米Appleは米国でのiPhone提供において、携帯キャリアの米AT&Tとの独占販売契約を結んでいるが、こうした商習慣も岐路に到達しつつある。米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のJames Ware判事は7月8日(現地時間)、独占禁止法の観点から両社を対象にした集団訴訟を認める判決を出した。これにより、当該の2社は過去3年間の購入ユーザーらによる集団訴訟に巻き込まれる可能性が出てきた。

今回の訴訟は、AppleとAT&Tの2社が2007年6月に初代iPhoneの販売を開始したことにさかのぼる。iPhoneは発売当初からAT&Tのネットワーク回線との2年契約が義務付けられており、こうした契約で不利益を被ったという購入者らの一部が両社を相手に訴訟を起こした。また訴訟では、2008年6月のiPhone 3G発売とiPhone OS 2.0の提供開始と同時に、Appleがハッキング済みiPhoneに対して端末の利用を不可能にする仕組み、いわゆる「"Jailbreak"潰し」を導入して購入者の自由を制限したことにも触れている。当時のJailbreakでは利用可能な携帯キャリアのSIMを限定する「SIMロック」の解除が可能であり、これでユーザーにAT&T以外の選択肢を与えなかったことが問題だとされた。さらにAppleはAT&Tと秘密裏に5年間の独占販売契約を結んでおり、たとえユーザーは2年間の契約縛りが切れたとしても、AT&Tの回線を最低でも5年間は使わざるを得ないという。この5年間という独占契約期間について両社では公表しておらず、こうした具体的な数字の根拠についても今回の裁判では話題になっている。

Ware判事によれば、今回の集団訴訟には過去3年間に米国でiPhoneを購入して2年契約を結んだユーザーであれば、だれでも参加できるという。訴訟がどの程度拡大するかは未知数だが、近年AT&TではiPhoneユーザー増加によるネットワーク回線品質の顕著な低下が問題となっており、これに不満を抱いているユーザーは潜在的に多いとみられる。特にSIMロックされた端末は2年契約解除後も携帯キャリアを変更することはできず、こうした低品質な回線に縛られ続けることに問題はないのかということが争点になるとみられる。

こうした5年契約の話が伝わる一方で、AT&Tは間もなくAppleとの独占契約を失うのではないかという話が噂として広く伝わっている。たとえば米Bloombergは、AT&Tのライバルの米Verizon Wirelessが2011年1月にもCDMA版iPhoneの提供を開始するという話題を報じている。またAT&Tは今年6月のiPhone 4販売時に、iPhone 3G/3GSの購入者で2年契約縛りが切れていないユーザーであっても、初回契約時のリストプライスである199ドルまたは299ドルで端末変更を可能にするサービスを提供しており、これが来年初旬のVerizonによるiPhone提供開始を前に2年契約でユーザーを先に縛る行動に出ているという噂に拍車を掛けている。

いずれにせよ、今回の訴訟の件も含めてAT&Tが得たiPhoneの独占販売契約は間もなく終了する可能性は高く、AT&Tならびに既存/潜在的ユーザーらがどのように動くのか、業界関係者らは注目している。