韓国で1人のタレントが亡くなった事件を巡り、悪意のあるコメントを意味する"アクプル"の問題が、インターネット上で大きな話題となっている。
「腐乱死体発見」でざわめくインターネット
亡くなったのは、数多くのドラマなどに出演していた男性タレント、アン・ジェファン氏だ。同氏は8日、車の中で亡くなっているのが発見された。韓国での報道によると、発見当時の同氏の死体は腐敗が進んでおり、異臭が立ち込めるほどだったという。
死体発見の際、車内から練炭や遺書が見つかっている事、外傷などがない点などから、警察では死因を自殺とみているようだ。
9日の夜明けごろ、このニュースが伝えられると、インターネット上はたちまち「アン・ジェファン」一色となった。
「Naver」や「Daum」を始めとした検索サイトの検索語ランキングには「アン・ジェファン 弔問」「アン・ジェファン遺書 内容」「アン・ジェファン (Cyworldの)ミニホームページ」といったキーワードが躍った。
一方、アン氏のミニホームページには、訪問者が殺到。9月9日の14時30分時点で、19万2,229人が訪れている。訪問録には、9日だけでも3万件以上の弔問コメントが寄せられていた。
自殺の原因は"アクプル"か?!
アン氏は生前より、タレント業以外にも事業を展開していたが、これによる借金や負債などが、同氏を悩ませていたという。
事業の1つに、お笑いタレントでもある夫人をモデルにした、化粧品ブランドの展開がある。この化粧品は2人の知名度もあって、一時はテレビショッピングなどでも紹介されるなど評判となった。
ところがその後、夫人がラジオ出演した際、当時盛り上がっていた米国産牛肉輸入反対デモを否定するような発言をしてしまったことで、化粧品ブランドや2人の評判が落ちることとなる。
ネティズンはインターネット上で化粧品の不買運動を展開。夫人を出演番組から降ろそうと呼びかける運動が展開されたり、アン氏のミニホームページに、悪意あるコメント(韓国では、悪+Replyの合成語で「アクプル」と言う)が連日書かれるなど、インターネット上で激しい攻撃を受けることとなった。
これに加えて映画撮影の中断など、ここのところの同氏には悪い材料が重なっていた。
アクプルが同氏をどれほど追い詰めたかは、今となっては計る由もない。だが、インターネット上では、一時のアクプル攻撃を反省する声が高まっている。
Daumの討論空間「アゴラ」では「故人 アン・ジェファン氏を追慕し、同時にアクプラー(アクプルを書く人の意)の法的処理」と題された署名運動が展開されてもいる。
アクプルによる芸能人の自殺という構図は、以前も韓国で大きな社会問題となった。その後、名誉棄損となる書き込みに対する措置など、法的な規制なども設けられた。
同時にネティズンも大いに反省したが、もし今回も同じ理由での自殺だったとすれば、この反省は生かされていないこととなる。これ以上犠牲者を出さないためには、多くの厳しい規制を設けるよりも、ネティズン1人1人が自らの書き込みを見直す意識改革も大切なようだ。