初めての妊娠。右も左も分からない。そんな中で、人はそれぞれの悲しみや不安、楽しみや喜びを経験していく。本連載は、初産を経験したママやパパの”妊娠中期・後期”にフォーカスを当て、ひとりひとりのトツキトオカに迫る企画です。「仕事」「夫婦関係」「メンタル」の面から見える、それぞれの妊娠中の心の動き。第3回は、SNSで育児マンガ『屋台ヤケミルク』を連載する、はみだしみゆきさんにお話を伺いました。
はみだしみゆきさんは、11ヵ月の男の子と旦那さんの3人暮らし。妊娠中、仕事を頑張るはみだしみゆきさんを同じ職場の旦那さんはいつも気にかけてくれていたといいます。
職場を離れることが寂しいぐらい、仕事が楽しくなっていた
妊娠5ヵ月目に職場に妊娠の報告をしたはみだしみゆきさん。周囲は祝福してくれ、先輩ママが妊娠中について教えてくれたりと、報告したことで心がラクになったそう。しかし、仕事は相変わらず忙しく、22時頃まで残業することも多々ありました。
そして妊娠6ヵ月目になる頃、1年前からデザイン担当として取り組んでいたプロジェクトがSNSで話題になり、大きなやりがいを感じたといいます。
「ずっと陰で支えるような仕事が多かったので、世間で話題になるものを出せたのは、入社して一番の喜びでした。グッズの売り上げが好調なのはもちろん、SNSで『かわいい』『ほしい』といったお客様のリアルな声が聞けたのが本当に嬉しかったですね。」
プロジェクトが大成功して、「来年もお願いします」とクライアントからの嬉しい声。ところが、1年後は子どもが産まれて育休中の予定。一緒に頑張ってきたメンバーが意気込む中、自分だけが新しいプロジェクトに関われないと思うと寂しさを感じてしまいました。
その後も、責任感が強いはみだしみゆきさんは、お腹が張って辛い中、張り止めを飲みながら産休に入るギリギリまで、精一杯仕事を頑張り続けました。
その結果、産休前の仕事の引継ぎはバタバタだったそうですが、「最悪、同じ職場の夫経由で聞いてもらえれば……」と考え、大きな心配もなく産休に入ったはみだしみゆきさん。「やっとゆっくりできる」と思っていたのも束の間、なんと予定日の3週間前に子どもを出産することになりました。
「ギリギリまでフルパワーで働きすぎたせいか、はやめに産まれてしまい、赤ちゃんの体重が少なかったんです。そのとき、もう少し安静にしていればよかったと思いました……。それでも無事、産まれてきてくれたことは本当に嬉しかったです。」
不安がなくなり、大胆に……助けてくれたのはいつも夫だった
実は妊娠を職場に報告した頃、はみだしみゆきさんには不安に思っていたことがあります。
「妊娠中、赤ちゃんの体が平均よりも小さく、母子手帳の胎児発育曲線のギリギリだったんです。『仕事がハードなせい?』『食生活のせい?』と胎児発育曲線を見ながら日々モンモンとしていました。」
そんな日々の中、医師に相談したうえで、「2人でいる今のうちに」と定期的に夫婦でお出かけをしていたはみだしみゆきさん。
妊娠6ヵ月目の温泉旅行を機にある変化が訪れます。
「温泉旅行のあと、少しすると、小さかった赤ちゃんが標準の大きさになっていたんです。そのとき『リラックスできたのがよかったのかな』『気にしすぎもよくないな』と思い、それからというもの、思いつめないようになりました。」
赤ちゃんが標準の大きさになり、楽観的な性格も相まって、すっかり安心してしまったはみだしみゆきさん。仕事中に小走りで走っているところを、打ち合わせをしていた旦那さんに目撃され、「走らないで。危ないでしょ。あなたひとりの体じゃないんだから」とたしなめられたこともありました。
旦那さんは、はみだしみゆきさんと真逆の慎重な性格。職場でも、はみだしみゆきさんがアイディアを出し、旦那さんが細部をチェックするなど、お互いの足りない部分を補い合い、仕事をしてきました。
そのため私生活でも、大胆に行動するはみだしみゆきさんに、「階段を降りるときは手すりをつかんで」といったお願いを旦那さんからしたり、2人で通っていた会社までの経路を、少し遠回りして空いている電車に変更。荷物を持ってくれたり、席を譲ってくれたりと、細かなサポートを旦那さんは欠かしませんでした。
「夫が赤ちゃんのことを大切に思ってくれているとわかって、嬉しかったとともに、夫のおかげで自分が大切な命を預かっているという実感を持つことができました。」
また、妊娠後期には万が一お腹を蹴ってしまったら危ないからと、いつも寝ているダブルベッドではなくソファで就寝。はみだしみゆきさんが好きなコーヒーやお酒も一緒に我慢してくれるなど、常にはみだしみゆきさんと赤ちゃんを第一に考えてくれた旦那さん。そのサポートの甲斐もあり、出産まで常に前向きに過ごすことができたといいます。
楽しかった情報収集の時間が、「今」の楽しみに繋がっている
「赤ちゃんが小さくて悩んでいたときや、産休前のお腹の張りが気になっていたとき以外、メンタルのアップダウンは、ほとんどありませんでした。出産が楽しみで仕方がなく、ずっと子どもの名前を考えていた気がします。もしかすると、心配ごとは夫が担っていてくれたのかもしれませんね。」
妊娠中は情報収集をSNSでしていたというはみだしみゆきさん。先輩ママをフォローしつつ、SNSの育児マンガを読み、楽しく予習を進めていたのだといいます。そしてその頃から、育児マンガを描きたいという思いが募っていきました。
産後から半年経ち、余裕ができたタイミングで、漫画の執筆をスタート。現在は、赤ちゃんが屋台でミルクなどを飲みながら、いろいろと愚痴をいう『屋台ヤケミルク』という作品をSNSで展開しています。
もうすぐ職場復帰をするはみだしみゆきさん。仕事をしながらも、時間を見て漫画を更新していきたいと考えているといいます。復帰後、仕事で忙しい日々を送るかもしれませんが、これまでのように旦那さんとお互いを補い合うことで、きっと仕事も子育ても漫画も前向きに頑張り続けることができるでしょう。
最後に、前回インタビューした和知さんの質問「仕事と体の不安をどう乗り越えましたか」に、次のように答えてくれました。
「心配は多くありませんでしたが、最初は赤ちゃんが小さかったので仕事のせいかもしれない、と思い悩みました。でも温泉旅行がきっかけで大きくなってくれたので、『気にしなくていい』と乗り越えることができました。」
はみだしみゆきさんが次の方に聞きたい質問はこちら。
こちらの質問は、次回の方にお聞きします。第4回の連載をお楽しみに!
ライター:栃尾江美
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