欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は25日、携帯電話の国際ローミング料金に関する規制「EU Roaming Regulation」を6月30日に施行することを発表した。同規制は、域内の国際ローミング料金の上限を定めたもので、これにより、ローミング料金は最大約70%下がることになる。
EU Roaming Regulationは、携帯電話を国外で利用した際に課される国際ローミング料金に関する規制で、発信通話料金、着信通話料金、およびキャリア(通信事業者)間で取り引きする料金の3つに対して「Eurotariff」という上限付きの料金制度を設けることを強制している。それによると、ローミング料金は発信の場合が毎分0.49ユーロ(約81円)、受信は毎分0.24ユーロ(約39円)。ECによると、これにより国際ローミング料金は最大で70%下がるという。
対象となるのは音声通話のみで、データ通信、SMS(ショートメッセージサービス)は対象外。EU27カ国内で適用されるが、EUによるとノルウェーなどのEU経済圏でも導入が検討されているという。
EU Roaming Regulationは6月30日に発効となり、加盟国は自国でこの規制を導入しなければならない。これを受け、キャリア各社は7月30日までにEurotariffを提供することになる。すでに自社で国際ローミングパッケージを提供しているキャリアも、Eurotariffを併せて提供しなければならない。
国際ローミングパッケージを利用していないユーザーは、すぐにEurotariffを申し込むことができる。ユーザーからの申し込みを受けたキャリアは、8月30日までにEurotariffを適用しなければならない。また、既存の国際ローミングパッケージに加入していないユーザーには、9月30日までにEurotariffが自動的に適用されることになる。
Eurotariffの料金は2009年まで段階的に下げていき、最終的には発信が0.43ユーロ、受信が0.19ユーロになる。キャリア間の取り引きについては、当初の上限を0.3ユーロとし、2009年には0.26ユーロとしている。
ECでは、今後、各国の規制当局とともに、各キャリアの適用動向を注視していくとしている。また、今回は対象外となったデータ通信、SMSの国際ローミング料金については、「すぐに料金を下げなければ、われわれが介入しなければならない」と述べ、キャリアに警告を送っている。
今回の規制は、2006年7月から施行プロセスに入っており、実際に施行されるまでに要した期間は11カ月。ECによると、これは記録的に短いという。
ECによる規制化の動きを受け、キャリア各社はすでに自社国際ローミングパッケージの料金を下げている。たとえば英Vodafoneでは、接続料として1通話につき75ペンス(約184円)を払えば、自国で加入している料金プランと同じ料金が適用される「Passport」を提供している。