楽天は2月14日、都内で事業戦略説明会を開催し、無料通話&メッセージアプリ「Viber」を提供するViber Mediaを子会社化したと発表した。買収金額は9億ドル(約916億円)で、全株式を取得している。

近年、「LINE」のようなメッセージアプリは他国でも人気を博しており、「Viber」や「LINE」以外にも「WhatsApp」や「カカオトーク」など多数のアプリが存在する。

その中でもViberは世界3億ユーザーを持つ人気アプリとなっており、現在は1日あたり55万件のペースで新規ユーザーが増加しているという。

また同時に、日本向けのプロモーションとして、固定電話に対する通話を無料、携帯電話への通話も1分あたり10円の通話料でかけられるようにすると発表した。プロモーション期間などの詳細は現時点で発表されていない。

Viberは音声がクリアと優位性を強調

Viberの買収は「Project Eagle」として6カ月前から買収交渉が進められていた。楽天で代表取締役会長 兼 社長 最高執行役員を務める三木谷 浩史氏は、「楽天経済圏の拡大のために、精力的にユニークな戦略を進めてきた。ビジネスモデルの改善に絶えず続けてきた。着々とグローバル展開を図っているが、更にこの活動を加速させていく」と話す。

「楽天の既存ユーザー2億人とViberの3億人を合わせて、5億人が楽天を利用することになる。今後は10億、20億ユーザーと目指していきたい」(同氏)

買収によるシナジーとして三木谷氏は「潜在的なマネタイゼーションの力」や「コンテンツ事業とECへのチャネル」「楽天サービスとの連携」の3点を挙げる。Viberはゲーミングプラットフォームとしての展開も計画しており、ゲームにとどまらず、デジタルコンテンツの配信基盤としても非常に魅力的だったという。

また、将来的な展開として、楽天市場におけるコンシューマーとのコミュニケーションプラットフォームへの応用も示唆しており、「Viberは音声を非常にクリアにIPで流せる技術力を持っている。また、音声だけではなく、テキストも含めたコミュニケーションができる。例えばワインのソムリエに『神戸牛にあうワインがほしい』とお願いするといった使い方もできるようになると思う」(同氏)とその展望を語った。

一方、Viber MediaのCEOを務めるTalmon Marco氏は、「競合よりもサポートするプラットフォームは多い。PCやタブレット、Mac、Linux、なんでもコミュニケーションできる。ただ、それだけでは足りない。もう一つ必要なモノは『楽しい』と思えること。何千ものスタンプを用意しているし、ほとんど無料で利用できる」とViberの優位性をアピールした。

そして、何故パートナーに楽天を選んだかについてMarco氏は「共有できる価値観があったから」と話す。

「チャンスがあると感じた。(買収金額か?との質問に)金額も大事だけど、それ以外も重要な要素。創業者として、Viberが今後どのように事業を進めていくかと考えた時に、スタートアップ企業の感覚を持ちながらも、大企業の力を持つ楽天の存在があった。楽天スーパーポイントといったプラットフォームの考え方は、私たちの考え方に近いと思ったし、親近感を持っている」(Marco氏)

一方で三木谷氏も「KoboやVikiなどデジタルコンテンツ事業の強化を考える上で重要な買収を重ねてきた。Viberもグローバルで展開しており、VikiとViberを組み合わせるといった考えもある」とした。

三木谷氏とMarco氏が強調していた部分は、音声品質が優れている点だ。技術力の高さをアピールするだけではなく、ユーザーの声も常に聞いて改善に努めているとしており、スタンプを含むメッセージアプリのイメージが強いLINEに対する差別化を図ろうとする意図も見えた。

音声通話というと、楽天は2013年12月に「楽天でんわ」をスタートさせた。その点について三木谷氏は「楽天でんわとViberは別のもの」と話す。将来的には統合する可能性もあるとしたが、「IPから音声回線と、音声回線から音声回線では別物。帯域が細いところでも品質が良いViberだが、通話が切れないメリットが楽天でんわ(音声回線)にはある」としていた。

最後にLINEへどのように対抗していくのかとの質問を受けた三木谷氏は「アメリカでは複数のメッセージングアプリを使い分けている。日本でもそのような流れになるのではないか」と答えた。