シャープは10月28日、2010年度第2四半期連結業績および2010年度通期見通しの修正を発表した。同社代表取締役社長 片山幹雄氏は「欧州における通貨危機、先進国の成長鈍化という世界情勢に加え、国内においては急激な円高や株安など、エレクトロニクス企業にとってはきびしい環境が続いている中、売上/利益ともに昨年を大きく上回ることができた」としながらも、大型液晶事業の需要減退や価格下落、さらには期首の予想をはるかに上回る円高が続いている状況から、通期業績予想を若干下方修正したと語る。
2010年度第2四半期連結業績(累計、4月1日 - 9月30日)の概要は以下の通り。
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 四半期純利益 | |
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2010年度第2四半期 | 1兆5,039億円 | 434億円 | 262億円 | 143億円 |
2009年度第2四半期 | 1兆2,886億円 | 15億円 | マイナス119億円 | マイナス177億円 |
売上高は前年同期比117.6%、利益は前年より大幅に改善し、剰余金として1株あたり10円の中間配当を実施する(前年度は7円)。
部門別および主要製品で見ると、液晶テレビおよび太陽電池の伸びが大きく利益改善に貢献したようだ。「液晶テレビ事業の黒字化が定着し、AQUOSクアトロンも国内市場で順調に展開することができた。また、エコポイント終了にともなう駆け込み需要の影響も大きい。太陽電池については補助金制度の効果もあって住宅向けの需要が大きく伸びた」と片山社長。液晶テレビ事業は北米市場では落ち込んだものの、国内および中国市場の旺盛な需要に支えられ、前年に比べて売上高/販売台数ともに大きく伸ばしている(3,061億円/439万台→3,654億円/628万台)。また太陽電池については、売上高が前年比150%増の1,299億円(前年862億円)、販売量が前年比177%増の579MW(前年327億円)と大幅に伸びており、下期においても需要が続くことが見込めるとしている。
一方で携帯電話については国内市場の縮退もあり、販売台数は前年同期比で微増(512万台→531万台)しているものの、売上高は逆に減少(2,263億円→2,149億円)という結果になっている。片山社長は「この変化はチャンスと捉えている」とし、先ごろ発表したAndroid携帯「IS01」「IS03」や"クラウドメディア事業"の「GALAPAGOS」などで「オンリーワンとしてのシャープの強みを発揮していきたい」とし、同事業における主力商品のチェンジを図っていく方針だ。
液晶に関してはもう少し事情が複雑になる。前年売上高の3,991億円から5,405億円と大きく数字を伸ばしているが、これは「各メーカーが大型テレビに関して強気の戦略を採り、大型液晶パネルの需要が拡大した」(片山社長)ことによるもの。しかしその後、大型液晶パネルの需要そのものは減退し、市場在庫が増え、結果としてシャープは堺コンビナートでの生産調整を行わざるを得なくなった。同社が大幅な利益改善を果たしながらも通期業績予想を下方修正したのはこのことが大きく影響している。片山社長は「堺は世界で唯一、第10世代の大型液晶を生産できる工場。この強みを生かし、マルチディスプレイなどの新規事業の展開を図るほか、60インチ以上の大型ディスプレイマーケットを拡大させたい」と語り、液晶市場を開拓したシャープだからこそ、大型ディスプレイに関しても同じことができることを示したいとしている。また、中小の液晶パネルは上半期はきびしいビジネスが続いたが、携帯端末やゲーム機、車載コンピュータなどに搭載する高精細液晶の需要が伸び始め、今後も期待できるとしている。
4月に発表した通期業績予想は、売上高3兆1,000億円、営業利益1,200億円、経常利益950億円、純利益500億円だった。今回、売上高の予想数値は同じままだが、利益に関しては営業利益900億円、経常利益550億円、純利益300億円と大きくその数字を減らしている。先に挙げた大型液晶の需要減退もさることながら、やはり長引く円高の影響が大きいことは否めない。4月は1ドル=90円、1ユーロ=123円の為替レートで予想していたが、下期は1ドル=82円、1ユーロ=110円を前提にした結果の下方修正となった。「もはや売り切り型のビジネスモデルではなく、お客様にソリューションを提供できる企業にならなくてはならない。バリューチェーン全体で収益力の強化に努めていく」と片山社長。通期業績予想の売上高3兆1,000億円を実現するためには、下期において若干のビジネスモデルの転換が必要になるかもしれない。