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トヨタ自動車は同社を代表する乗用車「クラウン」の新型を7月15日に発表した。4種類のボディを一挙にお披露目し、最初に発売する「クロスオーバー」はクラウン初の横置きパワーユニットとするなど、67年の歴史の中でも大変革と呼べる内容だ。中でも大きく変わったデザインについて解説していこう。

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なぜ4種類? セダンは燃料電池車? トヨタ新型「クラウン」を分析

AUG. 01, 2022 11:30 Updated DEC. 23, 2024 17:57
Text : 森口将之
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トヨタが「クラウン」の新型を発表した。4種類のボディを一挙にお披露目し、最初に発売するクロスオーバーはクラウン初の横置きパワーユニットとするなど、67年の歴史の中でも大変革と呼べる内容だ。中でも大きく変わったデザインについて解説していこう。

  • トヨタの新型「クラウン」

    トヨタ「クラウン」のデザインが激変!(写真は新型のセダン)

ボディを4つも用意する理由は?

新型クラウンは通算16代目。2022年秋に発売予定のクロスオーバーに加え、「セダン」「スポーツ」「エステート」という計4つのボディを一度に発表したことがまずはニュースだった。

発表会には豊田章男社長のほか、クラウンなどを受け持つミッドサイズ・ビークルカンパニーの中嶋裕樹プレジデントも出席していた。

中嶋氏は当初、2018年に発表した現行型クラウンのマイナーチェンジを考えていたそうだが、企画の段階で豊田社長に見せたところ、「もっと本気で考えてみないか」という答えが返ってきたとのこと。その結果としてクロスオーバーが生まれたが、豊田社長はこのボディにゴーサインを出しつつ、「セダンも考えてみないか?」と言葉を重ねた。そこでセダンの開発が始まったそうだ。

  • トヨタの新型「クラウン」

    4種類の新型「クラウン」で最初に発売となる「クロスオーバー」

時系列から想像すると、中嶋プレジデントとしてはあくまでセダンを開発したものの、豊田社長にはそれがクロスオーバーに見えたので、もっとセダンらしいセダンを追加するよう指示したのではないだろうか。

発表会で豊田社長は、前衛的なスタイリングが原因で販売が振るわず、歴代最大の失敗作となった4代目「クラウン」(通称:クジラクラウン)を振り返り、「クラウンはお客様の先を行き過ぎてはいけない」との教訓を得たと話した。開発陣の自由な発想を評価しつつ、過去の経験を重ね合わせた結果、クロスオーバーとは別にセダンを用意したのだと理解した。

  • トヨタの4代目「クラウン」

    4代目「クラウン」(クジラクラウン)

この時点で豊田社長は、新型クラウンのボディタイプをクロスオーバーとセダンの2種類と考えていた。それが4つになったのは、残りの2つを開発陣が提案してきたためだ。

おそらく開発陣はクロスオーバー、スポーツ、エステートの3車種を考え、第1弾としてクロスオーバーを見せたところ、セダンの依頼を受けたのでそちらを先行し、まとまった時点でスポーツとエステートを提案したのだろう。

というのも、4つのボディを見比べるとクロスオーバーとスポーツ、エステートには近い部分があるのに対し、セダンだけ独自性が強いからだ。

  • トヨタの新型「クラウン」
  • トヨタの新型「クラウン」
  • 左が新型「クラウン」の「スポーツ」、右が同「エステート」

セダンだけプロポーションが違う?

まずは真横から見たときのプロポーションが、他の3台と違う。前輪とキャビンの間が離れていることが、写真で見てもわかる。

  • トヨタの新型「クラウン」

    真横から見たセダン

クロスオーバーが横置きパワーユニット+リアモーターのハイブリッド4WDであることは発表済みだが、セダンのフォルムはあきらかに後輪駆動だ。

  • トヨタの新型「クラウン」

    真横から見たクロスオーバー

しかし現行クラウンと比較すると、前輪とキャビンの間は短い。トヨタ車で近いのは、燃料電池自動車の「ミライ」だ。ファストバックのプロポーションも似ている。つまり、セダンは燃料電池専用車になる可能性がある。

  • トヨタ「クラウン」
  • トヨタ「ミライ」
  • 左が現行型「クラウン」、右が「ミライ」

他の3つのボディでは途中でキックアップしているサイドウインドー下端のラインが、セダンではほぼ水平だ。前後フェンダーの張り出しを除けばサイドパネルに抑揚を持たないことも、セダンの特徴となっている。

