マイクロソフトは、Dynamics CRMにおける新たなコンセプトである「XRM」を発表した。XRMは「X(Any Bisiness Entity) Relationship Management」の略で、CRM(Customaer Relationship Management)の「C」の部分に、顧客管理以外のあらゆる業務・業態に向けたアプリケーションという意味を示す「X」を割り当てたものだ。

XRMには、パートナーにDynamics CRMプラットフォーム上でさまざまなアプリケーションを新たに開発してもらい、ユーザーにCRM(顧客管理)以外の幅広いソリューションを提供することにより、Dynamics CRMプラットフォームを拡大していきたいという狙いがある。

XRMアプリケーションの定義

マイクロソフト Dynamics事業統括本部 本部長代理 中西智行氏

Dynamics CRMは、マイクロソフト初のビジネスアプリケーションで、グローバルでは1万8000社への導入実績がある。日本では2006年9月より販売を開始し、これまで100社ほどに販売してきたという。マイクロソフト Dynamics事業統括本部 本部長代理 中西智行氏は「立ち上げ当初は苦労したが、SFAやコールセンターといった分野への導入が進み、今期は対前年比2.5倍の業績をあげている。ここ2、3年は、倍々で伸びていくと予想しており、今後はDynamicsビジネスをマイクロソフトの業績を伸ばすための重要な事業として位置づけ、注力していきたい」と好調さをアピールした。

マイクロソフト Dynamics事業統括本部 マーケティング部 エクゼクティブ プロダクト マネージャー 斎藤誉氏

Dynamics事業統括本部 マーケティング部 エクゼクティブ プロダクト マネージャー 斎藤誉氏はXRMのメリットについて「企業はこれまで業務アプリケーションをスクラッチで開発したり、部分的にパッケージを採用するなどしてきたが、インタフェースがバラバラだったり、データ連携がしにくいという課題があった。また、それぞれ別のインフラを利用していることからTCOが肥大化するという問題もある。XRMで開発することで、これらの問題が解決でき、多様なアプリケーションを1つのプラットフォームで提供できる」と語った。

CRMからXRMへ

Dynamics CRMでは、マーケティング、セールス(SFA)、サービス/コールセンターといった業務に対する顧客管理機能を提供しているが、パートナーの中にはこれまでもDynamics CRMの機能拡張を行う、あるいは資産管理など別の業務に対する新たなアプリを開発して提供するといった、XRMのコンセプトに近い活動は行っている。今回あえてXRMコンセプトを打ち出したことについて斎藤氏は「Dynamics CRMの技術要素はマイクロソフトのテクノロジの集大成になっているので、XRMによって新しい市場を創出したい」と述べた。

Dynamics CRMは、マイクロソフトの「Software+Service」に対応しており、XRM戦略によって、今後SaaS型のアプリケーションが数多く登場することが予想される。具体的には、住友セメントシステム開発では、6月1日から一棟あたり月額2万円でビルメンテナンスソリューションを提供する予定であり。グレープシティは、私立学校向けに、進学希望者→受験生→学生→OB/OGと変化する学生のライフサイクルを管理するソリューションを提供する予定だ。

しかし、これら新たなアプリケーションをセールスフォースのようにマイクロソフト自身がSaaS事業者になって提供していくことはなく、マイクロソフトはあくまでプラットフォームを提供する立場で、ソリューションの提供はリレーションに基づくパートナーからの提供になるという。ただ、今後サービスが開始されるWindows Azureにおいては、プラットフォームだけを提供するPaaSとしてのサービスは提供する可能性があるという。