マイナビニュースマイナビ
Large

韓国のヒョンデが電気自動車(EV)「IONIQ5」(アイオニック5)の改良モデルを日本で発売した。新型アイオニック5はバッテリー容量が84kWhに拡大。フル充電での走行距離(一充電走行距離、WLTCモード/自社測定値)は703kmとかなりの数値になった。

( Car )

韓ヒョンデが新型「IONIQ5」を発売! バッテリーを1種類に絞った理由は?

NOV. 09, 2024 11:20 Updated DEC. 24, 2024 17:15
Text : 藤田真吾
Share

韓国のヒョンデが電気自動車(EV)「IONIQ5」(アイオニック5)の改良モデルを日本で発売した。新型アイオニック5はバッテリー容量が84kWhに拡大。フル充電での走行距離(一充電走行距離、WLTCモード/自社測定値)は703kmとかなりの数値になった。ただ、バッテリーが小さい(価格が安い)バージョンはラインアップから消えてしまっている。いったいなぜ?

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    ヒョンデが2024年11月8日に日本で発売した「アイオニック5」の改良モデル

アイオニック5はどう変わった?

アイオニック5はヒョンデが2021年に発売したフラッグシップEV。日本導入は2022年2月だった。これまでに世界で累計34万台超が売れているそうだ。

今回の新型はユニークなデザインを維持しつつ数々の新装備を採用し、バッテリー容量を増やし、動力性能を引き上げた改良モデルだ。

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    「アイオニック5」のボディサイズは全長4,655mm、全幅1,890mm、全高1,645mm。ホイールベースは3,000mmで室内が広い

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    改良モデルは800V級の電源システムを採用。EVで一般的な400V級に比べるとパフォーマンスが高く、充電時間も短くて済む(高出力の急速充電器に対応できる)そうだ

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    改良により「Apple Carplay」「Android Auto」のワイヤレス接続が可能に。一度接続すれば、次からは自動でつながるようになる。これは便利だ

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    今回の改良ではモーター制御やリアモーターの遮音性などを改善し、従来よりも静粛性を向上させたとのこと

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    これまでは少しスマホが置きづらいところにあったワイヤレス充電はセンターコンソール上部に移動。これなら降りるときに置き忘れることもなさそうだ

改良モデルが搭載するバッテリーの容量は84kWh。改良前のアイオニック5には58kWhと72.6kWhがあったが、大容量バージョンと比べても容量が10数%増えたことになる。新型はバッテリーの容量増加とエネルギー密度の高い「第四世代バッテリーセル」の採用により、一充電走行距離が703kmまで伸びている。従来型モデルの72.6kWhバッテリー搭載モデルは618kmだった。

  • ヒョンデ「アイオニック5」

    バッテリー容量が増加し、数々の新装備も採用した「アイオニック5」の改良モデルだが、価格は従来型に比べ3%しか向上していないとのこと。グレードは「Voyage」と「Lounge」の2種類で、価格はVoyageのRWD(後輪駆動モデル)が523.6万円、同AWD(4輪駆動モデル)が554.4万円、LoungeのRWDが574.2万円、同AWDが613.8万円

ところで、改良前はバッテリー容量が2種類から選べたのに、なぜ改良後はバッテリーが1種類になったのだろうか。バッテリーが小さい(価格が安い)バージョンを用意すれば、より多くのユーザーを獲得できそうなものなのだが……。

Hyundai Mobility Japanのシニアプロダクトスペシャリストである佐藤健さんによると、アイオニック5の改良モデルには、グローバルでは容量63kWhのバッテリーを積んだバージョンもラインアップしているとのこと。ただ、日本市場の顧客は「もしものとき、どれだけ(の距離を)走れるか」を重要視するので、改良前のアイオニック5についても、バッテリー容量が小さいバージョンは「ほとんど売れていなかった」そうだ。そこで今回は、大容量バージョンのみにラインアップを絞った。

ちなみに佐藤さんによれば、改良前の「アイオニック5」には、15万kmを走行してもバッテリーの最大容量が97%までしか減少しなかったというデータがあるそうだ。これはタクシーとして使用された(当然、急速充電を何回も行ったはずの)アイオニック5から得られたデータだという。スマートフォンユーザーからしてみると使い倒せばバッテリーは「へたる」はずだと思うのだが、アイオニック5のバッテリーは劣化しづらいのかもしれない。

5年で販売規模を10倍に? ヒョンデの野望

2022年2月に日本に「再進出」を果たしたヒョンデ。これまでに「アイオニック5」のほか、燃料電池自動車(FCEV)の「ネッソ」(NEXO)、アイオニック5よりも小さなSUVタイプのEV「コナ」(KONA)、超高性能EVの「アイオニック5 N」を日本市場に投入してきた。日本での累計販売台数は1,500台を超えたという。Hyundai Mobility Japanマネージングダイレクターの七五三木敏幸さんは、販売規模を今後5年で10倍超に引き上げたいとの野心的な目標を掲げている。

  • Hyundai Mobility Japanマネージングダイレクターの七五三木敏幸さん

    Hyundai Mobility Japanマネージングダイレクターの七五三木敏幸さん

  • ヒョンデ「コナ マウナ ロア」
  • ヒョンデ「コナ マウナ ロア」
  • ヒョンデ「コナ マウナ ロア」
  • 2024年10月に発売した「コナ」の日本限定特別仕様車「KONA Maua Loa」(コナ マウナ ロア)

日本での販売増に重要な役割を果たしそうなのが、2025年春ごろの発売を予定する小型SUVタイプのEV「インスター」(INSTER)だ。このクルマ、すでに韓国と欧州では発売済みだそうで、英国では約2.3万ポンド(約454万円)からという価格設定で販売しているという。バッテリーの容量は42kWh(一充電走行距離203マイル=約327km)と49kWh(同229マイル=約369km)の2種類から選べるようだ。ボディサイズは全長3,825mm、全幅1,610mm、全高1,575mmとかなり小さいので、日本の道路でも扱いやすそうなクルマに思える。

  • ヒョンデ「インスター」

    ヒョンデ「インスター」

佐藤さんによると、日本におけるクルマの売れ筋は250万円~350万円くらいの価格帯なのだとか。インスターの価格設定については検討中だそうだが、この売れ筋価格レンジにはEVの選択肢が少ない(BYDのドルフィンくらいしかない?)ため、戦略的な値付けができれば、かなり魅力的な小型SUVタイプのEVとして日本市場に売り込めるかもしれない。


Share

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。