セダンはフォーマルユースもまかなうので、落ち着いたデザインを与えることでシリーズ中のフラッグシップに位置付け、欧米プレミアムブランドの大型EV(電気自動車)セダンの対抗馬とするのではないかと想像している。

残る3つのボディも、スタイリングは少しずつ違う。すべての車種に統一性を持たせるメルセデス・ベンツやBMWなどとは対照的だが、発表会に出席したデザイン統括部長サイモン・ハンフリーズ氏によれば、意図的に異なるスタイリングを採用したそうだ。すべてを似せるのは伝統的な手法だが、近年のプレミアム市場のユーザーは多様化しているので、個々のボディが持つ固有の価値を提案したと説明していた。

とはいえ、クロスオーバーとスポーツのサイドのラインがキックアップするポイント、ドアからリアフェンダーに向けた面の張りなど、2台に共通するディテールはある。一方でクロスオーバーとエステートでは、全長やホイールベースが同一であり、ノーズの造形は近い。こうした要素が3つのボディにつながりを持たせているようだ。

  • トヨタの新型「クラウン」

    真横から見たスポーツ

  • トヨタの新型「クラウン」

    真横から見たエステート

キャビンまわりのデザインは、クロスオーバーはシトロエン「C4」、スポーツはポルシェ「マカン」、エステートはキア「スポーテージ」など、いくつか似た車種が思い浮かぶのも事実だ。

逆にいえば、クラウンらしさをすっぱり断ち切った英断には感心するし、近年のトヨタデザインで目立つ、線を多用しすぎたがゆえのビジーな雰囲気もなく、シンプルにフォルムを表現している点にも好感を抱いた。

世界を意識したデザイン?

セダンを含めた4台のデザインで、最も似ているのは顔つきだろう。ハンフリーズ統括部長も「統一感を持たせた」という通り、グリルはなく、細いヘッドランプの間にスリットを設けた程度で、バンパーに大きなインテークを備えるという造形は全車に共通している。

人間の家族を見ても、体格はそれぞれ異なるものの、顔つきが似ていることは多い。そんな世界観を目指したのかもしれない。

  • トヨタの新型「クラウン」

    新型クラウン一家、顔は似ている

もちろんそれは、堂々としたグリルを掲げていた従来のクラウンとは対照的であり、メルセデス・ベンツやBMW、身内にあたるレクサスといった、既存の多くのプレミアムブランドとも一線を画している。

近年のシトロエンがこれに近い処理を採用しているが、同じトヨタの「ハリアー」との近さも感じる。ハリアーのヘッドランプやグリルを極限まで薄くしていくと、クラウンのそれになるように思える。

  • トヨタの新型「クラウン」

    トヨタ「ハリアー」

逆にリアは、コンビランプの上下を薄くして高い位置に置くことは共通するものの、それ以外は違っており、ハンフリーズ統括部長の言葉どおり、それぞれのボディのキャラクターを強調していると感じた。

  • トヨタの新型「クラウン」

    クロスオーバーのリア

気になったのはインテリアだ。今回公開されたのはクロスオーバーだけだが、エクステリアと比べると、メーター、ステアリング、ドアオープナーなど、目に入る多くのディテールに既視感がある。セダンであればこのインテリアは似合うと思うが、それ以外のボディでは保守的と評される可能性がある。

  • トヨタの新型「クラウン」
  • トヨタの新型「クラウン」
  • 新型「クラウン」クロスオーバーのインテリアは、ちょっと保守的?

カラーコーディネートについても、欧米のプレミアムブランドに対抗するのであれば、もう少し整理整頓をしてもらいたかったという気持ちがある。

日本では発表直後から話題になっている新型クラウンだが、それは私たち日本人が長年、歴代クラウンを見続けてきており、そこからの激変ぶりに驚いているからでもある。では、国外ではどうだろうか。

国内専用車だったクラウンを新型で初めてグローバル展開することもニュースのひとつだが、海外では日本とは逆に、クラウンについての予備知識はゼロに近い。つまり、トヨタの新型車のひとつとしてジャッジすることになる。

そのとき現地のメディアやユーザーは、このエクステリアやインテリアをどう判断するのだろうか。個人的には日本での評価以上に興味を持っている。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。