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レクサス「LX」をオンロードとオフロードの双方で試乗し、開発陣との意見交換に臨んだ安東弘樹さん。先代モデルに比べ新型LXのポテンシャルが圧倒的に向上したことは感じられたものの、欧州のライバルたちと比べると気になる部分もあったそうだ。

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55 安東弘樹のクルマ向上委員会!

安東弘樹、レクサス「LX」開発陣に聞く!

MAY. 06, 2022 11:30 Updated DEC. 23, 2024 17:57
Text : 安東弘樹
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レクサス「LX」をオンロードとオフロードの双方で試乗し、開発陣との意見交換に臨んだ安東弘樹さん。先代モデルに比べ新型LXのポテンシャルが圧倒的に向上したことは感じられたものの、欧州のライバルたちと比べると気になる部分もあったそうだ。

※文章はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました。

  • 安東弘樹さんとレクサス「LX」開発陣

    レクサス「LX」に試乗し、開発陣と話をする安東弘樹さん

安東弘樹さん:先ほど、オフロードコースを走ってきました。クロールコントロールなどの電子制御を使って走るのは楽なんですけど、デフロックを入れてからは、もう、生まれ変わったようで、自由自在でした。一気に車体が小さく感じたといいますか。電子制御を切ると、クルマの素性が悪ければ破綻があるでしょうし、剛性が高いかどうかもわかるんですが、デフロックで走ってみて、「オフロードを本気で作ったんだな」ということが実感できました。

レクサス開発陣:足(ストローク)もしっかり伸びるようになってます。先代モデルよりはかなり伸びるので、その分、しっかり路面を捉えて走りやすくなっています。

安東さん:「LX600“OFFROAD”」というグレードで一般道も試乗してみたんですが、オフロードグレードでも、オンロードをきっちり走れることがわかって嬉しかったです。

レクサス開発陣:オンロード性能に関しては搭載アイテムですごくポテンシャルを上げることができました。その代わり、オンロードを作り込んだ結果、オフロード性能を下げてしまうのは、絶対になしという考えで開発を進めました。

  • レクサス「LX」
  • レクサス「LX」
  • 「LX600“OFFROAD”」でオンオフ両方を試乗した

安東さん:ただ、ついつい、ディフェンダーやレンジローバーと比較してしまうんですけど、若干、アプローチが違うといいますか、例えばメーターひとつをとっても、向こうは完全にディスプレイになっていて、LXは物理メーターを使っている。こういう違いには驚いたというか、意外だったんです。LXは「ランドクルーザー」と共用の部分がけっこうあるんですか? 共通の部品を何%くらい使っているんでしょうか?

レクサス開発陣:シャシーからいうと足回りはほぼレクサスで、ランクルにはない部品がほとんどです。

安東さん:なるほど。オンロードも試乗してきたんですが、そのあたりは確かに、ランクルとは別物といいますか、しゃっきり感がありました。

レクサス開発陣:サスペンション、駆動、ブレーキ、ステアリング、制御を含め、最適に走れるように、かなり時間をかけて作り込みをやってきました。

安東さん:それはユーザーとして感じることができました。ありがたかったです。

ただやっぱり、パワーユニットが日本市場では1種類というのは気になるところで、例えばオフロードだとディーゼルエンジンの方がもうちょっと粘れたかなとか、低速のトルクの出方も変わってくるのかなと思いました。

レクサス開発陣:豪州などにはディーゼルエンジンの設定がありまして、国内にも入れたいという思いはあったのですが、国内のレクサスのお客様は「音」にこだわりのある方が多いので、今のディーゼルエンジンの静粛性では、まだ難しいかなと判断しました。

安東さん:ランクルにはディーゼルエンジンが設定されていますが、日本のLXにはありません。LXならランクルよりも遮音にコストをかけられると思いますし、燃費も足(航続距離)も伸びるでしょう。しかも今は燃料代が高くなっているので、レクサスのディーゼルというのは、ちょっと見てみたかったですね。この間、京都までクルマで行ってきたのですが、途中のサービスエリアで給油したら、ハイオクがリッター203円でした。LXの価格帯のクルマを買う方といえども、やっぱり、日々の燃料代は気になさると思うんですよね。

