4月1日付で代表取締役 執行役員社長に就任する遠藤信博氏

NECは2月25日、2012年度までを対象とした3カ年の中期経営計画「V2012」を発表した。同経営計画は、4月1日付で代表取締役 執行役員社長に就任することが決まっている現 取締役 執行役員常務の遠藤信博氏が中心となって策定したという。

V2012は、同社が2007年に取りまとめた10カ年の長期経営計画「NECグループビジョン2017」を達成するためのマイルストーンとして位置付けられている。同ビジョンに掲げられている「2017年に当期利益2000億円、ROE約15%、海外比率50%」という目標から逆算するかたちで設定された。

NECグループビジョン2017とV2012の関係

具体的な数字としては、売上高4兆円、営業利益2000億円、当期純利益1000億円を設定している。2009年度の見込みはそれぞれ3兆6600億円、600億円、100億円。売上高で言えば、年平均3%(NECエレクトロニクスの売り上げを除外すると年平均8%)の成長が必要であり、海外を中心に売り上げを伸ばしていく考え。

V2012で掲げられた主な数字

注力分野としては、「IT/ネットワークソリューション事業」、「グローバル事業」、「環境/エネルギー事業」が挙げられた。

これらのうち、IT/ネットワークソリューション事業については、「クラウド時代においては、ネットワークとITの双方を融合させることが大切。両分野で強い技術力を持つNECの強みを生かしてソリューションを展開していく」(遠藤氏)と説明。指紋認証、画像認識などの端末提供も含めた複合的なソリューションで他社に対する差別化を図っていく考え。

また、同社は、この事業におけるセグメントを「エンタープライズ」、「テレコムキャリア」、「ソーシャルインフラ」、「ユビキタスデバイス」の4つに分類しており、エンタープライズで7%、テレコムキャリアで10%、ソーシャルインフラで13%、ユビキタスデバイスで7%の年平均成長率を見込んでいる。

IT/ネットワークソリューション事業の成長戦略

現 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏

発表会では、IT/ネットワークソリューション事業にリソースを集中させることが何度も強調された。現 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏は、「これまで、成長戦略を考えるうえで半導体や携帯電話に対する"期待"を持ちすぎていたことは否めない」と説明。そのうえで、「今回の計画の大きな特徴は、NECの最も大きな強みで長年にわたり注力してきたC&C(Computer & Communication)分野に集中する点にある。クラウド時代の到来により、C&Cというコンセプトの本格的な実現が現実味をおびてきた。NECの"ストライクゾーン"に力を注げば、大きな利益が上げられる状況が整ってきている」と続け、基軸が同事業にあることを明言した。

こうした方針に基づき、2010年4月には「ITプラットフォームビジネスユニット」と「企業ネットワークソリューション事業本部」を統合し、「プラットフォームビジネスユニット」を新設する予定。同社が掲げる「C&Cクラウド戦略」の下に、「IT・NW共通プラットフォーム」プロジェクトを始動させ、両技術の融合を加速させていく。

「IT・NW共通プラットフォーム」開発へ

また、グローバル事業に関しては、アジア/新興国マーケットのリソースを拡大させる。2010年4月より新たに「中華圏APAC営業本部」を設置する予定で、「米州EMEA営業本部」との2極体制で海外営業を推進していく。なお、将来的なビジョンとしては、北米、中南米、中華圏、APAC、EMEAの5極の営業体制を考えており、各域内のアセットを有効活用しながら最適なソリューションを創出していく意向だ。

グローバル事業における注力ポイントとしては「パブリックセーフティ」が挙げられた。この分野ではすでに、30カ国以上、200以上の団体でバイオメトリクスソリューションが導入された実績を持ており、そのノウハウを集約し、グループ横断的な販売推進体制を確立する。

パブリックセーフティをグローバル展開

そして、3つ目の注力分野である環境/エネルギー事業では、リチウム電池が中核になる。2010年4月には大容量ラミネートリチウムイオン二次電池事業を扱う新会社「NECエナジーデバイス」を設立し、2012年までに1000億円事業に育てる考え。

年間生産能力は2012年度末で1000万kWhになる見込みで、将来的にはスマートグリッドを核とする新領域創出につなげていくという。

環境/エネルギー事業の展開