トランプ前大統領が大統領に復帰する2025年は、様々な変化が予想されます。その中で、住宅ローン市場はどのような方向に向かうのでしょうか。住宅ローン市場について2024年を振り返るとともに、2025年の見通しを住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSの取締役CMOで住宅ローンアナリストの塩澤崇氏にうかがいました。
利上げで借り換え需要が増加、金利競争も激化した2024年
――最初に2024年の住宅ローンのトピックについて改めて教えてください。
2024年の住宅ローンには以下の2つのトピックがありました。
1つ目は日本銀行(日銀)のマイナス金利の解除及び利上げです。日銀は2024年3月に17年ぶりにマイナス金利を解除して、7月には利上げを行いました。その結果、2024年末の政策金利は0.25%となっています。
マイナス金利の解除と利上げにより日本も金利のある世界に戻り、住宅ローン金利の上昇など住宅ローン市場にも大きな影響がありました。7月の利上げの後、10月に実際に住宅ローン金利が上がると、当社の住宅ローン借り換えサービスも問い合わせが急増しました。
モゲチェックでは12月より、借り換えユーザー向けに年0.344%の限定優遇金利(変動金利)をご案内しているのですが、前月の3倍近くのお問い合わせが来ており、借り換え需要は引き続き高いと感じています。
2つ目のトピックは、ネット銀行とメガバンクの競争激化です。利上げ前からネット銀行とメガバンクの住宅ローンの競争は激化していたものの、利上げにより競争は新たなステージに入りました。金利のある時代となり金余りの時代は終わりました。そして、低コストで預金を集めその資金を住宅ローンに充てられるメガバンクが競争力を付けつつあります。
実際に12月の住宅ローン金利は、メガバンクの金利が軒並みネット銀行を下回る状態となっています。ただし、2024年は三菱UFJ銀行の住宅ローン残高の減少が明らかになりました。メガバンクの住宅ローン残高の減少は前代未聞です。住宅ローン市場は依然として、メガバンクとネット銀行との激しい競争が続いています。
2025年の政策金利、住宅ローン金利の見通し予想
――2025年の政策金利及び住宅ローン金利の見通しを教えてください。
まず2025年はトランプリスク、具体的にはトランプ関税が最大のリスクです。中国に対する高関税政策は大統領選挙の際からトランプ前大統領から発言がありました。しかし大統領選挙後は、隣国のカナダ及びメキシコにも高い関税をかけると発言し論議を呼んでいます。日本にも新たに関税が課されるリスクがあります。関税が課されればアメリカに対する輸出が厳しくなるため、日本経済への影響は小さくありません。その結果、ドルが強くなり円安が進むに加えて、輸出企業を中心に業績不振による株安リスクも生じます。
日銀は過度な円安阻止の観点もあり、2025年も利上げを探ると思われますが、株安になった場合、経済に対して冷水を浴びせかねない利上げは困難になるでしょう。円安と株安が同時進行した場合、利上げ基調は続くと思われるものの、日銀がジレンマに陥る可能性があり、利上げ余地は狭まると見ています。
これらの状況を踏まえると、2025年は利上げがあっても大幅な利上げは考えづらく、住宅ローン金利も同様の引き上げ幅にとどまるでしょう。現状からは多少の金利引き上げとなり、目安として1%前後、具体的には0.85~1.20%の範囲内に留まると予想しています。
――トランプ関税リスクがあり日銀は利上げをしにくい環境にあるため、2025年の住宅ローン金利は上がりにくいという理解でよいでしょうか?
そうですね。日銀は経済重視のスタンスで利上げを判断しており、トランプ関税が日本に課されて国内経済が悪化すれば、前述の通り、事実上利上げは困難になります。住宅ローン金利は日銀の決める政策金利に影響されるため、利上げ基調ではあるものの、大幅な利上げは考えにくいと言えるでしょう。