それから、ヨーロッパのメーカーは電動化もやっています。この価格帯で「ザ・内燃機関」みたいなクルマって最近、あまり見なくなりましたよね。最低でもマイルドハイブリッド(MHV)にはなっているのが一般的だと思います。よくいえば新鮮ですし、悪くいえば若干、これでいいのかなっていうのは正直、ありました。レンジローバーはプラグインハイブリッド(PHEV)とディーゼルマイルドハイブリッド(MHV)がメイングレードですし。

  • レクサス「LX」

    新型「LX」のディーゼルエンジン搭載車も見てみたかったと安東さん

安東さん:欧州メーカーとの比較でいうと、LXは例えばドアヒンジがプレスだったり、後席は4:2:4分割で嬉しかったのですが、シートの間に隙間があったりして、そのあたりは残念ながら「ランクル」を色濃く感じてしまいました。リアハッチのヒンジも、欧州車の特にオフロードのクルマはゴツっとした作りで、メルセデス・ベンツの「Gクラス」やレンジローバー、さらには「ディフェンダー」あたりだと、ハンマーでたたいても壊れないんじゃないかっていうくらい、頑丈な作りじゃないですか。かといって、重量はLXと変わりません。ユーザー目線で比較すると、こういうところの違いが気になってしまうんです。「LX600“EXECUTIVE”」というグレードだと、レンジローバーとガチンコの価格帯になってしまうので、余計に違いに目が行ってしまいます。

素朴な疑問なんですけど、シャシーもエンジンも、何から何までレクサスが作るLXというのは、将来的にも難しいんでしょうか? トヨタさんとは別のクルマづくりで、レクサスが1から作ったフラッグシップSUVというのを見てみたいと思ったんですが。

レクサス開発陣:そうですね……。

安東さん:これが観念的なものなのか、肌で感じるものなのかはちょっとわからないんですけど、やっぱり、「ES」に乗ると「カムリ」が見えてきたり、「UX」だと「CH-R」が見えてきたりするんです。

レクサス開発陣:弊社のシステムなんですけども、FF系はおっしゃる通り、トヨタブランドのクルマがベースになっています。FR系の「LS」や「LC」はレクサス専用で作って、それをトヨタに戻すといった感じです。FFとFRで、基本のプラットフォームをどちらが作るかという話なんですが、もちろんレクサスもFFを使うので、要望を出したりはしています。

安東さん:なるほど。FR系といっていいかわかりませんが、LXもやっぱり、ドアヒンジだとか後席の隙間を見ると、ランクルが見えてきます。ちょっと細かくて申し訳ないんですけど、ユーザー目線で考えてしまうので……。

レクサス開発陣:クルマを評価するのと所有するのは、確かに違うと思います。私は運動性能の評価を担当しているのですが、それ以外の部分、例えば操作系で気になるところがあったりしたら、それは伝えるようにしています。「1,000万円するクルマで、この操作はちょっと」という部分はあったりしますので。作り手のエゴになってしまう部分があるかもしれないので、そこは直していかなければと思っています。

安東さん:素人が生意気ばかり申し上げて申し訳ございません。それでも、先代のLXに比べれば、圧倒的にポテンシャルが高いということは理解できました。

  • レクサス「LX」

    新型「LX」のグレードは「LX600」(1,250万円、5人乗りと7人乗りがある)、「LX600“OFFROAD”」(1,290万円、5人乗り)、「LX600“EXECUTIVE”」(1,800万円、4座独立仕様の4人乗り)の3種類。写真は「LX600」

安東さん:それと細かい話なのですが、トランスミッションはランクルと共通のものを使っているんでしょうか? 高級車ではシフト・バイ・ワイヤが主流になっているので、ガチャガチャやるシフトは懐かしいといいますか、それでランクルと共通なのかと思ったのです。良い悪いの話ではないんですが、無骨な懐かしい感触ではありました。やっぱり、耐久性のことを考えてこうしているんですか?

