元TBSアナウンサーで日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務める安東弘樹さんは、久しぶりに「欲しい」と思える日本のクルマに出会った。マツダ「アテンザ」だ。そんな安東さんがマツダの試乗会に参加するとの情報を得たので、ついていくことにした。
※文と写真はNewsInsight編集部・藤田が担当しました
“クルママニア”が久々に惹かれた日本車
年間4~5万キロはクルマに乗るマニアで、これまでに41台のクルマを乗り継いできたという安東さん。現在はポルシェ「911 カレラ 4S」とジャガーのSUV「F-PACE」を所有しているそうだが、なぜ新しいクルマが欲しくなったのか。愛車「F-PACE」の走行距離が「買って2年で6万キロの勢いという事情もあるんですけど」(以下、発言は安東さん)という驚きの発言はあったものの、千葉の自宅から東京都内の仕事現場に通勤するのに不便だから、というのが主な理由らしい。
TBSを退職してフリーになり、晴れてクルマ通勤(基本的には出張も)の身となった安東さんだが、ロケもあり、勤務地が一定ではない仕事の都合上、都内に通勤する上で問題となるのが駐車場だ。高さが1,665mm、幅が1,935mmの「F-PACE」では、基本的に立体駐車場には入れられない。そんな事情と、まもなく「F-PACE」のローンが終わることから、安東さんは真剣に3台目のクルマ選びを進めている。
「マツダは好きなブランド」
その購入リストに浮上したのが、このほど商品改良を経たマツダの新型「アテンザ」だ。グレードもいろいろだが、注目しているのはディーゼルエンジンを積む「XD」で、四輪駆動のマニュアルトランスミッション(MT)仕様、ボディタイプはセダンが選択肢となる。
ちなみに、ディーゼルを選ぶ理由としては、「運転そのものが快楽」という安東さんの嗜好にトルクの太さ、加速のよさが合う部分もあるのだが、「“クルママニア”として、できるだけ環境負荷を減らしたくて。自分の乗り方だと、CO2排出量はディーゼルが最も少なくなる。」との自己分析もある。通勤で1日に100キロはクルマに乗り、その半分は高速道路を使用するという安東さんにとって、低いエンジン回転数で加速できるディーゼルエンジン車の方が、ハイブリッド車(HV)よりも効率よく走れるとのこと。クルマ選びは「『ディーゼルで運転が楽しい』が第一の条件」だ。
MTを選ぶのにも、クルマを操る喜び以外の理由がある。給油のたびに「満タン法」による燃費計測を欠かさないという安東さんは、自分で適切なギアを選んで走行し、燃費を抑える走り方に習熟しているのだ。
41台の愛車遍歴の中でマツダ車を所有したことはないそうだが、「好きなブランドではある」という安東さん。まずは改良前の(旧型)アテンザに試乗し、「正しいポジションで運転すると心地いい。マツダのシートはいいなー!」などの感想を聞かせてくれた。次はいよいよ新型の試乗だ。
フラッグシップにMTを設定するマツダの心意気
まず乗ったのは、セダンの「XD L Package」というグレード。6速MTを操って走り出した安東さんは、「そもそも、このモデルにMTを設定するマツダはすごい。このアテンザにMTで乗る人とは友達になれそう」とし、フラッグシップと位置づけるクルマにMTを設定するマツダの姿勢に敬意を表した。クラッチは重い方が好みで、「最近の日本車はやたらと軽い」と感じていたそうだが、アテンザのペダルは好感触だったようだ。
内装については「(旧型とは)全然違う!」とのこと。「確実に車格が上がった。スエードがいい。サンルーフの設定も嬉しい。ディスプレイも大きくなっている」と評価ポイントを列挙していった。新型のシートにも好印象を抱いたようで、フットレストの位置や、コーナリング時に踏ん張った足(例えば右折時の左ひざ)が当たる部分の感触(やわらかさ)などが気に入った様子だった。運転席と助手席の間にあるコンソールボックスにはUSB端子が2つ付いているが、その蓋の部分にUSBケーブルを通すための穴が開いていることからも「マツダの良心を感じる」そうだ。
ミニ「クラブマン」との比較で何を感じたか
一方で、気になる部分として話題になったのは「軽さ」の部分だ。例えば、後席のドアの開け閉め感が、安東さんの表現によると輸入車では「ガチッ」という感じであるのに対し、アテンザでは「パコン」という印象だそう。走行中、段差を超えるときの感覚も、輸入車に比べるとどこか「ピョコピョコ」するという。これはアテンザに限らず、輸入車に比べた時の日本車全般の印象だそうだ。
ここ十数年は輸入車のみを乗り継いでいる安東さんは、3台目の候補として、アテンザ以外に小型車ミニ(MINI)の「クラブマン」も検討中だという。すでに試乗を済ませたという安東さんによると、クラブマンなら立体駐車場に駐車できるのはもちろんのこと、ディーゼルエンジン車の用意があり、運転すると「ゴーカートフィーリング」で意のままに操れて、高速道路の走行では「ずっしり」とした感覚が得られるそうだ。車幅はアテンザより40mm狭い1,800mmだが、後席のドアは分厚く、閉めたときの重厚感、安心感は魅力だという。
安東さんの購入リストに入った「クラブマン」のディーゼルエンジン車は「COOPER SD」というグレードで、価格は437万円から。これにオプションを付けていくと、見積もりでは600万円に近い価格になったそうだ。それに対し、アテンザ「XD L Package」の価格は419万400円からで、オプションを付けても500万円前後で収まりそうな雰囲気。100万円も安くて、装備も充実しているアテンザを安東さんは「コスパがいい」と評価しつつも、「クラブマンのドアの開け閉め感が捨てがたい自分もいる」と悩ましい心情を語っていた。
ガソリンエンジンのワゴンにも試乗、感想は……
ディーゼルエンジン車のあと、ガソリンエンジン、二輪駆動(FF)、オートマチックトランスミッション(AT)、ワゴンのアテンザ「25S L Package」にも試乗した安東さん。「電動リアゲートが欲しい」「非力とは思わないが、やはりトルクが欲しい」といった感想で、やはりアテンザを買うならディーゼルのMTという考えに変わりはないようだった。
試乗のあとは、マツダのエンジニアと懇談の場が設けられた。安東さんとマツダ社員の対話は、試乗の感想から始まり、マツダのブランド戦略にまで及ぶ幅広い内容となったので、その模様は本連載の2回目でお伝えしたい。