既報の通り、ソフトバンクモバイルは10日、2009年冬~10年春にかけての携帯電話端末の新製品と、それにともなって新サービスを開始する。「今回の発表会の最大のキーワードはWi-Fi」と孫正義社長は強調する。
ソフトバンクは今回の新モデルでは、22機種中8機種に無線LAN(Wi-Fi)を内蔵させた端末を投入する。Wi-Fi対応の携帯電話を一度に8機種も投入するのは「世界でも例を見ないのではないか」と孫社長は言う。
「携帯電話は速度をどんどん進化させてきた」(孫社長)。しかし、それでもまだ速度を求める声があり、それに対して出した答えが無線LANだ。無線LANは、一般的なIEEE802.11g規格で下り最大54Mbpsの通信速度であり、すでに最新規格の802.11nでは同300Mbpsまで高速化されているため、現在のソフトバンクの同7.2Mbpsに比べてはるかに高速だ。「これからの携帯サービスには、高画質なビジュアル、動画、高速なWebブラウジングが当たり前といわれる」ため、携帯でもブロードバンドにつながる必要がある、と孫社長は訴える。そのため、携帯にはWi-Fiが必要であり、「これからWi-Fiの付いていない携帯は携帯ではない」(同)という時代が来ると孫社長は強調する。
端末を一気に投入するという「Wi-Fiに対する取り組みを明確に意図して始めるということで、(11月10日が)エポックメイキングな日になる」と孫社長は胸を張る。これによって高速化すると、Wi-Fiでなら100MBの動画を一度にダウンロードできるが、3G回線だと制限があって10MBごとに10回に分けてダウンロードしなければならない。Wi-Fiなら100MBという大容量の高画質動画が簡単に見られるようになる、というのだ。
「携帯(の利用法)が通話、メール程度なら3Gでいい。大容量の動画や高速インターネットブラウジングをしようとしたら、絶対に"Wi-Fiが付いていないと不便で息苦しい"といわれる時代が来る」と孫社長は予測する。
ソフトバンクでは、単にWi-Fi対応携帯を大量にリリースするだけでなく、「ケータイWi-Fi」サービスとしてコンテンツにも注力。「インターネットカンパニーのソフトバンクだからこそ、ケータイWi-Fiのスタートに当たって特別なコンテンツを用意した」(孫社長)。
コンテンツとしては、情報料無料で一紙丸ごと配信される産経新聞、年内中に20誌以上の雑誌を配信するMAGASTORE、抽選で公開前の映画の本編すべてを配信する「ケータイ試写会」に加え、よしもとオンライン、ニコニコ動画、電子レンタルビデオ、Yahoo!動画を用意。さらにYouTubeやGyaO!も利用可能にする。Yahoo!動画に12,000タイトルの携帯向け動画を、電子レンタルビデオには2,000タイトルを用意したということで、豊富なコンテンツを準備し、しかも「ソフトバンクでだけ楽しめる」という点を強調する孫社長。
ケータイWi-Fiでは通信に無線LANを使うため、利用するには自宅や会社、外出先などで無線LAN環境が必要となる。ソフトバンクテレコムが運営する公衆無線LANサービス「BBモバイルポイント」のエリアであれば、「ソフトバンクWi-Fiスポット」として無線LANを無料で利用できる。今後、「Wi-Fiスポットを一気に広げていきたい」(同)考えだ。孫社長によればiPhone全体のアクセスの内、5割が自宅の無線LAN経由だそうで、今後学校や会社、駅、喫茶店などでWi-Fiが利用されることで、「生活時間の8割ぐらいはWi-Fiにつながるようになるだろう」と予測する。
無線LANでのアクセス中はパケット通信料はかからず、コンテンツの情報料も無料で提供されるが、「Wi-Fiバリューパック」への加入が必要となる。「ケータイWi-Fi」の月額使用料490円と専用のパケット定額サービス(月額4,410円)が含まれている。さらにS!ベーシックパック(月額315円)への加入が必要となるため、月額使用料は月額5,215円となる。
一般的な2段階制定額ではないため、利用が少ない月でも5,215円が必要だが、パケット定額なのでどれだけ大容量コンテンツをダウンロードしても上限は5,215円となる。孫社長は、iPhoneユーザーの9割が2段階制定額の上限金額まで使っており、自宅に無線LANを持って大容量コンテンツを楽しみたいというようなユーザーは上限まで使う場合がほとんどになると推測。そのため「2段階定額は有名無実化している」(同)ことから、ケータイWi-Fiではフラットなプランにしたのだという。
孫社長は、「今日の最大のキーワードはWi-Fi。この一言」と繰り返し強調。「世界で最初に、Wi-Fiイコール携帯、携帯イコールWi-Fiという方程式を、すべての端末に展開していきたい」と意気込みを語る孫社長。今後Wi-Fi対応携帯が当然になったときに、「ソフトバンクが先陣を切ったと後々言われるのではないか」との認識を示す。
すべての端末をWi-Fi対応にしたいというコメントも出した孫社長だが、それ自体は「芸術的表現」であり、「ビジョン」だと慎重に修正。携帯カメラが当初、全端末に必要ではないという人もいたと指摘し、当初はWi-Fiが不要なユーザー向けの機種には搭載しない考えだ。ただ、将来的には「全機種に搭載されていて当たり前という時代が来て、最初に予見したのはソフトバンク、最初に実行したのもソフトバンクだと受け止めてもらえればいい」(同)という。