日本ヒューレット・パッカードは4月9日、Intel Xeon 5500プロセッサ(開発コードネーム"Nehalem")を搭載した「HP Proliantサーバー Generation 6(G6)」11機種を発表した。今週、インテル自身の発表も含め、各ベンダからいっせいにXeon 5500搭載機がリリースされたが、日本HPはその最後発となった形だ。しかし同社は「他社製品に比べても遜色ない、というより圧倒的に勝っている」(同社 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 本部長 橘一徳氏)と新シリーズに強い自信を見せる。

まず驚かされるのは11機種という数の新製品を一挙に市場投入した投資スケールの大きさだ。「x86サーバ市場におけるポートフォリオの広さが当社最大の強み」(橘氏)という言葉のとおり、10万円台のエントリモデルからブレードまで、あらゆるタイプの機種にXeon 5500を搭載し、幅広い顧客のニーズに応えた形だ。同社 執行役員 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 松本芳武氏は、G6シリーズを「シェア獲得のための戦略的商品」と位置づけていると語る。

本日発表のXeon 5500搭載「HP ProLiant G6」シリーズを囲む日本HPの松本芳武氏(右)と橘一徳氏。「不況下にあって顧客のサーバ仮想化/統合化への要求は強い。今回の新シリーズはその声に対する回答のひとつ」(松本氏)、「HP ProLiant G6 で日本企業を支援したい。"ITの投資効率を高める"と宣言した年初の言葉をより確実にするための製品」(橘氏)

Xeon 5500は、各コアの利用状況に応じて稼働クロックを加速する「ターボブーストテクノロジ」や「ハイパースレッディングテクノロジ」などを擁する、状況に応じて柔軟に処理を行うことができるインテリジェントなプロセッサだ。だが当然ながら、第6世代のHP ProLiantは単にXeon 5500を搭載しただけではなく、その性能を引き出し、「前モデル(G5)の2倍以上の性能向上を実現」させた技術がいくつも導入されている。本稿では、その中でもG6シリーズを特徴づけている技術をピックアップして紹介しよう。

省電力 - コスト削減のキーポイント

「ITコストの削減」とひと口に言っても、何を削減すれば最も効果的なのか - 日本HPは電力コストを減らすことをまず最初に挙げる。Xeon 5500自体が電力監視機能強化とアイドル時省電力を実現している電力効率にすぐれたプロセッサということに加え、G6シリーズでは「変換効率90%以上のパワーサプライ」「最大25%省電力のDDR3メモリ(DDR2との比較)」「内部温度を広範囲に監視する32個のSmartセンサー」「必要な箇所のみファンを稼働させる冷却システム」といった省電力コンポーネントを採用している。

主力機種のDL360について比較すると、前世代のG5に比べ、高負荷時で27%、アイドル時で45%の消費電力低減が実現している。

基本スペックの向上 = 性能&拡張性の向上

G6シリーズでは、メモリ、HDD、ネットワーク、I/Oポートといった基本スペックも大きく変更されている。上述の通り、メモリにはDDR2に比べ帯域幅が2倍のDDR3を採用し、メモリスロットもたとえばDL380やML370においては8スロット(G5)から18スロットに増え、最大144GBまで搭載可能だ。

内蔵ディスクは最大14TBまで搭載可能なモデル(DL180、ML370、DL370)もあり、SAS/SATAなどのディスクの選択も可能だ。また9月にはG6に対応するSSDドライブも登場する予定だという。

また、仮想化ブートやセキュリティキーのためのUSBポートを搭載している。

スペック周りでの特徴としてはさらに、ブレードサーバのBLライン(BL460c、BL490c)で採用されたオンボード10GbE(2ポート)が挙げられる。1つの10GbEポートを4つのFlexNICに分割可能なので、平均2.5GbE×8ポートとして使用できるHPの独自技術だ。各FlexNICは100Mb - 10Gbの間で自由にセグメントを割り当てることができるため、必要なサービスに必要なだけ帯域を設定できる。

管理/運用性の向上

エントリモデルのDL100シリーズはこれまで管理機能はオプションだったが、G6からは「HP ProLiant Onboard Administrator」が標準装備(内蔵)となった。遠隔操作や稼働状況の監視、電力や温度の監視などの機能がローエンド機でも実現されることになる。また200シリーズ以上では、サーバを複数台運用する際に動的な電力制御を行うことが可能になっている。同モデルだけでなく、ブレード、ラック、タワーが混在する環境でも制御可能だ。

HP ProLiant G6シリーズのメインモデル「DL360 G6」。ムダのないすっきりした設計が特徴

タワー型モデルの「ML370 G6」はコンパクトな大きさながら、最大でメモリ144GB、ディスク容量14TBを搭載可能

未曾有の不況下においての新モデル大量投入は同社にとっても大きな決断だったはずだが、日本HPでエンタープライズサーバ事業を統括する松本氏は、「きびしい環境下でこそ新しいテクノロジのイノベーションが生まれる、それがHPの伝統」と言い切る。「景気が上昇に転じたとき、コスト削減だけでなく、顧客の競争優位獲得に貢献できる製品が必要になる。今回の新製品発表は、次のステージを見据えている企業に向けてのメッセージ」(松本氏) - Xeon 5500搭載機はこれで各ベンダからひととおり出揃ったことになるが、はたして同社はその自信が示すとおり、競合との争いから一歩抜け出すことができるのか、ここ数カ月が大きな勝負どころになる。