初めての妊娠。右も左も分からない。そんななかで、人はそれぞれの悲しみや不安、楽しみや喜びを経験していく。本連載は、初産を経験したママやパパの”妊娠中期・後期”にフォーカスを当て、ひとりひとりのトツキトオカに迫る企画です。「仕事」「夫婦関係」「メンタル」の面から見える、それぞれの妊娠中の心の動き。第7回は、イラストレーターとして活躍する倉田けいさんにお伺いしました。
引き継ぎ相手がなかなか決まらず、スキマ時間で資料づくり
産前はイラストレーターとして仕事はしておらず、週5日の勤務をしていたという倉田さん。お客さんと関わる仕事のため、万が一穴をあけてしまったら……と、上司に早い段階で妊娠を伝えていたんだとか。幸いなことにつわりはそこまでひどくなかったものの、急な体調の変化を想像できず、周囲に迷惑をかけてしまわないか心配だったといいます。
「子育てをしている方が多い職場なので、妊娠について理解をしてもらいやすく助かりました。しかし、周囲が妊娠を経験しているからこそ、どこまでなら『妊婦だから仕方ない』と思ってもらえるかが分からず、やさしさに甘えていいのか葛藤がありました。」
妊婦であることに慣れてきた5ヵ月目以降は、体調不良や不安から解放され、仕事のパフォーマンスがあがったという倉田さん。しかし、つわりも落ち着き産休も近づいてきた頃、業務の引継ぎについてとても気を遣ったといいます。
「ギリギリまで後任の方が決まっておらず、対面での引き継ぎができないかもしれない状況でした。そこで、自分しか知らない情報をまとめた資料とそれらを一覧できるようなシートを作りました。」
その後、産休に入る前に無事引継ぎの担当者が決まったそう。スキマ時間を見つけて作った資料と引継ぎ相手が業務経験のある方だったおかげで、倉田さんは安心して産休を取ることができました。
生活への不満も、その都度夫婦で話し合ってきた
新婚のときから家事の分担などの不満があると、その都度旦那さんと話し合いをしてきたという倉田さん。妊娠中も何回も話し合い、お互いや今後についての理解を深めていったといいます。
「妊娠中期は体調もよくなり、出産後の準備をしたくなってくるのですが、一緒に選びたいのに夫には知識があまりありませんでした。そのため、『ベビーカーはどんなのがいいかな?私ばかりが詳しいのはいやだし、一緒に選びたいから知っておいてほしい』『私ばかりが調べている気がするのは悲しい気持ちになる』という風に正直に気持ちを伝えていましたね。」
不機嫌になることを知らないぐらい、おおらかな旦那さんに対して、倉田さんは感情のコントロールが苦手。そのため妊娠前から、不満を溜め込む前にこまめに伝えるようにしていたといいます。
その際、不満をただぶつけるのではなく、裏側の気持ちまで素直に伝えているのが、旦那さんにしっかりと伝わる秘訣なのかもしれません。旦那さんは「こういう風に悲しいんだね」と倉田さんの気持ちをまとめつつ受け止めてくれるので、信頼してなんでも話せる関係でいられました。
また妊娠中にパフォーマンスが落ち、「今日も何もできなかった」「横になって終わった」などと落ち込む倉田さんに、旦那さんは「生きてるだけで偉い」と存在を褒めてくれたり、率先して多めに家事をしてくれたそう。そんな一つ一つの言動が、独りじゃない感じがしてとてもありがたかったといいます。
出産は実家が遠いこともあり、旦那さんが育休を取得し、自宅近くの病院で産むことを決意。初めての育児を二人でスムーズにスタートできるよう、足並みをそろえておきたい気持ちがあった倉田さんですが、積極的なコミュニケーションが功を奏し、出産が近づくにつれて二人の絆が強まっていくことを実感したんだとか。
不安と共に過ごすことに慣れてから、妊婦生活が少し楽になった
妊娠初期、倉田さんは赤ちゃんがちゃんとお腹で生きているかどうか常に不安だったといいます。ただ、中期ごろから不安とともにある生活に慣れ、「妊婦を乗りこなし始めた」といいます。
「ある程度慣れてきて『妊婦はこういうものなんだ』と落ち着いたんです。自分の体がままならないことも、赤ちゃんの状態が常にわからないことも、しょうがないと思えるようになりました。ままならないことに諦めがついた、とでもいえばいいでしょうか」
そう思えるようになってから、好きなアニメを見られるまでに元気に。ただそれも「安定期以降であってもトラブルが起きる可能性もあると聞くし、私がこのように過ごせたのは幸運だった」と、健康な妊婦生活を送れたことに今では感謝しているそう。
また、妊婦生活のメンタルの安定に一役買ってくれたのが、イラストやコミックエッセイをSNSに投稿することでした。妊娠中のできごとや心の内をアウトプットすることで、不安を冷静に見つめたり、フォロワーの方と共有して楽しむことができたといいます。
「出産が近づくと、いつ陣痛が始まるともわからない不安に『虚無』を感じていました。自分には全くコントロールができない、宇宙を漂っているような感じです。そんな時って『みんなそうだから大丈夫!』『赤ちゃんとやっと会えるんだよ』と励ましをもらっても、あまり前向きになれなくて……。ただただこの状況をわかってほしいと、イラストや漫画を描いてSNSに投稿したところ、たくさんの人が共感してくれました」
自分の気持ちのために描いたものが、「そうそう、この感じ!」と他の誰かの気持ちを整理したり消化したりできたことが、とても嬉しかったのだそう。日々のアウトプットは倉田さんを支えつづけ、産後のイラストレーターのお仕事にもつながっていきました。
産後も、育児に関するコミックエッセイが人気の倉田さん。これからも育児での新しい気づきや発見をイラストや漫画にすることで、自分や他人の気持ちを整理し、いろいろな心配事も「乗りこなして」行けることでしょう。
最後に、前回インタビューした中村美千代さんの質問「役に立ったマタニティグッズは何ですか?」に答えていただきました。
「三日月形のクッションです。抱き枕としてつかっていました。大きなおなかを支えてくれるので寝るのが楽になりました」
倉田さんが次回の人に聞きたい質問はこちら。
こちらの質問は、次回の方にお聞きします。第8回の連載をお楽しみに!
※本記事はオンライン取材にて実施致しました
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