レクサス開発陣:そうなんです。まずは耐久性と信頼性がベースにあって、そこに上質さを乗せました。ベースの部分は落とさないという条件で開発したんです。

安東さん:そこはネガな部分ではないんですけど、先進性という意味では、もしかしたら気になる人もいるのかなと思いました。逆に、こっちの方がいいっていう人も、もちろんいらっしゃるとは思うんですけど。

レクサス開発陣:シフト・バイ・ワイヤも検討しているんですが、やはり信頼性が重要なクルマですので、2系統のシフトを用意することも検討しています。日本で乗っていて、クルマが壊れるシーンというのはほとんどないと思いますが、アフリカや中近東の砂漠で、何かあっても生きて帰ることができるクルマでなければならないので、万が一ワイヤーが断線してもシフトが変えられるような技術も考えています。

安東さん:それは面白いソリューションですね。

  • レクサス「LX」
  • トヨタ「ランドクルーザー」
  • 左が「LX600」、右が「ランドクルーザー」の「ZX」

安東さん:半導体不足もあるので、納期は長くなりそうですか?

レクサス開発陣:これはランクルも同じなんですが、HPでは、これから注文を頂くと、納期は4年程度になるとアナウンスさせて頂いています。

安東さん:受注にも影響が出ているのでは?

レクサス開発陣:納期のアナウンスを出したらキャンセルもあるかなと思ったんですが、あまりなかったというのが実情です。LXは増車で購入される方が多いので、乗っているクルマの車検が切れることを気になさる方が少ないんですが、それも関係しているかもしれません。

安東さん:私も基本、複数台を所有しているので車検も気にしませんし、好みの仕様のクルマにこだわり、納期が1年以上になったことがこれまでに何度かありましたが、4年というと、次のモデルも見えてきますよね。その間に、クルマ自体に変更や改良があった場合、御社としてはどういう対応になるんでしょうか。

レクサス開発陣:例えば、法規の問題で何かを変えなければならなくなった場合などは、それまでと同じ価格で販売できなくなるかもしれません。その際には、しっかりとお客様とコンタクトを取らせていただきます。それでエクストラコストを出していただける方もいれば、それならいらないとおっしゃる方もいるかもしれませんが、大事なのは丁寧なコンタクトだと思っています。

安東さん:それにしても、特別なモデル以外では、4年というのはさすがに聞いたことがないですね。

レクサス開発陣:いろいろな要因があります。半導体と一言でいっても、例えばコンピューターの中の素子だとか、サプライヤーさんの生産設備に使われていたりもしますし、コロナ禍で稼働も流動的で、この後はウクライナ情勢の影響もありますので、なかなか読みづらい部分があるんです。

安東さん:例えば今後、半導体の供給が戻ったりウクライナ情勢が落ち着いてきたりした場合、納期が早まる可能性はありますか?

レクサス開発陣:努力しています。生産現場も頑張っていますし、購買部門も仕入れ先様と常にやり取りしながら、できるだけ早くできるよう、注力しています。

  • レクサス「LX」

    これから注文すると、納車は2026年以降になるというのが現時点での見通しだ

マイナビニュース編集部:しかし、納期が4年というは、部品供給や国際情勢が影響しているとしても、すごい人気ですね。

安東さん:確かにそうですね。ただ、実は最も気になるのは、これからLXを注文した方にクルマが届く2026年以降になると、純内燃機関でカタログ燃費8km/lのクルマを「普通に」販売できる地域は、今よりも限られてくるのではないかと思うんですよね。

マイナビニュース編集部:カーボンニュートラルに向けて燃費規制を厳しくしている国や地域がたくさんありますし、そもそも内燃機関だけのクルマだと入れなくなる地域や都市が増えているかもしれませんね。確かに、そのあたりは気になります。


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