NEC、カシオ計算機、日立製作所の3社は14日、携帯電話端末事業を統合し、合弁会社を設立することに合意したと発表した。新会社は2010年4月1日に設立される予定で、新会社名は「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ株式会社」となる。縮小する携帯端末市場において、統合による開発リソースの効率化や資材コストの低減などを実現し、成長が見込める海外市場への足がかりを得るためには3社の統合が不可欠と判断した。

左からカシオ日立モバイルコミュニケーションズの大石健樹社長、NECの大武章人専務、カシオ計算機の高木明徳常務、日立製作所の渡邉修徳コンシューマ事業本部長

カシオと日立は、04年4月に携帯端末事業の合弁会社としてカシオ日立モバイルコミュニケーションズ(CHMC)を設立、事業を行っており、08年度で売上高は1,570億円、出荷台数は380万台だった。NECの携帯端末事業は売上高2,314億円、出荷台数510万台で、この両社が事業統合することで、売り上げ規模は4,000億円弱、出荷台数は約900万台となり、市場シェアは19%でシャープに次いで業界2位に躍り出る。

3社が事業統合に至った理由は厳しい市場環境だ。国内市場は、07年度で5,076万台の出荷だったが、08年度には3,589万台と大幅に縮小。今年度も、現在のペースでいくと「3,000万台程度」(NEC大武章人執行役員専務)となる見込み。今後も大きな拡大は期待できず、「国内メーカー8社では競争が厳しい」(同)のが現状だ。国内市場は今後も縮小が予測されており、新会社では12年に国内で700万台の出荷を目指す。この時点でシェアは23%で第1位になる見込み。

海外市場に目を向けると08年度が12億台の出荷で、09年はやや減少する見込みだが、その後は順調に拡大し、「数年で15億台まで伸びる」(同)と予測されている。大武専務は、海外市場では「先端技術に強い日本企業が参入するチャンスがある」と見ており、3社の統合で国内市場において確固たる地位を築き、海外市場に進出していく考えを示す。

国内市場では新会社がシェア19%。その後シェア1位を目指し、海外での販売も強化。国内外での販売台数比率も6:4程度まで伸ばしたい考え

NECは中国市場から撤退するなど、海外への足場がない状態だが、CHMCは米国市場においてキャリアのVerizon Wireless向けに端末を供給しており、防水・耐衝撃性能を特徴としてブランドを確立。06年の参入以来、販売台数が3倍に伸びているという。新会社ではこれを足がかりに、12年には米国市場を中心に海外で500万台規模まで拡大したい考えだ。この結果、国内と海外を合わせ、出荷台数1,200万台を目指す。

米国市場で一定の評価を得ているCHMCの端末

国内外で使われているCHMCのブランド

NECの携帯事業の強みは、3G/3.5G/3.9Gの技術を世界に先駆けてNTTドコモと開発したり、無線LAN/VoIPを携帯に内蔵するなどのプラットフォーム技術や小型・薄型化技術、業界トップクラスの低消費電力といった分野だという。

それに対してCHMCは、カメラブランド「EXILIM」、タフネスケータイ「G'z One」、薄型テレビなどのブランド「Wooo」の名を冠するカメラや映像関連機能、防水・耐衝撃技術、CDMA技術といった強みを持つ。

さらにNECはNTTドコモとソフトバンクモバイルに端末を供給し、CHMCはKDDIを中心にソフトバンクモバイル、Verizon、韓国LG Telecomに端末を供給していることから、両社の競合は少なく、「お互いで補完関係ができるベストパートナー」(同)というわけだ。

両社の強み

補完する場面の多い両社

今後、3.9GのLTEが立ち上がっていくが、当初は3Gなどとのハイブリッド端末になると見られており、新会社はGSM/W-CDMA/CDMA2000ノイズれにも対応でき、「全方位展開が可能な通信スキル」(CHMC大石健樹社長)を備えることになることも強みだ。

両者を併せることで、次世代通信にも対応できる

新会社は、規格、開発、調達、製造、営業、保守などの携帯事業全体を受け持ち、これまでの「EXILIM」、「G'z One」、「Wooo」といったプロダクトブランドを生かしていく予定だ。ただし、今後の展開次第では現在の国内3ブランドの存廃も検討していく。

現在は、すでに決まっているロードマップがあるため、しばらくは従来通り個別の端末の開発が行われるが、今後は事業統合によるシナジー効果を発揮するために、新会社が端末を開発する。

新会社では、NECの事業を分割してCHMCを合併する。NEC子会社の生産拠点も移行する

大武専務は、国内3,000万台規模では「8社が生き残るスペースはない」ため、メーカーの合従連衡が進むとみている。そのため、早期に最適なパートナーと組み、海外基盤を早急に構築したほうがチャンスがあるとして今回の統合に至ったとしている。

新会社NECカシオ モバイルコミュニケーションズは、NEC玉川事業場内に本店を置き、資本金は合弁時に10億円、10年度第1四半期中に50億円に増資する。出資比率は、当初NECが66%、カシオが17.34%、日立が16.6%、増資後はそれぞれ70.74%、20%、9.26%となる。社長はNECが指名し、NECから6人、カシオから2人の役員を派遣する。NECの携帯事業部門とCHMCの社員が移行し、連結子会社を含めると従業員は2,200人規模になる予定だ。