食材や料理の絵が多い高田先生。美味しそうな原稿は、紙にGペンで描き込んでいる。そんな先生が制作環境をアナログからデジタルへ一新するまでの道のりを追う本連載。前回はワコムを訪問し、「Wacom Cintiq Pro 16」と「Wacom Cintiq Pro 13」の2機種を試し、ペン入力によるデジタル作画環境の威力にビックリ。今回は「Wacom Intuos Pro Large」と「Wacom MobileStudio Pro 16」の2機種にも触れ、導入するタブレットを決定する。

高田サンコ(たかださんこ)
管理栄養士の資格を持つ。代表作はドラマ化もした「たべるダケ」(小学館)など。月刊ヤングマガジン(講談社)にて「海めし物語」を連載中。今までのデジタル環境は約10年前のiMac。PhotoShopを使っているものの、ブラシなどの機能は使いこなせていない。

ワコム東京支社の前でポーズを取る高田先生。楽しそう

Wacom Intuos Proはいわゆる「板タブ」と呼ばれるボード状のペンタブレットだ。パソコンに接続し、パソコンのディスプレイに板タブ上で描いている内容を表示する。Medium、Largeの2サイズをラインナップする。

Waocm Intuos Pro Large

早速、板タブ上でサラサラとキャラクターの顔を描き始める高田先生。接続したパソコンの画面上にその絵がそのまま表示され「凄い!」と無邪気にはしゃぐ。ワコムの小幡さんはすでに子供を見る目だ。

「ディスプレイが別の板タブのほうが、ブルーライトカットが使えるから良いという話を聞きました」と、誰かに聞いてきた知識を披露する高田先生。

「そうですね。液晶タブレットと板タブレットはどちらも一長一短あります」と、それを優しく受け止めるワコムの小幡さん。

板タブの上に紙を載せ、実際に描くと同じ絵がディスプレイに表示される

液タブだと直感的だが画面が近いから目が疲れやすいという人もいるし、板タブだと正面の画面を見ながら下に描くので、目線がずれて姿勢が不自然になって首が凝りやすいという人もいるのだそうだ。

「中には液タブを導入して、目が疲れたら板タブモードにして簡単な作業だけ進める使い方をする人もいますね。それから、板タブに慣れた人の中には、液タブを使うと自分の手が影になって邪魔だと言う人もいますよ。そんなことを言うとアナログでの作業も自分の手が邪魔になりそうですけれども、それで板のほうが好きと言う人もいますね(笑)」と小幡さん。

アナログで作業している高田先生には「自分の手が邪魔」という表現は衝撃的だったようだ。

続いて、Wacom MobileStudio Pro 16に触れる。こちらはCintiqシリーズと同様の液タブだが、OSを搭載し、同製品単体での利用が可能になっている。CPU、メモリ、ストレージ、グラフィックなどノートパソコンと同様のパーツが用いられており、事実上パソコンだ。

Wacom MobileStudio Pro 16

この製品の良いところは文字通りこの一台で完結すること。他のペンタブレットは入力に特化したデバイスでパソコンに接続して使うことが前提だが、MobileStudio Proならパソコンがなくても作業できるので、旅行や出張、帰省などのときもこの一台を持っていくだけで良い。

パソコンの初心者には、パソコンに接続しなくても使えるだけでハードルが1つ低く感じるところ

「パソコンと液晶ペンタブレットで分かれているほうが、最悪のときに共倒れにならないので安心だと聞きました」と、再び誰かに聞いてきた知識を披露する高田先生。

バックアップはもちろん重要だが、作業環境がダメになってしまうのは、利き腕を怪我するようなものでとても困る。そこに不安を覚えるのは間違いではない。また、Wacom Cintiq Pro 16の重量が約1.5kgのところ、MobileStudio Proは約2.2kgと、先生が持ち運ぶにはやや重たく感じる。

「こうして見ていくと、どの製品にするか迷いますね」と高田先生。

「据え置き用と持ち歩き用で両方導入する人もいますね」と小幡さん。

「それは売れたらですね」(高田先生)。

……頑張れ、高田先生!

高田先生と小幡さんで記念撮影。端末は「Wacom MobileStudio Pro 16」

デジタル化といっても、いきなりアナログを捨て、1からデジタルで作画できるとは高田先生も思っていない。ましてパソコンも日頃それほど使っておらず、必要なときはアシスタントさんにお願いすることも多いという高田先生。

高田先生「原稿を手書きして、それをスキャンしてコマを描いたりしたいです」

小幡さん「もちろん、できます!例えばスキャンしたデータを持ってきて、それが一番のレイヤーにラフとして表示されて、その上で別のレイヤーを重ねて描いていくんです」

高田先生「レイヤー分けするということは、下絵を見ながら上から描けるんですね」

小幡さん「そうです。下書きまではアナログでやって、スキャンで取り込んで、枠線とかトーンだけデジタルでやるのも可能です」

高田先生「それをやりたいんです!」

それなら、スタンダードで画面の大きいWacom Cintiq Pro 16が良いのではないかとなり、しばし検討の結果、最終的にWacom Cintiq Pro 16に決定。

次回はWacom Cintiq Pro 16導入の実際を見ていく。果たして高田先生は無事にデジタル化できるのか!?

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