NTTドコモは26日、年末商戦向けに発売する「905i」シリーズ以降の携帯電話で、新たな販売方法「バリューコース」「ベーシックコース」を導入すると発表した。バリューコースでは従来に比べて電話機の価格が上がるが、毎月の料金が割引きされるので、同じ電話機を長く使うほど得になる。905iシリーズ発売の11月26日より開始する。
両コースでの販売となるのは、905iシリーズおよびそれ以降に発売する電話機(一部指定機種を除く)で、すでに販売されている機種は対象外。また、両コースを選択できるのは新規契約または機種変更時に電話機を購入するときのみで、すでに所有している電話機を持ち込んで契約・機種変更する際は従来通りの体系となる。
バリューコースを選択して電話機を購入すると従来機種の価格帯と比べて価格が上昇するが、従来の料金プランとサービス内容は同じで月額基本使用料が1,680円安い「バリュープラン」が利用できる。例として、最も安い月額3,780円(無料通話分1,050円含む)の「タイプSS」の場合、バリューコースを選択すると料金プランは月額2,100円(無料通話分は1,050円で同)の「タイプSSバリュー」となる。電話機の価格が高くなるので、初期費用を抑えるために12回または24回払いの分割払いも可能とする(一括払いも可)。
電話機を高くして分割払いにする代わりに毎月の料金を割り引く仕組みはソフトバンクモバイルが「(新)スーパーボーナス」の名称で提供しているが、ドコモのバリューコースの場合、12回または24回の分割払いが終了し、電話機代金を払い終わってしまった後も1,680円の値引きは継続するので、同じ電話機を長く使い続けるほど得になる。初年度から基本使用料を半額に割引く「ファミ割MAX50」「ひとりでも割50」も従来通り利用でき、前出のタイプSSバリューの場合、月額料金は1,050円となる。
中間決算発表会で新コースの説明を行った同社代表取締役社長の中村維夫氏によると、905iシリーズの場合およそ2年間使い続けることで、月額料金の累計割引き額が電話機の値上げ分を上回り、得になるという。さらに、今後登場する70Xiシリーズの場合は、電話機の価格が安いため90Xiシリーズよりも短期間で得になるとしている。
一方のベーシックコースはこれまでの販売方法に近いもので、月額料金は従来と同じプランが適用される代わり、電話機購入代金のうち15,750円をドコモが負担するので、バリューコースに比べて電話機が安く、月々の料金が高いことになる。2年間同じ電話機を継続使用することを条件として電話機の値引きを行うため、2年以内に機種変更や解約を行う場合「ベーシックコース解除料」として値引き分の一部を返還する必要がある。解除料は1カ月目に解除する場合15,120円で、以降1カ月ごとに630円ずつ低減される。
いずれのコースも、従来に比べて同じ電話機を長く使うことが推奨される形になるため、新コース提供開始以降は、紛失・故障などが発生した場合に代替機を安く提供するオプションサービス「ケータイ補償 お届けサービス」の月額料金を525円から315円へ値下げし、同サービスへの加入を促進する。同サービスと、紛失時の遠隔ロックや位置検索ができる「ケータイあんしんパック」(210円)のセット割引きも12月1日より開始し、両方のサービスを契約すると月額合計料金が525円から472.5円へと割引きされる。
また、同社では11月26日以降、バリューコース・ベーシックコースのいずれを選択しても905iシリーズを店頭価格から8,400円割引く冬のキャンペーンを実施すると発表した。さらに、来年5月末までにバリューコースを選んだ場合は基本使用料を最大3カ月・最大2,100円割引く。前出のタイプSSバリューの場合、基本使用料が月額2,100円なので、3カ月は基本料金が無料とされることになる。
利用者間での不公平を解決、905iシリーズはGSM標準対応などフルスペック機に
従来の販売方法では一般的に、ドコモなどの携帯電話会社が販売代理店に値下げ原資となる「販売奨励金」を支払うことで電話機の店頭価格を下げていたため、契約者は電話機を安く購入することができ、機種によっては無料で手に入れることも可能だった。しかし販売奨励金は、元をたどれば契約者が支払っている月々の料金から捻出されているため、よく機種変更する人の電話機代を契約者全体で負担していることになり、同じ電話機を長く使う人に不利な仕組みとなっていた。また、この業界構造が月額料金の高止まりを招いているとも指摘されていた。
中村社長は、これまでの販売奨励金モデルについて「携帯電話発展の原動力になっていた」と話しその役割を認めたが、業界が急拡大する時期は終わり、これからは不公平感・不透明感のない新たな事業モデルが必要と指摘。今後の販売方法は「バリューコースに軸足を置く」としており、905iシリーズを購入する人のうち半数以上はバリューコースを選択すると見ている。
また、905iシリーズはFOMAのW-CDMA方式に加え、ほぼ全世界で使用されているGSM方式での国際ローミングに全機種標準対応するなど、「考えられる機能はすべて搭載した」(中村社長)フルスペック機になるという。次々と新機能が登場する動きはこれで一段落し、その意味でも携帯電話の買い換えサイクルは今後次第に長くなっていくとの見方を示した。