フルモデルチェンジを遂げたトヨタの新型「ランドクルーザー」は、一見するとデザインがこれまでとは一変しているように思える。しかし、ランクルの歴史を振り返ってみると、このクルマが着実に姿を変えてきたことがわかってくる。すこし歴史を振り返ってみよう。
「ランクル」に3つの系統
8月2日に発売となった新型「ランドクルーザー」(以下、ランクル)を「300系」と呼ぶ。形式名に由来した呼び名で、先代は「200系」、その前は「100系」だった。ただし、この流れはランクルの系統のひとつにすぎない。これ以外にひとまわり小柄な「プラド」と、新興国向けに生産を続けている「70系」があるからだ。
ランクルのルーツはトヨタが1951年に発売した「BJ」だ。4年後に「ランドクルーザー」へと名を変えて「20系」となった。これが「40系」を経て「70系」になる。プラドは70系をベースに快適性を高めた乗用車仕様がルーツ。「90系」→「120系」と進化し、現在は「150系」となっている。
これに対して300系は、1967年に生まれた「50系」をルーツとする。2ドアの幌屋根が一般的だった40系に対し、最初から4ドアのワゴンボディを持ち、日本では商用車登録だったものの、海外では4WDステーションワゴンと位置付けられていた。
50系は40系に匹敵するヘビーデューティな作りを持ちながら、大柄なワゴンボディと大排気量エンジンによる快適性も併せ持つ、まさに「陸の王者」と呼べる存在だった。これが60→80→100→200系と続き、このたび300系に行きついた。プラドや70系の上に君臨する、ランクルのフラッグシップなのである。
実はこのステーションワゴンの系列、マイナーチェンジで次期型を思わせる造形を取り入れることが何度かあった。
たとえば60系は、当初は丸型2灯だったヘッドランプが途中で角形4灯になり、上級グレードではオーバーフェンダーを装着した。すると次の80系はヘッドランプが角形2灯になり、オーバーフェンダー付きも出現。200系のマイナーチェンジでは、それまでは大きかったヘッドランプが上下に薄くなり、高い位置に置かれた。リアではコンビランプが横長になった。
新型はヘッドランプがさらに薄くなり、グリルは対照的に大きくなっている。リアではコンビランプがやはりスリムになり、横長感を強調した造形となった。
それぞれの世代の初期型だけを比べると、激変に思えるモデルチェンジがあるかもしれない。ただ、マイナーチェンジまで含めて見ていくと、着実に形を変えていっていることがわかる。日本車でありながら、ランクルのデザインは欧州のプレミアムブランドを思わせるような変遷をたどってきたのである。