KDDIは7日、au携帯電話の新ブランド「iida」の第1弾端末として「G9」とモバイルプロジェクター「Mobile pico projector」を4月下旬から発売すると発表した。デザイナーとコラボレーションし、「ライフスタイルを演出する」(取締役執行役員常務・高橋誠氏)ことを狙う。

iidaブランドの携帯「G9」(右)と「宇宙へ行くときのハンドバッグ」を持つ小野寺正社長

iidaブランドに関しては別記事に詳しいが、その第1弾端末として発売するのが、プロダクトデザイナー岩崎一郎氏がデザインした携帯「G9」と、モバイルプロジェクター「Mobile pico projector」の2製品だ。G9は、01年12月に公開されたコンセプトモデル「GRAPPA」が商品化したもの(GRAPPA 2009で「G9」)。当初のGRAPPAには「いくつか困難があった」(同社)ために商品化が見送られていた。

G9。本体カラーはmirror+silver、mirror+pink、black+greenの3色

ステンレスフレームやチタン合金を使った上質なボディ、傾斜のついたキーなど、上質感や使い心地にこだわったという。端末の製造元はソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズで、内部ソフトとしては春モデル「S001」と同じ世代の端末になるという。S001に比べてPCドキュメントビューアーを追加している。

閉じた状態でも基本的な操作は行える

スライドさせることでテンキーが現れる

本体側面

本体背面

キーの拡大

pico projector(東芝製)は、G9と同じく岩崎氏がデザインし、G9とほぼ同じサイズというコンパクトなプロジェクターで、G9の出力端子と接続して、携帯内のコンテンツを表示できる。表示できるのはワンセグやEZムービー、写真、ドキュメントで、著作権保護されたLISMO Videoなどのコンテンツは出力できない。今後、著作権者側の意向次第では出力できるようになる可能性もあるようだが、可能になったとしてもそれは「次期モデル以降になる」(同社)。

左がMobile pico projector

利用シーンの例

2.5mの距離で最大60インチ相当の画面サイズを出力でき、ワンセグをグループみんなで見たり、ビジネスパーソンがドキュメントビューアーでPowerPointのプレゼンテーションを表示したりといった用途が想定されている。

デザインを担当した岩崎一郎氏

さらに今後、前衛芸術家・小説家として著名な草間彌生氏を起用し、「ケータイをアート作品に一変させる」(高橋氏)端末を3機種発売する。草間氏の作品をモチーフとした「ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい」「私の犬のリンリン」「宇宙へ行くときのハンドバッグ」で、いずれも春モデル「T001」をベースに、草間氏がデザインした。この3モデルは販売数も少なく、「ハンドバッグ」が10万円クラス、「水玉」が100万円前後になる見込みだ。端末の販売もauのショップではなく、草間氏のギャラリーになり、基本的にはいわゆる「白ロム」での販売になるようだ。

草間氏の作品「Infinity Mirror Room-Phalli's Field (or Floor Show)」。1965年の作品

これを製品化したのが「ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい」

ケースを開けると、携帯が収まっている

ACアダプターのケーブルを通す穴もあり、すっぽりと納められる

端末の背面にはエディションナンバーも

ケースには直筆サインがある

ケースに収めた状態でのぞき穴をのぞくと、草間氏の世界が目の前に広がる

前衛芸術家・小説家の草間彌生氏

04年の作品「Hi,Konnichiwa (Hello!)」

この正面の犬のオブジェをモチーフにしたのが「私の犬のリンリン」

このリンリンもセット

背中を開けると携帯が出てくる

85年の作品「Handbag」

ここから作り出されたのが「宇宙へ行くときのハンドバッグ」

ハンドバッグのような見た目となっている

高橋氏によれば、同社のiidaプロジェクトの若手グループが、草間氏の元を直接訪れて携帯のデザインを依頼してところ快諾を得たということで、世界的な芸術家が作り上げた新たな携帯に仕上がっている。

さらにシンプルで低廉なモデルとしてプロダクトデザイナー迎義孝氏による「misora」も用意。これは水と空を掛け合わせた造語で、人が心地よいと感じるカラーを追求したという。また、周辺機器としてACアダプターに葉を付けた「MIDORI」も提供する。「植物が水を吸うように携帯を充電する」(高橋氏)、遊び心を持った充電器だ。さらにコンセプトモデルとして「ガッキトケータイ」(ヤマハデザイン研究所)、「PLY」(神原秀夫氏)、「SOLAR PHONE」(参/MILE、坪井浩尚氏)が開発中だ。

misora

misoraのカラーは、雲の重なり、夕日の色、夜空をモチーフにしている

デザインは迎義孝氏

同社では今後もデザイナーとのコラボレーションを拡大していく考え。すでに8つのコンセプトが一部明らかにされているが、さらにデザイナーからのコンセプトを募り、製品化につなげていきたい考えだ。

まだコンセプト段階のiidaの端末

こちらはまだ商品化が未定のコンセプトの一部

ガッキトケータイの一つ、Key to touch

こちらはSticks in the air

PLY

SOLAR PHONE SOUP

ACアダプターにもデザインを。MIDORI

カラーバリエーションも

「いろいろなデザイナーが力を出し、いろんな発想に基づいてライフスタイルを創出する。いろいろな世界観を繰り広げていきたい」と高橋氏。単に携帯のデザインをするだけでなく、それを使うユーザーのライフスタイルまでを考えたデザインをデザイナーに作り出してもらう。それがiidaだ。今後の同社の展開に期待したい。

さらなる拡大を目指すiida

アクセサリーのコンセプト。最大3人のヘッドホンで音声や音楽をシェアできる

同じくコンセプト。いつの間にか絡まってしまう充電コードを、絡まったままでトレイにしてしまう

2つ1組のケータイクリーナー。片方ずつ持つことで、大切な人と気持ちがつながる、というコンセプト