我がメルセデス・ベンツ「W124」セダンは厳しい夏も問題なく乗り切り、整備スタッフに「走りすぎ!」と叱られるほど好調だったのだが、ここへきて、右側フロント部から「コツン」という異音が聞こえるようになった。何が原因なのか、お店に持ち込んでみることに……。
W124で最新車の取材に奔走
8月のヤナセクラシックカーセンター訪問記以来、久しぶりの記事掲載となってしまった本連載。「W124セダン」は厳しい夏を乗り切れたのだろうかと心配してくださった方もいらっしゃるかもしれない(いないか……)が、これがけっこう好調で、エンジンは一発で始動するし、水温も90度前後で一定、エアコンも十分に効いてくれている。最近は各社の試乗会に参加すべく、老体に鞭うってさまざまな場所に出かける日々だ。
直近ではトヨタ自動車の新型「クラウンクロスオーバー」に試乗するため、箱根の「ザ・プリンス箱根芦ノ湖」へ。横浜では日産自動車の新型「エクストレイル」に乗り、軽井沢は“英国貴族”仕様の新型「レンジローバー」にも試乗した。電気自動車(EV)の試乗会も増えていて、小さい方からいくと日産「サクラ」(横浜)やその兄弟車である三菱自動車工業「eKクロスEV」(千葉)、ミッドサイズSUVのメルセデス・ベンツ「EQB」(お台場)、アウディe-tronの「RS」「GT」「S」などに乗っている。
一方で、パワートレインは一気に電動化していくわけでもなく、ルノーは「アルカナ」「ルーテシア」「キャプチャー」に走りに特化したギア付きハイブリッドを搭載したし、新型クラウンの2.4Lデュアルハイブリッドの力強さは見事なものだった。マツダが「CX-60」に124と同じ直6ユニット(3.3Lディーゼル)を載せたのもちょっと嬉しい出来事だったし、スバルは新型「クロストレック」(修善寺で試乗)に伝統の水平対向エンジンを搭載していた。
スーパースポーツ系ではランボルギーニの「ウラカン テクニカ」(スペイン・ヴァレンシア)と「ウルス ペルフォルマンテ」(イタリア・ローマ)に試乗(124は羽田空港への往復で活躍)、国内ではランボルギーニのイベント「GIRO JAPAN」に参加し、各モデルに乗ることができた。イエローのウルスで自宅駐車場に戻って124と並べてみると、同じクルマでありながら大きさがあまりにも違うので改めて驚いた。
異音の原因は?
この通り好調そのものだった我が124なのだが、このところ、自宅駐車場に入るために左旋回で段差を乗り越える時に限って、右側フロント部分から「コツン」という音が発生するようになってきた。さっそく「アイディング」に124を持ち込んでジャッキアップしてみると、右前輪がけっこうぐらついているではないか!! 「あー、タイロッドだねー」(アイディングの浅野メカ)とのことで、すぐにパーツを注文。「高速でフルブレーキをかけたりすると、いきなりドカンといってしまうことがありますからね」と注意を受けつつ交換日を待つことに。
ちなみに「タイロッド」とは、操舵する前輪を左右に動かすために、ステアリングのギアボックスとタイヤのナックルアームをつなぐ棒(ロッド)のこと。先端の稼働部分はボールジョイントによって固定されているのだけれども、ブーツの破れや経年変化で内部のグリスが劣化し、ボールが摩耗する原因になるという。
取り外してみるとブーツに亀裂は入っていなかったのだが、グリスはすでに固形化していて役目を果たしておらず、金属のボール表面がすり減ってぐらついている状態だった。「A124 330 08 03」の「Made in GERMANY」製純正パーツに1時間ほどで付け替え、ホイールアライメントをチェックして作業は終了だ。
さらにエンジンオイルも、124におすすめということで、米テキサス州ヒューストンの潤滑油ブランド「フィリップス66 10W40」に交換。大きなブロックを持つ2.8L直6エンジンだけに、飲み込む量は7.5Lとかなり多めだ。次のお客さんがすぐに入庫する予定があるとのことで、古いオイルは時間のかかる下抜きではなく機械で吸い出した。オドメーターを見た浅野メカからはちょっと走り過ぎ(交換までの距離のこと)ですよ、とお叱りを受けてしまった……。以後、気をつけます。
沖縄ナンバーの124と遭遇! なぜ横浜に?
W124乗りの“駆け込み寺”となっているアイディングには、全国からさまざまな124が修理のために入ってくるのだが、今回は珍しい沖縄ナンバーの後期型E280セダンが入庫していた。聞けば、沖縄には現在2台しかないという124のうちの1台で、不動となったためわざわざ都内の修理工場に持ち込んだのだが再始動に至らず、最後の頼みの綱としてここに持ち込まれたものだそう。走行距離は10.5万キロほどで、車内にはメルセデス純正のレースのシートカバーが取り付けられており、丁寧に乗られてきたことがわかる。
所有していたのは御歳94歳になる諸見里さんという方で、安全面でのアシストがしっかりしている現行「Cクラス」には今も乗ることがあるという現役ドライバーさんだ。愛着のあるW124については、今後もなんとか維持していきたいと家族会議を開催。結果、都内在住の孫の誠さん(34歳)が引き継ぐことになったのだという。
修理ではエンジンのハーネスやアクチュエーター(スロットル)など電気関係をはじめとするかなりのパーツを交換したこと。おそらく、相当な出費になったはずだ。こうして復活を果たした124は、沖縄ナンバーのままで都内を走ることになったというから、この幸せな個体にどこかですれ違うことがあるかもしれない。