米Google会長兼CEOのEric Schmidt氏は、現在政府機関によって判断が保留されている米AdMobの7億5000万ドルでの買収について「もし買収が妨害されることがあれば政府と戦っていく」とコメントしている。英Reutersが5月18日(米国時間)に同氏へのインタビューコメントを報じている。
GoogleがAdMob買収を発表したのは2009年11月。それからすでに半年が経過している。検索広告が収益の柱となっているGoogleにとって、同社が次世代の主戦場と考えているモバイル広告プラットフォームの攻略にAdMobの存在はなくてはならないものだ。現在この買収は政府の関連機関によって市場の公正競争の観点からその可否を巡る審査が行われているが、米New York Timesの5月12日の報道によれば、米連邦取引委員会(FTC)が介在してきたことで2週間の判断延長が決定されたという。判断期日はもともと5月3日となっており、本来であれば14日には決定が下されてなければいけない。FTCが買収阻止に強く傾いたことにGoogleが懸念を抱いており、今回のSchmidt氏のコメントはそれを受けたものとなる。
同氏は「AdMobはAppleのようなライバルとの競合で非常に不利な状況に立たされ続けている。われわれは非常に強い姿勢で今回の件に臨むつもりだ。なぜならGoogleにとって非常に戦略的な買収だからだ」と対決姿勢を明確にした。
AdMobの買収はもともとAppleが計画していたといわれるが、計画を察知したGoogleが横から契約をさらっていったとされている。一方で人気携帯プラットフォームのiPhoneを抱えるAppleはモバイル広告プラットフォーム構築の必要性に迫られており、AdMobの代替として米Quattro Wirelessを今年1月に買収し、さらに4月にはQuattroの広告プラットフォームをベースに開発した「iAd」を発表した。iAdは今夏にリリースされるiPhone OS 4に標準で組み込まれ、すべてのアプリ開発者が利用可能だ。一方でAppleはiPhoneにiAd以外の広告プラットフォームを持ち込むことを規約で禁止しており、事実上AdMobなどのサードパーティ排除に向かっている。iPhoneは今後モバイル広告市場の目玉になることがアナリストらによって予測されており、FTCにとって頭の痛い問題は、仮にGoogleのAdMob買収を阻止して市場専有化を防止したとしても、Appleのシェアを拡大させるだけだという点にある。
現在まだ極小だといわれる米国でのモバイル広告市場だが、数年後の市場勢力図を想定した判断がFTCには求められている。