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トランプ前大統領が大統領に復帰する2025年は、様々な変化が予想されます。その中で、住宅ローン市場はどのような方向に向かうのでしょうか。2025年の見通しと個人がとれる対策について、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSの取締役CMOで住宅ローンアナリストの塩澤崇氏にうかがいました。

( Money )

「デフレ脳では資産が減ります」2025年、賢い人の住宅ローン新戦略

JAN. 03, 2025 11:00 Updated JAN. 06, 2025 16:44
Text : 石井僚一
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トランプ前大統領が大統領に復帰する2025年は、様々な変化が予想されます。その中で、住宅ローン市場はどのような方向に向かうのでしょうか。2025年の見通しと個人がとれる対策について、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSの取締役CMOで住宅ローンアナリストの塩澤崇氏にうかがいました。

  • ※画像はイメージ

メガバンクVSネット銀行、ローン選択の基準は"金利か団信か"

――日銀の利上げ後、足元の住宅ローン金利は銀行間で競争が激化しています。2025年の住宅ローンの金利競争はどのような状況が予想されますか?

2024年は3月にゼロ金利の解除、そして7月に利上げが行われて、国内でも金利のある世界が復活しました。その結果、低コストの預金を集められ、その資金を住宅ローンの貸出に充てられるメガバンクが資金調達面から優位になりつつあります。一方で、2024年は三菱UFJ銀行の住宅ローン残高の減少が明らかになりました。これは同行にとっても大きなショックと考えられます。

同行はじめメガバンク勢は、資金調達面でのアドバンテージを活かし、これまでネット銀行に奪われ続けたシェアを取り返すため、金利競争や積極的な営業などを仕掛けると予想されます。

――それでは2025年の住宅ローン市場は完全にメガバンク優位となるのでしょうか?

一方的にメガバンクが有利になることはない、と考えられます。確かにネット銀行は資金調達コストの面でメガバンクに及びませんが、低コストオペレーションなどの強みは変わりません。

またネット銀行の強みは住宅ローンの顧客が若年層中心となっている点にあります。住宅ローンユーザーの年代別分布を例えるなら、発展途上国のような富士山型のイメージです。

このため平均年齢が若く、住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)の保険料が安い点が強みであり、団信の保障を充実化して、住宅ローン+団信のトータルセットで差別化をより強めるようになるでしょう※。

※住宅ローン金利はメガバンクより高いものの、団信込みの総合的なサービス及び支払額では有利にできる等

2025年もメガバンクとネット銀行の激しい競争は続くと予想されます。金利のメガバンク、団信のネット銀行という差別化になりそうです。

――メガバンクも同様の戦略をとる可能性はありませんか?

可能性はゼロではありませんが、難しいのではないでしょうか。メガバンクの住宅ローンの顧客は年代が高い人も多いため、例えて言うなら釣鐘型、つまり先進国のような年代別分布です。平均年齢が高いため、団信の保険料はどうしても高くなってしまいます。メガバンクとしては団信のサービス拡充よりも、金利面での訴求をしたほうが効率的でしょう。

――利上げ後も競争力維持のため、住宅ローン金利を上げずに維持する銀行も現れる可能性はありますか?

金利を引き上げるシナリオが現実的ではあるものの、引き上げ幅を小さく留める可能性もゼロではないと思います。メガバンクとネット銀行で、住宅ローンを巡る激しい競争が続いています。金利のある世界となり、メガバンクは安く資金が調達できるメリットが生じており、それを住宅ローンの残高回復という経営課題の解決に繋げなければなりません。ゆえに、金利引き上げを我慢して、新規ユーザー獲得に注力することも考えられます。

一方、ネット銀行のメインビジネスは住宅ローンであり、ここで競争力を失うことは絶対に避けたいはずです。2025年に利上げがあっても、新規集客を強化するため、戦略的に住宅ローン金利を据え置く、もしくは金利引き上げ幅を小さく留める銀行があっても不思議ではありません。

  • 2024年12月時点での各行の住宅ローン金利一覧(モゲチェック提供)

繰り上げ返済は「禁止」、銀行株を買うという手も

――金利がある世界となった中で、住宅ローンに関して個人ができる対策はどのようなものがあるのでしょうか?

新規借り入れを行う方は、今後金利が1〜1.5%に上がっても耐えられる金額で住宅ローンを借りることが重要です。既に金利のある世界に入っており、これまでのように金利が下がる前提で住宅ローンを組むのは危険です。

ただし日銀による利上げは、あったとしても緩やかになると予想されます。当面は現在の変動金利が固定金利より安い状態が逆転することはないと予想され、住宅ローンを変動金利で組むのが有利な状態は続くでしょう。

――既に住宅ローンを借りている人ができる対策はどのようなものがありますか?

既に借り入れがある方は3つの対策があります。

1つ目は借り換えの検討を行うことです。現段階で0.6%以上の住宅ローン金利の場合は、借り換えにより支払い金利を抑えられる可能性が高いです。今後日銀の利上げがあると借り換え先の金利はもちろん上がりますが、現在利用中の住宅ローン金利も同様に上昇するため、今現在で金利を下げられるのであれば、借り換えない理由はないでしょう。

ですので、現在の住宅ローン金利が高いようなら、積極的に借り換えを検討しましょう。モゲチェックでは2024年12月より、借り換えユーザー向けに年0.344%の限定優遇金利(変動金利)を案内するなど、属性や希望に合わせた最適なプランを提供しています。モゲチェックの住宅ローン診断を利用してみてはいかがでしょうか。

2つ目は繰り上げ返済をしないことです。デフレからインフレに時代が変わり、現金の価値が下がり負債の実質的な負担も同様に軽減されるようになってきています。

例えば、明治時代の100万円の借金と令和の100万円の借金では後者の方が負担は圧倒的に少ないとお分かりでしょう。つまり、負債の返済はインフレが進んだ後に行うことが有利であり、繰り上げ返済はインフレが進む前に返済を急ぐことになるため、資産形成の観点からは不利な行為です。

デフレからインフレに時代が変わっており、繰り上げ返済は厳禁の時代となりました。

3つ目は資産運用の必要性です。先ほど繰り上げ返済厳禁と申しましたが、繰り上げ返済できる資金があれば長期分散でNISAやiDeCoも活用して、資産運用を行いましょう。S&P500連動型や全世界株式型(オルカン)など長期視点で保有できる投資信託がおすすめです。

米国株価指数や先進国全体の株価指数の伸びはインフレを上回ることも考えられるため、インフレ以上の資産増加も期待できるでしょう。また、住宅ローンを借りている銀行の株式を買う、というのも選択肢の一つです。銀行に支払っている住宅ローンの金利を、配当金や株価上昇で取り返すイメージです。

ただし個別銘柄への投資のため、銀行によっては注意が必要です。インフレ時代となり株や不動産などの資産価格は上昇しやすい時代となりました。デフレからインフレに時代が変化しており、インフレを追い風に資産を増やす、という発想の転換が必要になったと言えるでしょう。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。