米Microsoftは5日(現地時間)、同社Webブラウザ「Internet Explorer 9」(IE9)のPlatform Preview最新版の提供を開始した。これは同社が3月に米ネバダ州ラスベガスで開催したMIX 10でリリースされたPlatform Previewの第2弾(Platform Preview 2)にあたり、HTML5標準へのさらなる準拠やパフォーマンスの向上など、いくつかの改良が施されている。ベータテスト参加希望者はIETestDriveのサイトからダウンロードが可能。

互換性問題とパフォーマンスの低さがたびたび問題にされているIEだが、IE9では業界の次世代標準として注目を集めるHTML5への対応に加え、他ブラウザに大きく出遅れていたJavaScriptの実行速度改善など、パフォーマンスチューニングが大きく施されている点が特徴となる。その成果はすでに開発バージョンの中に現れており、同社が公開した最新のSunSpiderベンチマークのグラフ(下図参照)では3月のPlatform Preview 1よりもさらにパフォーマンスが向上しており、すでにSafariに迫るレベルにまで達している。

米Microsoftが公開したWebkit SunSpider JavaScript Benchmark最新版

だが今回のPlatform Preview 2リリースを発表したIEチームのDean Hachamovitch氏によれば、SunSpiderはあくまでJavaScriptというWebブラウザを構成する1要素を測定するものでしかなく、実際世の中に存在するページの多くはそれ以外の要素に大きく依存しており、全体のパフォーマンスを向上させることが重要だと訴えている。

IE9でサポートされるWeb描画のGPUアクセラレーション機能が、そのアイデアを実現するIE9最大の特徴ともいえるだろう。下記のビデオ映像は、GPUアクセラレーション効果の期待できるIE9とそれ以外のブラウザでの、同じマークアップ言語によるWebページの実行サンプルでの比較だ(要Silverlight)。

Platform Preview 2のAcid3スコア

そしてIE9でのもう1つの柱となるHTML5サポートだ。HTML標準対応度測定テストとしてよく利用されるAcid3だが、MIX 10で公開されたIE9 PP1のスコアが55だったのに対し、Platform Preview 2では68まで向上している。「一部で標準対応度の簡易テストとして利用されている」(Hachamovitch氏)というAcid3だが、HTML5やCSS3の細かい機能のテストも複数含まれているため、Webブラウザの標準へのおおまかな対応状況を把握するうえでは十分だろう。

Platform Preview 2で新たにサポートされた新機能として「CSS3 Media Queries」や「DOMContentLoaded」があり、デスクトップPCやモバイル環境でスクリーンサイズに合わせてWebページ表示を最適化したり、Webページの構文解析が終了してすぐにユーザーからの入力を受け付けることでレスポンスが向上している。

この他Hachamovitch氏はPlatform Preview 2リリース2日前にあたる3日にIEBlogへの投稿の中でHTML5サポートにおける動画コーデックの話題についても触れており、IE9のビデオタグでサポートされるコーデックがH.264のみとなることを明言している。HTML5のビデオタグサポートについてはWikipediaのページの表がわかりやすいが、Operaやオープンソース系ブラウザFirefoxで採用されているOgg Theoraに対し、Safariや今回のIE9はH.264のみをサポートしており、事実上両陣営に互換性がない状態になっている。

一方で、Chromeのように両コーデックをサポートするブラウザもあり、Googleが今月中旬に発表すると言われているVP8のオープンソース化の噂と合わせ、今後の動向に注目が集まる。

この他IE9 Platform Preview 2には、テストバージョンのみに搭載されている機能がある。それがユーザーエージェント(UA)偽装機能で、いくつかプリセットで用意されているターゲットブラウザをメニューから選択することで、UAを他のIEバージョンやブラウザに偽装してサイトにアクセスできる。IE9では標準準拠のために、これまでのIE7やIE8などとはかなり異なる形で実装が行われている。短くなったUA Stringと合わせ、確認してみるといいだろう。