NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社は9月17日、総務省の委託研究「ネットワーク仮想化技術の研究開発」に基づき、共同研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform」(愛称:O3プロジェクト)の立ち上げを発表した。複数の広域ネットワークインフラを統合管理するプラットフォームや、そこで用いるアプリケーションなど、広域ネットワークのさまざまな要素を総合的にSDN化することを目指す研究開発プロジェクトは、世界初となる。

本プロジェクトでは、データセンターなどの企業独自のネットワークへの導入が始まっているSDNを、通信事業者やインターネットなど広域ネットワークインフラに適用するための研究開発を推進する。この広域SDNが実現することで、通信事業者は、広域ネットワークにおいて、サービスプロバイダの要求に応じてネットワークを従来の約10分の1の時間で臨機応変に設計・構築・変更できるようになるという。

O3プロジェクトの目的

クラウドサービスを提供するデータセンター(DC)では、サービスが変化していくスピードに対し、ネットワークの構築や変更にかかる時間の短縮が課題となっている。この課題を解決するため、DC内・DC間のネットワークにSDNを導入し、サービス提供までのリードタイムを短縮しようとするニーズが高まっている。また今後、企業の事業継続基盤の強化やグローバル化が進むことにより、世界中に分散するDCとユーザーとの連携が必要になると考えられ、広域ネットワークにSDNを適用する機運が高まることが予想される。

O3プロジェクトの概要

広域ネットワークは、光ネットワークや無線ネットワークなど多くの種類のネットワークをまたがった通信サービスにより構成されている。通信事業者やサービスプロバイダーは、個別にサービスの設計・構築・運用を行っているため、さまざまサービス要件を満たしたネットワークを構築し、迅速にサービスを開始することは困難だ。

既存の広域ネットワークでは、ネットワーク種別(レイヤー)ごとにネットワーク装置と運用管理システムが存在し、それぞれのレイヤーで別々の運用管理を行っている。そのため、上位レイヤーの運用管理者にとっては、下位レイヤーでの障害発生時に真の障害箇所を迅速に特定し、対処することは困難だった。また、すべてのレイヤーを通じて低コストかつ高性能な資源を組み合わせ、サービス構築コストを最適化することも難しい。

本プロジェクトでは、これらの課題を解決するために、ネットワーク資源を共有する複数の通信事業者やサービスプロバイダが、それぞれの目的に合わせて自由にネットワークを設計・構築・運用管理することを可能とする、ネットワーク仮想化技術の確立を目指す。

ネットワーク仮想化技術を構成する各技術の試作や実証実験を通じて研究開発成果の実用性について実証し、実用化を目指していくとともに、本研究成果のグローバルな普及や、標準化を推進する。特に、成果の一部をオープン化し、国内外の通信事業者・サービスプロバイダー・ベンダーに提供していく。

本プロジェクトの研究開発と実証実験の最終的な結果は、2016年3月末までに総務省へ報告するとともに、研究開発成果の実用化を目指し、本研究成果のグローバルな普及や、標準化を推進していく。特に、2013年度中にホームページなどにより情報公開を開始、2014年度中には成果の一部をオープン化する。