それだけで割れてしまうも。いいグラスで飲んだときは、洗い物は翌日に回すことをおすすめします。

何より、いいグラスで美味しいお酒を飲むことは、QOL(クオリティ オブ ライフ)を向上させてくれます。酔うためにお酒をたくさん飲むのではなく、美しい工芸品のようなグラスで美味しいお酒を飲む。何よりも幸せな時間になることでしょう。ぜひ、次にお酒を飲むときはグラスにも注目してみてください。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。