既報の通り、HOYAのPENTAXイメージング・システム事業部(ペンタックス)はデジタル一眼レフカメラの新製品「PENTAX K-x」を発表した。会見では、K-x開発のコンセプトとともに、限定モデルやカラーバリエーションも紹介された。

K-xは、従来機「K-m」をベースとし、レンズキットで実売価格が7万円を切るエントリークラスの製品ながら、ミドルクラス並みのスペックを備えたモデル。新モデルとなるK-xは3つのコンセプトをもとに開発したという。

ミドルクラス並みのスペックを備えたエントリーモデル「PENTAX K-x」

K-xのコンセプト

1つめはミドルクラス並みのカメラ性能を搭載すること。撮像素子はK-mのCCDからAPS-Cサイズ有効1,240万画素CMOSに変更された。CMOSに変更したことで高速性能が向上。低ノイズ化も図られており、画像処理エンジンは上位機種「K-7」と同じ「PRIME II」を採用し、高画質化と高速動作を実現している。

新たにCMOSを搭載し、画像処理エンジンも「PRIME II」へと強化

これによって、4.7コマ/秒の高速連写が可能になった。常用ISO感度はISO6400までと拡張され、ISO3200でも低ノイズ・高解像の画像を実現しているそうだ。さらにライブビュー機能を備えたことで、Motion JPEG形式で1280×720・24fpsのHD動画の撮影にも対応した。ボディ内手ブレ補正「SR」(Shake Reduction)はシャッタースピード換算で最高約4段分、シャッタースピードは最高1/6000秒までをサポートする。

CMOSとPRIME IIによって高感度画質が向上。ISO3200でK-mと比べると、明らかに低ノイズ・高解像となっている

ライブビューでは顔検出も可能。動画もHD動画をサポートした

こうした機能はミドルクラス並みとしており、実売が10万円以下のエントリー、同15万円までのミドルクラスのモデルで比べてみると、常用ISO感度ISO6400はミドルクラスでも上位にあたり、1秒間あたりの連写コマ数はエントリーで最高クラス、ミドルクラスでも中間クラスを確保するなど、10万円以下ながらミドルクラスに匹敵するスペックを盛り込んだ。

他社エントリー・ミドルクラスとの比較。エントリークラスだけでなく、ミドルクラスと比較しても遜色がない

コンセプト2つめは「簡単・手軽」で、APS-Cクラスのデジタル一眼レフでは世界最小というボディで、「女性でも軽く取り回して撮影できる」(井植敏彰PENTAXイメージング・システム事業部長)サイズを実現。小型ボディに適した小型のLimitedレンズもラインナップが5種類と充実し、トータルでの小型化を可能にしている。

500mlのペットボトルより軽く、はがきより小さい

単焦点のLimitedレンズによって、さまざまな焦点距離でもトータルでコンパクトになる

モードダイヤルには「オートピクチャーモード」を搭載したことで、カメラが自動でシーンを判別し、そのシーンに最適な設定で撮影できる。人物、風景、マクロ、夜景といったシーンが自動判別される「ユーザーにとって優しい機能」(同)だ。

コンパクトデジカメにも搭載されているオートピクチャーモードで、細かいことを考えなくても撮影できる

右側にボタンを集約させ、片手での操作に配慮した

3つめとなるのが「多彩な写真表現」。簡単に画像の色合いや雰囲気を変更できる「カスタムイメージ」は新たに「ほのか」を追加して7種類になった。各種パラメーターを細かく調整できるので「表現にこだわりのある人の欲求を満たせる」(同)。デジタルフィルターも16種類に増えており、複数のフィルターを重ねて適用させることで、新しい表現が可能になるという。

手軽に写真の雰囲気を変えられるカスタムイメージ

個性的な写真表現を可能にするデジタルフィルター

新機能となるのが「クロスプロセスモード」だ。これはフィルム現像時に、ネガフィルムをポジ現像液で、ポジフィルムをネガ現像液で現像するという手法をデジタルで再現したモードとなる。ユーザー側が効果を選択することはできず、「乱数表を用いていろいろなパラメーターを適用する」(同)というやり方によって、ランダムな形で効果が現れる。「偶然性、意外性という新しい写真の提案」がクロスプロセスモードだ。なお、動画に対してもクロスプロセスモードを適用することは可能だ。

クロスプロセスの原理

デジタルで再現することで、これだけの画像が生成できる

デジタルフィルターと重ねることや動画に適用することも可能

さらに、K-7に搭載されていた夕日の色成分を強調するホワイトバランス「CTE」や、3枚の画像を連写してダイナミックレンジを拡大するHDR機能も備えており、撮影機能は充実している。

再生時にインデックスプリントをカメラ内でレイアウトさせることが可能

HOYAのCOO・浜田宏氏は、「ペンタックスの特徴はいい点でも悪い点でも、物作りがまじめ。オーバークオリティといってもいい」と指摘。悪い点として、時代や競争、ニーズを考えずに製品を作ってしまう点を上げ、HOYAの買収後は、「いいものを作るのは当たり前で、マーケティングマインドを組織に植え付ける」ことを狙っていたそうだ。そしてそれが結実したのがK-xだという。

100色カラバリに「コレジャナイカメラ」

K-xでは、そうした市場ニーズの分析から今回、ボディカラー20色、グリップカラー5色を組み合わせ、計100種類のカラーバリエーションを実現するオーダーカラーサービス「PENTAX K-x 100colors,100styles.」を実施。カラーシミュレーターで色の組み合わせをチェックしながら注文でき、注文後2~3週間で手元に届くという。

ずらりと並んだカラーバリエーション

標準の3色に加え、さまざまなカラーが選べる

これまでもペンタックスでは、K-mのカラーバリエーションとしてオリーブやホワイトモデルを販売しており、そうした経験で「工場が小回りのきく状態」であることから、今回の計100色のカラーバリエーションを実現したそうだ。

さらに今回、限定モデルとして「K-x コレジャナイロボモデル」もリリースする。ザリガニワークスが作る「コレジャナイロボ」は、子供がプレゼントに対して「これじゃない!」と嘆くようなロボットというコンセプトの木製玩具で、角材とペンキ、油性ペンで作られたロボットだ。派手な赤、青、黄色のトリコロールカラーのコレジャナイロボが「カメラに変形したような」(ザリガニワークス)カラーリングを施したのが、今回のK-x コレジャナイロボモデルだ。

コレジャナイロボ

さまざまなバリエーションがある

コレジャナイロボがカメラになる……

実際の製品はこんな感じ

実際のコレジャナイロボと同様、顔などの一部はザリガニワークスが1台1台油性ペンで手書きしており、「コレジャナイロボがいらない人は、この部分を重点的にさわれば消える」(同)そうだ。3色カラーの部分は、さすがにペンキではなく、通常と同じ塗装がされているらしい。販売数は限定100台。価格は、通常のK-xに1万円程度を上乗せしたぐらいになるようだ。

コレジャナイロボモデルは同社の遊び心から生まれた限定モデルだが、「しっかりしたカメラが作れたので遊べる」(井植氏)というK-xに対する自負があるからこそ生まれたモデルだといえそうだ。

発表会には女優の穂のかさん、元F1レーサーの片山右京氏らも登場。穂のかさんは、100色カラバリの中からピンクを選択していた。普段からカメラを持ち歩き、海外では2,000枚ぐらいの写真を撮るほどカメラ好きだという。エベレストなどに登ったときに見る空の紺碧の色が好きという右京氏には、ペンタックスからブルーのK-xが贈られていた