「求職者は、いま自分が使っているSNSやWebサービスのIDとパスワードを教えるように」──米国の片田舎にある小さな街で出された市職員の募集広告が波紋を呼んでいる。この話題は地元TV局によって報じられ、瞬く間に全米に拡大。数々の批判が飛び込んでくるなかで19日(現地時間)、市当局の謝罪と条項撤回にまで発展した。

この募集広告を出したのは、米国北西部はモンタナ州にあるボーゼマン(Bozeman)市。米Associated Press (AP通信)によれば、ボーゼマン市職員を募集する公告には次の一文が添えてあったという。

個人や会社のWebページ、あるいはインターネットのチャットルームやSNS、会議室といった場所で会員登録をしている方は、それらをすべて列挙してください。これらには、Facebook、Google、Yahoo、YouTube.com、MySpaceといったサイト以外のものも含みます。

また、これらの利用サイトに加え、中身を閲覧するためのIDやパスワードの記載も要求していたことが問題を大きくした。

市職員の募集広告にこの条項があることをCBS系列の地元局であるKBZK-TVが17日に伝えると、情報は瞬く間にインターネットを通じて全米に広がり、多くのWeb会議室での議論の的となった。その結果、市当局には大量の苦情が殺到、モンタナ州の人権団体であるAmerican Civil Liberties Union (ACLU) of Montanaも市の行動に抗議する事態となっている。

こうした騒動を受け、19日になり同市マネージャのChris Kukulski氏は声明の中で「たくさんの関心を受けたことに感謝しつつ、迷惑をかけた方々に謝罪したい」とコメントし、募集条項の撤回を表明した。同市の説明によれば、IDやパスワードを要求したのは求職者のバックグラウンドを調べるためだけであり、それによる影響の大きさを測れなかったようだ。また募集の際にIDとパスワードの提示を拒否した人物が、不利になるような状態にはなっていないという。「パスワードまで要求するのは一線を越えていた」というのが今回の結論だろう。

不景気で再就職が厳しい状況下において、こうした人の弱みを突く行動には当然反発の声が挙がってくる。悪意なしの行動から生じた騒動とはいえ、認識不足それ自体が大きな問題となる。