既報の通り、UQコミュニケーションズは17日、モバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」の2段階制定額サービス「UQ Step」の提供を18日から開始する。同時に、18日から31日までの間、同社直販サイトでUQ WiMAX対応端末を半額にするキャンペーンも実施する。同社の田中孝司社長は会見で、「業界最安」「最速」などを他社との優位点として掲げ、「他社に比べて劣っているのはエリアだけ」として、今後エリア拡大をさらに強化していく考えを示した。

UQコミュニケーションズの田中孝司社長

今年のUQ。エリア拡大を前倒しし、WiMAX搭載PCも拡大。最速の通信速度に加え、新たに最安値の料金プランも投入する

UQ Stepは、月額380円から始まる2段階制の料金プラン。上限金額は月額4,980円、1パケットあたりの料金は0.042円で、9,050パケット分の無料通信料が含まれる。同社はこれまで、通信料が一定の「UQ Flat」を月額4,480円、24時間利用できる「UQ 1Day」を1日600円でそれぞれ提供してきたが、新たに「業界最安」(田中社長)の料金プランを出し、ライトユーザーの取り込みを狙う。UQ WiMAXでは、公衆無線LANサービス「UQ Wi-Fi」を無料オプションとして提供しており、「UQ Wi-Fiだけ使えば(月額)380円」(同)だ。

2段階制の料金プランの料金プランUQ Step

UQ Flatに比べ、普段の利用率が分からない人や、軽量なテキストメール程度の使い方の人に向けたプラン

田中社長は7月の段階で2段階制の料金プランについて言及していたが、反響が大きかったことからMVNO(仮想移動体通信事業者)向けにも2段階制の料金プランを提供する。

MVNO向けの料金プラン

UQでは、他の携帯事業者のように、通信料を割り引く代わりに長期間の契約を求める長期間契約は設定しない。この長期間契約で割り引かれた通信料を前提としても、他社よりも安く、「業界で最安になる自信がある」(同)料金だ。田中社長は、これまでの解約者の推移を見た限りは「長期間契約をしなくても問題ない」との認識で、今後も長期間契約・契約解除料の徴収という施策はとらない意向だ。

他社料金との比較。左は期間拘束なしの場合、右は拘束ありの場合。拘束なしでは1,000円以上安く、拘束ありを含めても業界最安という

UQ WiMAXは、理論値で下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsを実現するが、同社が東京23区内で実際に走行テストを行ったところ、幹線道路沿いは10Mbps以上の速度が出る場所が多く、今後も国道16号線内を重点的に整備し、高速通信を維持していく。

実際の走行テストによる調査結果。おおむね10Mbps以上の速度が出ていたという

また、現時点で45都道府県330市区町村で利用可能になっており、基地局数も4,160局(15日現在)に拡大。10月以降は、1カ月あたり1,000局近い基地局を開設しており、計画を前倒ししてエリア拡大を続けている。田中社長は、「基地局は建てなければ話にならない。2009年度内に必ず6,000局を超える」と話す。当初の予定は4,000局だったが、社内では6,000局の計画で進めてきたということで、今後も公表してきた計画を前倒してエリア拡大をしていく考え。

15日現在のエリア状況。基地局から電波創出を総務省に申請している基地局数も6,000局を超えており、順次利用可能になる

基地局の稼働数の推移。拡大を続けており、今後も月間1,000局を目指して拡大するそうだ

エリア拡大では、まず基地局の数を増やして屋外エリアを拡大し、都心部を中心にビルの影などの不感地や屋内でも利用できるようにする。駅構内や高速道路もエリアを広げ、「来年度の早い時期にはイー・モバイル(の基地局数)を抜ける」(同)レベルにまで拡大する。来年度中に「1万2,000局は厳しいかもしれないが、かなりの数」(同)の基地局を設置する計画だ。

エリア拡大の流れ

総務省による基地局の許可数。他社に急速に近づいている

鉄道に関しては、JR東日本「成田エクスプレス」の新型車両E259系の車内において、WiMAX通信を無線LANに変換して車内通信が行えるようにしているが、わずかに残る圏外の地域を解消するとともに、今後直接WiMAX通信が利用できるようにしていく予定。

成田エクスプレス(N'EX)では、現在は無線LANを使って利用可能にしている

屋内対策としての中継装置も順次設置を行う

UQ WiMAXでは、ノートPCへの内蔵にも力を入れており、現時点で6メーカー16機種のPCが内蔵しているほか、来年1月以降の新モデルで20機種を超えるPCが利用可能になる。UQ WiMAXはLANと同様に、明示的な接続作業を行わなくても通信が可能なため、UQ WiMAX内蔵PCでは、PC起動と同時に自動的にインターネットに接続される。また、外付けのWiMAX端末に比べ、PCでは大型のアンテナが搭載できるため、感度もいいという。こうした点から田中社長は、UQ WiMAXの利用で「気持ちのいいインターネットの使い方」ができると強調。2010年にはネットブックも含めてノートPC全機種搭載を目指すという。

さらに、UQ WiMAXを無線LAN機器で利用可能にするモバイルWi-Fiゲートウェイ機器をすでに3機種リリースしており、レイテンシが短いUQ WiMAXの特徴から携帯ゲーム機でのゲーム利用にも最適としており、ゲーム機ユーザーの獲得にも力を入れる。

発売済みのモバイルWi-Fiゲートウェイ

また、海外との国際ローミングも進めており、現時点で米CLEAR、露Yotaとの協議を行っており、来春にはサービスを開始したい意向。田中社長によれば各社で異なる料金プランなどの調整が難しいとのことで、この2社との協議がまとまり次第、他国の業者ともローミングに向けた協議を行うという。

田中社長は、2月からの試験サービス、7月からの本サービスが始まった09年を振り返り、試験サービス中のネットワーク停止や7~9月にかけての障害による基地局建設の停滞など、「いくつかのトラブルはあった」としつつ、「非常にうまくいった年」と話す。加入者数は9月末までで2万強だが、これも「内部計画的には非常にいい形」としており、今後さらに唯一の弱点だというエリア拡大を積極的に行い、「最安」「最速」といった武器に加え、「来年度のいい時期に、これがWiMAXらしい新しい使い方を提案」(同)していく考えだ。

10年は、3月までに政令指定都市、県庁所在地をカバー。屋内対策も行い、エリアを拡大していく

さらに新たな提案をするというが、今回内容は明らかにされなかった