既報の通り、ソフトバンクが29日発表した2010年3月期の上期(4-9月期)の連結決算は、売上高が前年同期比1.5%増、営業利益は同28.1%増の増収増益だった。孫正義社長は「モバイルインターネットの時代到来を信じていた」と、今後の事業展開に自信を示した。
営業利益は2,306億円となり、前年同期比で4年連続の過去最高益を更新し、4-9月期の営業利益が2,509億円だったKDDIに迫る水準となった。純利益も、前年同期比72.1%増の707億円で、上期として過去最高益となった。フリーキャッシュフロー(FCF)も1,770億円となり上期としては過去最高を更新。こうした業績の好調を受け、同社では2010年3月期通期のFCFの予想を従来の2,500億円から500億円積み増し、3,000億円に上方修正した。2010年3月期の連結営業利益は、当初予想の4,200億円を据え置いた。
事業別に見ると、移動体通信事業の売上高が前年同期比7%増の8,274億円、営業利益が同49%増の1,317億円で過去最高益となり、同事業の好調ぶりが、ソフトバンク全体の利益を押し上げたことが明らかとなった。
1契約当たりの月額通信料(ARPU)については、2009年7-9月期のARPUは4,150円で、2009年4-6月期(4,030円)と比べ120円増えた。120円の増加分のうち、基本料+音声が10円増(2,150円→2,160円)、データ通信ARPUの増加分が110円(1,880円→1,990円)で、データ通信部分がARPU増加の大きな要因となっている。累計契約数も、2009年9月末時点で2,100万件を突破し、ARPUと契約数の双方の増加が、移動体通信事業の好調につながった。
29日に東京都内のホテルで開いた決算発表会において、同社の孫正義社長は、「iPhoneが前年同期比で数百%以上の伸びを示した」と業績好調の要因として"iPhone効果"が大きいと説明。「(モバイル端末を)通話のためのマシンからモバイルインターネットのマシンにすることが、2兆円近くをかけてボーダフォンジャパンを買収した唯一最大の理由だったが、こうした時代が必ずやってくると信じていた」と、iPhoneなどの普及により、"モバイルインターネット"の時代が実現しつつあるとの現状認識を示した。
自身についても、「iPhoneを使い始めて、PCを使う頻度が10分の1に減った」とし、ネット利用の95%をiPhone経由で行っていることを明らかに。「インターネットはPCと思っている人は時代から取り残される」とし、「ほとんどのケータイはiPhone化しつつある」と話した。さらに、「PCを使ってインターネットを使う人は化石のような人と思われる時代が来るのではないか」と述べた。
経営面については、「ボーダフォンジャパン買収は株価が6割下がるなど、失敗する可能性が高いとか、ソフトバンクは終わりだとかの評価が多かったが、モバイルインターネットは、経営面において大きく貢献する中核の事業になった」と、"勝利宣言"を行った。「借入金の返済も公約を上回るペースで順調に推移している」と述べた。決算発表によると、純有利子負債は2008年9月末比で約3,000億円減の1兆7,685億円となった。孫社長は、「2011年度末(2012年3月末)までには、純有利子負債を2009年3月末比で半減させる」との目標を新たに示した。
フリーキャッシュフローについては、「従来は、2009年度から3年間で1兆円"前後"のFCFを創出すると説明していたが、上方修正により、3年間で1兆円"以上"のFCFを創出すると変更する」と述べた。
さらに、「昨年の10月、11月は『有利子負債を返済できないのではないか』として市場がややヒステリックな動きを示し、いわれのない不安がまかり通っていた。だが実態は、4期連続で(営業利益・経常利益が上期として)最高益を更新した。現在の日本経済の中で、これだけの業績を上げているところはあるだろうか」と、市場の"言われなき懸念"を払拭できたと自負した。
設備投資については、データ通信トラフィックが増大していることに対応し、400億円を投じて、1.5GHz帯と2GHz帯のネットワークを整備していく方針を明らかにした。LTEについては、「端末とネットワーク、双方のタイミングを合わせながらバットを振る」と話し、最適な時機を見て事業展開していく方針を明らかにした。
iPhoneの供給体制に関する記者の質問に対しては、「先々月までは足りないという状況だったが、増産体制が整ってきた。今はもう大丈夫」と回答、供給体制が万全であることを強調した。
なお、ソフトバンクは29日、11月9日に予定されていた新商品の発表会を、11月10日に変更することも発表した。