既報の通り、米Oracleは4月20日(現地時間)に米Sun Microsystemsの買収を発表した。取引は1株あたり9.50ドルをキャッシュで支払い、発行株数に対する総額は約74億ドル、Sunの手持ちキャッシュや債券を差し引いた金額は56億ドルとなる。発表同日早朝に両社は記者会見を開催し、買収に至った経緯や市場背景について説明を行った。
ソフトからハードまで、すべてを提供できる総合ベンダに
DBからミドルウェア、アプリケーションまで、企業向けソフトウェア全般を手がけるOracleに対し、サーバなどのハードウェアやミドルウェアを手がけるSunを買収するメリットは明らかだ。それについては米Oracle CEOのLarry Ellison氏がまとめて説明している。
「なぜSunなのか? これまでのOracleの買収戦略を紐解けば、PeopleSoft(JD Edwards)はNo.1 HRM (Human Resource Management)ベンダ、SiebelはNo.1 CRMベンダ、BEAはNo.1 Java実行エンジンベンダ、HyperionはNo.1 EPM(Enterprise Performance Management)といったように、つねに業界No.1のソリューションを選んできた。SunはNo.1のシステムプラットフォームベンダであり、No.1言語環境のJavaを抱えている。JavaはOracleのミドルウェア製品の中核であり、これまでに何億以上ものデバイスに搭載されて広く利用されている。Oracle DBはどのプラットフォームよりもSolaris上で多く動作しており、長年のパートナーシップもある最高のUNIX環境だ。両社の技術を合わせることで、DBからストレージまでを密接に連携させ、すべてを統合した最高のシステムを提供することが可能だ。この完成したシステムはTCOを抑える効果だけでなく、高いセキュリティを含むさまざまな効果をもたらすだろう」(Ellison氏)
こうした同氏のコメントにあるように、Oracle側は特にSunのSolarisとJavaを高く評価していることがわかる。これにSunのサーバとストレージ、そしてOracleの既存のソフトウェア・ソリューションをうまく組み合わせることで、特にハイエンドを中心としたシステムで総合システムベンダを目指す戦略のようだ。
米Sun Microsystems会長のScott McNealy氏は「両社ともにオープンスタンダードに準拠した製品であり、互いの顧客や技術にリーチできる」というメリットを強調している。また「コストや複雑性の問題を排除した統合ソリューション」にも触れており、ソフトウェア企業とハードウェア企業の合併による無駄の少なさやシステム提案時の相性の良さもあるようだ。この点は同業者同士の買収で、シェアの独占から守りの戦略に入る可能性があったIBMとの取引よりも明確だろう。米Sun CEOのJonathan Schwartz氏は「業界を洗練(Refine)させるもの」とコメントしている。
これからのOracle-Sun、製品の行方は……
米Oracle社長のSafra Catz氏は直近の買収効果について「買収完了後にnon-GAAPベースの通年で1株あたり15セントの純利益、営業利益ベースでは初年度に15億ドルの増収効果」が見込まれるとコメントしている。2年目には20億ドルの営業利益を見込んでおり、同社がこれまで手がけたどの買収案件よりも高利益体質に移行することが可能だという。これはIBMに買収を打診したきっかけとなった「コスト構造における問題」の解決が問題なく行えることを意味する。
むしろこれからの問題は両社の統合をいかに進めるのかという点で、当然発生する製品やプロジェクトの取捨選択に顧客ユーザーの関心が集まることになる。前述のように買収後にターゲットとする市場がデータセンターや企業向けの大規模システムということもあり、プロセッサを含むハードウェア製品全般、Solarisはそのまま生き残ることになる。またOracleはミドルウェア中心にJava技術に深く関わっており、今後も広く活用されることだろう。課題となるのは大量に抱えたオープンソースのプロジェクトとミドルウェア製品群の扱いだ。
Sunの代表的なオープンソースのプロジェクトは、買収したMySQLとVirtualBox、自身が以前より抱えていたGlassfishやNetBeansなどがある。OracleはFusion Middlewareを中心に多数の同種ミドルウェア製品をすでに抱えており、これら製品群をあまり必要としていない。Oracleのこれまでの買収のように既存の顧客を保護しつつ、将来的には別の製品への移行パスを提供したり、プロジェクトの順次フェードアウトが行われる可能性がある。あるいは逆に、MySQLなどの知名度を利用して同社のアプリケーション製品群と連携がとれるようにプロジェクトを強化してくる可能性もある。Oracle VMやSun xVMなどのように同じXenの派生品となるプロジェクトも存在するが、基本的には急にプロジェクトが消滅することはなく、緩やかに移行する形態をとると思われる。