高田サンコ(たかださんこ)
管理栄養士の資格を持つ。代表作はドラマ化もした「たべるダケ」(小学館)など。別冊「ドラゴンエイジEX」(富士見書房)にて「勇者のパーティーに栄養士が加わった!」、Webゴラクにて「めし婚」を連載中。以前までのデジタル環境は約10年前のiMac。Wacom Cintiq Pro 16を使い始めて1年。制作環境はどう変わった?
■もうあなたにも負けない!
高田先生がアトリエでワコムのペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 16」を使い始めて、ほぼ一年が経った。まだまだデジタルだけで完成させるのは不安があり、アナログでのペン入れが基本だが、FAQの読み方も覚え、少しずつ原稿の一部にデジタル処理を施して仕事も効率化してきた印象だ。
投げ縄ツールで囲ってそこだけ塗るといった「できることは知っているけれど、どう操作すればできるか分からない作業」も、ひとつずつ覚えていき、今ではアナログ線画をスキャンして、デジタルで枠線を引き、ベタやトーンを貼るなど、一通りの作業ができるようになった。
ただ、まだ操作に不慣れな部分が多く、操作を間違えたり、正しい操作を思い出すためにFAQにアクセスしたりする。このため、面倒くさい作業は積極的にデジタル化するものの、力を入れたいシーンはアナログで作業したほうが速く終わる状態だ。最近はひとつひとつの作業をもっと短い手順でこなす方法を模索しており、少しずつマスターして「アナログより速く描きあげられる」ようになりたいと思う先生である。
アシA子に泣きつかなくてもだいたいなんとかなるようになったのは、ひとつ前の作業に戻るアンドゥ(Ctrl+Z)のショートカットを覚えたことが大きい。当てずっぽうで試しても取り敢えず元の状態に戻せれば、試行錯誤は怖くない。
先生:ん~。どうも、気に入らないな。やり直すわ。
アシA子:先生はこだわって何度も描き直しがちですよね。
先生:私はね、自分で良いと思える線が一撃で描けないタイプなの。線だけでなく、トーンを貼ったり、集中線を引いたりするときもそう。
アシA子:あらゆる作業がやり直しの対象なんですね。
先生:Ctrl+Zの使いすぎで指が攣りそうよ。でも、Ctrl+Zを押す速さなら、もうあなたにも負けないわ!
アシA子:それ、急いで押す必要ないじゃないですか!
いつも頼りにするアシA子が夏休みを取っている間に、九州在住のアシスタントに手伝ってもらったこともあった。
そのときは、ネットを利用したデータのやりとりもしっかり対応してくれ、地方在住のビハインドがなくなってきていることを実感した。同時に、いまやデジタルで作業できるアシスタントのほうが、アナログで作業できるアシスタントよりも探しやすくなっていることに驚いたものだ。
■アナログ使いだからこそ気が付きにくいこともある
もちろん、先生がトラブルと無縁に過ごしていた訳ではない。
一番困ったのは、納品した連載の原稿を印刷したときにモアレが出てしまったケース。原稿はモノクロの作品だったのだが、印刷所からモアレを指摘されて修正を試みたがどうにも解決できず、時間も押していたために結局そのままいくしかなかったのだ。
先生:このときは本当に困ったわね。
アシA子:次の原稿を仕上げるまでに、調べ上げて解決できたので良かったですが、1話分はそのまま載ってしまいましたね。
先生:40ページ以上もあって、もはや直せる状況でもなかったもの。Ctrl+Zごときじゃ追い付かないわ。
アシA子:原因はトーンを塗るときに、「諧調」を「あり」に設定して塗ったことでした。
先生:トーンを水彩筆で塗る感覚で、濃淡を作りながら塗りたかったのよ。
アシA子:普段、アナログで作業しているからこそ陥りやすいミスですね。
先生:ミスじゃないでしょ。こんなのトラップじゃない!まさか、これが原因で印刷の時にトーンモアレの原因になるなんて思いもよらなかったわ。
アシA子:原因が分かってみるとなるほどなんですけれどね。
原因を突き止め、改めて階調は「なし」にして、カラーの表現色を「モノクロ2階調(閾値)」に設定して塗ることで、印刷時のトーンモアレは防げるようになった。
■すべてのクリエイターの心強い味方であるように
先生:使い始めたばかりのときは、言われているとおりにやっているのに全然上手くいかない!ってよく思ったけれど、最近はだいぶ使えるようになって、面倒な作業も減ってきたわ。
アシA子:先生は勉強していますから!
先生:自分でうまく描けた!って思えるときはやっぱり嬉しいわね。
アシA子:こないだの連載の扉絵はいい出来でしたね!
先生:慣れている人は、筆も自分で調節していい感じで滲む筆を作るらしいんだけれど、まだよく分からなくて上手く真似できないのよね。
アシA子:いまはそこが気になっているんですね。
先生:「ボクの筆はこんな状況」とか、ブログやツイッターで披露している人が結構いるじゃない。そういう人のに限って、誰が読んでも真似できるようには書いてくれないのよ。
アシA子:企業秘密ってことでしょうか。
先生:単に何が書いてあるのか、私がよく分からないだけなのも多そうなところがまた悔しいの。
アシA子:奥が深いですね。
先生:分かるものは、試すとイマイチだったりね。
アシA子:好みの問題ですもんね。
先生:いつか「高田スペシャル」な筆を作って見せるわ!
アシA子:その意気です!
***
高田先生を乗せてその気にさせていく、アシA子のスキルにも磨きが掛かった1年だったと言えよう。
もちろんワコムのタブレットも、日々進化している。より使いやすく、よりクリエイティビティに溢れた作品が思い通りに作れるように。すべてのクリエイターの心強い味方であるように。
これからのマンガはデジタルで覚えていく時代。マンガを描きたいならば、この機会に効率よく、高い自由度をもって描けるワコムのタブレットを覚えてみてはいかがだろうか。
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