初めての妊娠。右も左も分からない。そんななかで、人はそれぞれの悲しみや不安、楽しみや喜びを経験していく。本連載は、初産を経験したママやパパの”妊娠中期・後期”にフォーカスを当て、ひとりひとりのトツキトオカに迫る企画です。「仕事」「夫婦関係」「メンタル」の面から見える、それぞれの妊娠中の心の動き。第8回は、パラレルキャリアを実践しつつ、子育てに勤しむガスケール杏子さんに、第一子を妊娠したときのエピソードを伺いました。
自分が妊婦になったことで、ビジネスアイデアがどんどん湧いてきた
結婚前から産前産後サービスの会社を立ち上げ、助産師訪問ケアやヨガレッスンなどのサービスを提供してきたガスケールさん。普段から妊婦さんと接していたものの、自分が妊娠したことで、これまで以上に「欲しいサービス」「欲しい情報」がわかるようになったといいます。
「妊娠してから、『産後の情報が少ない』と思いはじめました。産後3か月以内の人がどんな生活をしていて、何に困っているのかよくわからないな……と。妊娠前はマタニティ中のサービスが多かったのですが、それからは産後のサービスを増やしました」
ガスケールさんが初めて妊娠したのは5年前。お客様と接するなかで『妊娠は何が起こるか分からない』というリスクを理解していたため、出産に対して少なからず不安があったそう。それでもガスケールさんは、ウェブで検索しすぎないことを心がけていたんだとか。
「妊娠したら、多くの人がウェブで検索すると思うんです。でも、『妊娠〇か月で出血した』といったエピソードは個人差があるし、もはやその情報は誰が書いているのか分からない。妊娠は人それぞれなので、ウェブで模範解答を求めず、仕事仲間の助産師さんに解決法を聞くようにしていました」
検索してヒットした内容に「もしかして……」と不安になるよりも、専門家に根拠のあるアドバイスを貰えば、より確実に悩みの解決を図ることができます。ガスケールさんは身体の悩みは助産師、値段などの事実確認はウェブ……と、検索すべきこととしなくていいことを分けることで、不安を煽らないようにしていたそう。
また妊娠前は、ヒアリングのためにお客様のもとへ伺っていたガスケールさん。出産が近づくにつれ、訪問は別のスタッフに頼み、経費精算や承認などメールで済む仕事に絞っていきました。しかし、仕事の休みはとらなかったんだとか。
「もともと管理職は私だけで、他は業務提携や派遣スタッフがメインなので、出産ギリギリまで働いていたし、産後すぐに仕事のやりとりをしていましたね。そんな私を見た職場の助産師さんが『休みなさい』とよく注意してくれたのですが、その環境はとてもありがたかったなと思います」
妊娠前のパフォーマンスを期待せず、『休むのが当たり前』という雰囲気が、精神的にとても気楽だったそう。経営者として忙しい日々を送っていたガスケールさんですが、周囲のおかげで無事出産と仕事を両立することができました。
赤ちゃんの4D撮影を見てから旦那さんの意識が高まった
ヨガインストラクターの派遣サービスを充実させるために、プライベートでもヨガを行っていたガスケールさん。妊娠中もヨガを続けていたことで、身体の調子も良く、つわりなどのマイナートラブルは殆どなかったといいます。それが理由で妊娠5か月目の頃は、意識面で旦那さんとのギャップを感じていたそう。
「体調は変わらなかったのですが、お酒を飲む習慣がなくなり、食事に気を遣ううちに、ママになる実感が少しずつ湧いてきました。しかし目に見えて大きな変化がない私に、主人は子どもが産まれる実感が湧かなかったようです」
ところが妊娠7か月目で、赤ちゃんの性別や表情が分かるようになってからというもの、旅行先で子ども服をたくさん買うなど、旦那さんのモチベーションに変化が!そんな旦那さんを見て、「『やっと同じところに来た』と思って嬉しかった」とガスケールさんはいいます。
その後も旦那さんは、育休を取得するために会社で積極的に動いてくれ、「出産直後に休んだって、入院しているんだから意味がない。退院後に取った方がいい」と上司からアドバイスを受けることもあったのだとか。そのエピソードを聞いて、「会社で子どもの話をしてくれているんだな」ととても嬉しくなったそう。
さらに、育児に便利なモニターカメラなど、たくさんの育児グッズをウォッチリストに入れて積極的に準備してくれた旦那さん。それらの協力のおかげでストレスやすれ違いは特になく、夫婦で妊娠中の準備を進めていくことができました。
産後の家事や仕事のことが心配になったが、旦那さんの一言で気が楽に
仕事も夫婦関係も特に落ち込んだことはなかったものの、メンタル面では少し不安がありました。それは、ベビーベッドやベビーカーなど大きな買い物を検討するようになった5~6か月の頃です。
「産後の生活を想像して『どうなるんだろう?』『大丈夫かな?』と心が少し不安になりました。家事も育児も自分がやるのが当たり前と考えていたので、『家事が回らないかもしれない』と主人に漏らしたんです。そうしたら、『僕も手伝うし、それでもできなければ外注すればいい』と言ってくれて、気持ちが楽になりました」
外注するという対策だけでなく、「できないことがあればできるようにするから大丈夫」という言葉をもらったことが、大きな安心につながったというガスケールさん。以前から週一で依頼していた家事代行を、子守りができて高い頻度で働ける代わりの人を探すなど、産後の準備を進めることで、安心をより明確なものにしていきました。
また出産前、ガスケールさんは「いいとこどり」をしたいという気持ちで、海外の子育て事情を協会のホームページやオンラインのセミナーなどを活用し、調べていたんだとか。
例えば、フランスでは子どもと別室で就寝し、北欧は子どもを抱っこするのは3か月までと、国によってさまざまなスタンダードがあります。そのなかで気になるものがあれば、率先して取り入れ、自分だけの育児スタイルを見つけることを意識していたのだそう。
「もし『いいな』と思ったものが自分に合わなくても、できなかったことに罪悪感を持たず、すぐに切り捨てて本当に必要なものを考えることが大事。私は合わなければ『ビジネスに活かせばいいや』とプラスに転換していました。とにかくいろいろ試して、合うものだけを積極的に取り入れていけば、それは自分だけの「正解」だと思います」
ときに日本のスタイルを貫いてきた助産師さんたちとは意見が合わないこともありましたが、今では『ガスケールさんには合うのね』と認めてくれるようになったんだとか。
「自分でコントロールできないことは気に病まない」という楽観的なガスケールさん。合うものを手に入れて、合わないものは手放す柔軟さで、これからも自分だけの育児を楽しんでいくことでしょう。
最後に、前回インタビューした倉田けいさんの質問「妊娠中の気分転換・ストレス発散方法は?」に答えていただきました。
「ひたすらヨガです。また、マタニティスイミングも、大きな重力がかからないのがよくて楽しんでいましたね」 ※個人の経験談です。運動を行う場合は、まず助産師や産院と相談しましょう。
ガスケールさんが次回の人に聞きたい質問はこちら。
こちらの質問は、次回の方にお聞きします。第9回の連載をお楽しみに!
※本記事はオンライン取材にて実施致しました
[PR]提供:ピジョン