楽天は8月5日、2010年度第2四半期連結会計期間(4/1 - 6/30)における業績を発表した。売上高は前年同期比15.6%増の849億1,600万円、営業利益は同じく12.2%増の152億6,100万円と増収増益を達成し、第2四半期としては過去最高益を記録、純利益は103億3,400万円を確保した。中国でのサイトオープンや英仏の有名ECサイト買収などに加え、グループ内の英語公用語化といったグローバル展開で注目されることが多かった第2四半期だが、核となるECサイトやトラベルといった国内ネットサービスが20%超となる成長を維持した点が大きなプラス要因として働いたもようだ。
楽天の会計年度は1月1日にスタートする。したがって、第1四半期(1/1 - 3/31)の数字と合わせた上期の連結累計業績も公表された。売上高は前年同期比17.4%増の1,641億800万円、営業利益は20.6%増の282億4,700万円、純利益は55.0%減の171億5,400万円。純利益が減少に転じている理由としては、「前年同期においては繰延税金資産の計上により法人税などの調整額が200億円以上発生したため」だという。
国内経済が低迷する中、同社が期間中に順調な成長を維持できた理由として、EC事業の主力となる楽天市場をはじめ、楽天トラベル、ポータルメディア事業といったネットサービス事業が前年比22.5%増と高い成長を果たしたことが挙げられる。「楽天市場における流通総額は前年同期比18.9%増とモメンタムを維持している。ユーザ満足度向上のために新機能や新サービスを継続的に投入してきたことに加え、品揃えの拡充や新規出店促進、販促活動なども積極的に行ってきたことが奏効した」(楽天 三木谷浩史社長)という。一方で、Edy搭載が決まった楽天カードなどクレジットカード事業やビットワレット、楽天銀行、楽天証券などネット金融事業は堅調に推移しているもものの、大きな利益を出すに至っていない。これについて三木谷社長は「ネット金融は高利益率を期待できるビジネス。EC事業やトラベル事業の決済手段としても有効で、サービスの粘着性を最大化できる」とし、今後も注力していく方針を見せている。
そして第2四半期中、楽天が世界的に注目を浴びた話題が、グループ内における(原則)英語公用語化だろう。移行期間は2010年8月から12月と定めているが、すでに三木谷社長をはじめとする同社幹部は公式の場では基本的に英語でプレゼンテーションを行っており、今回の決算発表会においても三木谷社長は自身の発する言葉はすべて英語で通した。今後は海外子会社とのミーティングはもちろんのこと、国内においても、あらゆる文書、メール、打ち合わせ/会議から社員どうしの会話に至るまで、コミュニケーションのほとんどを英語化していく方針だ。「社内英語公用語化はもちろん簡単なプロセスではない。だが、楽天はもう日本の会社ではなく、グローバルな会社を目指すと決めている。加えて、日本語による曖昧さを排除することによって、意思決定が迅速化され、国境を越えたコミュニケーションが効率化される。また、当社の技術者についても、英語能力が上がることで、原文のフレッシュな情報に触れやすくなる」と三木谷社長は英語公用語化のメリットを強調する。社員の英語力向上についても楽観的な見通しをもっているとしており、「ビジネス英語に必要な語彙はそれほど多く必要ない。また、英語力向上を図るにはより多くの時間、英語に触れる必要がある。日本語と併用すべきという意見もあるが、それでは英語力は上達しない。現在は社内英語研修や、"English-Hour" "English-Lunch"など英語しか使わない時間帯/環境を社員に提供し、週40時間以上、英語に触れてもらうようにしている」(三木谷社長)
楽天は5月20日に米ECサイトのBuy.com、そして6月17日には仏PriceMinisterの買収をそれぞれ発表した。また、今年の10月には中国でのEC事業「楽酷天」をサービスインする予定だ。インドネシア、台湾を含めると現在6カ国に進出しており、これらは流通総額(ECサイト)の8%を占めているが、近い将来には海外ビジネスを「27カ国、20兆円、海外比率70%」まで成長させたいとしている。これはもはや日本企業という枠から脱することを意味しており、実際、三木谷社長は「日本の会社であることをやめる」と公言している。本当の意味で世界を市場とするには英語公用語化は欠かせないプロセスとする楽天の姿勢が、目に見える効果をどれだけ早く示すことができるのか、今後も引き続き世界から注目されそうだ。