メルセデス・ベンツの名車「W124」は販売時期により前期、中期、中後期、後期の4タイプに大別できる。新たに我が家の愛車となったのは、1993年の中後期型「280E」だ。このモデルの特徴、スペック、さらには、これまで乗ってきたステーションワゴン「S124」との違いを紹介したい。
平成5年(1993年)5月登録で、走行距離わずか6万500kmという我が280Eのスペックは、全長4,740mm(ワゴン比マイナス25mm)、全幅1,740mm(変わらず)、全高1,445mm(同マイナス45mm)、ホイールベース2,800mm、車重1,530kg。長いボンネット内に収まる排気量2,8リッターのM104型DOHC直列6気筒自然吸気エンジンのスペックは、最高出力200PS/5,500rpm、最大トルク28.2kg/3,750rpmで、4速ATを介した燃費は今とは隔世の感がある6.9km/Lとなっている(当時はこれでも優れた燃費といわれていた)。
中後期型に属する93年モデルの最大の特徴は、「最善か無か」を標榜し、オーバークオリティといわれるほど各部にお金をかけて製作されたW124の前~中期型ボディはそのままに、当時の「イケイケ」(アイディングのメカさんの言葉)の状態でパワーアップしたDOHCエンジンを搭載していること。「Eクラス」と呼ばれるようになった94年以降の後期モデルでは、コンピューター、遮音材、足回りパーツなど、さまざまなところでコストダウンが開始されていた(当時の悪化し始めた経営状態や、次期モデルへの模索がその理由)ことを考えると、たった1年間しか製造されなかった93年モデルが、W124の中ではベストバイなのでは、と思うところである(これについてはさまざまなご意見があるとは思いますが……)。
こんなところがほかとは違う!
中後期型と後期型の違いという点では、顔つきが前期型と同じ「デカグリル」とオレンジレンズのフロントターンシグナル(後期型はクリアレンズ)の組み合わせであること、ウレタン製の前後バンパーモールがブラックのままであること(後期型はサッコパネルと同色)、ナンバープレート取り付け部形状が違っていること(後期型は隙間がなくスマート)などが挙げられる。
さらに、ステーションワゴンとセダンの違いという点から見ると、リアシートがワゴンは1:2の分割式であるのに対し、セダンは可倒式センターアームレスト付きの固定式となっている。リアヘッドレストは後退時など視界の邪魔になるとき、運転席からボタンひとつで後方に倒し、フラットにできる。これは当時の高級車らしくて気に入っている(ちなみにボルボなどは起こし忘れを防ぐため、前側に倒れる)。
絆創膏や包帯、止血剤、ハサミなどが入った純正のファーストエイドキットが2つのヘッドレストの間のパーセルシェルフに搭載されていて、車内ですぐに取り出せるのもいい(28年前のものなので、絆創膏などが使えるかどうかは別。ちなみに、ワゴンはラゲッジのサイドカバー内に入っている)。
リア周りでは、タイヤ4本がまるまる収まる巨大なトランク、リッドの裏側に取り付けられていて停車時に開くと遠くからでも視認できる三角警告板、ワゴンよりも凹凸が深いリブつきテールレンズ(悪天候で凸部が汚れても、凹部は汚れず照度が落ちない)、2本出しテールパイプ(ワゴンは1本)、ワゴンより高い位置にある給油口など、異なるポイントが意外と多いのに気がつく。
一方、運転席での操作に関する差はほとんどない。ただし、この280Eは立派なレザーシート仕様なので、表面の張りやクッションの違いにより、ファブリックよりもアイポイントが少し高い気がする。座面と背面の中央には細かなパーフォレーションが施されていて熱がこもらないようになっているほか、丁寧に扱われてきた証拠に運転席側のサイドサポート部の擦り切れもない。