妊娠前は分からないことがたくさん。プレママプレパパさんは、これから起こる出来事に楽しみや不安、悩みなどさまざまな感情が入り交じっているのではないでしょうか?

本連載では、夫婦の間に起こりうる新生児期の「認識のズレ」やそれらの埋め方を実際の夫婦にインタビュー。家事・育児を夫婦で”一緒にする”ことが、浸透しつつある昨今ですが、どうしてもお互いの認識の「ズレ」は生じてしまいがち。未来に起こるズレとそれらの埋め方をさまざまなご家庭の形から紐解いていきます。

今回お話をお伺いするのは、1才の娘さんを持つ恵理さん(34)と幸夫さん(34)。お二人が直面した「ズレ」はどのようなものだったのでしょうか?

おむつ交換や授乳の苦労にズレが……

東京に住むお二人。恵理さんは実家がある大阪で里帰り出産をし、2ヵ月ほど過ごしました。LINEで毎日のように幸夫さんとコミュニケーションを取り、夜中に授乳する時には都度報告。離れていても、子どもの状況や、お世話の大変さを感じてほしかったからなのだそう。その甲斐あって、「こんな時間に起こされるんだ」と幸夫さんも大変さを感じていました。

しかし、このようにていねいなコミュニケーションをしていたものの、恵理さんが実家から戻り、二人で育児をするようになってからは、さまざまなズレを感じるようになったと言います。

「おむつ交換はしてくれていたのですが、ウンチのときは私ばかり処理しているように感じて。もしかして『気づいていないふりをしているのでは……』と思ったんです」と恵理さん。

何となく感じていた不満を幸男さんにぶつけてみたところ、「ウンチのおむつ交換いやなんだ」との言葉。恵理さんは「自分の子どもなのに!」と強い苛立ちを覚えてしまいました。

幸男さんは当時、「正直、ウンチに触ることに抵抗があって、母親のほうが里帰り中に何度も行っていて慣れているからお願いしたいと感じていた」のだそう。「知らず知らずのうちに、ウンチをしそうなときには、娘が恵理さんのほうへ行くよう仕向けていた気がする」と言います。

おむつ交換以外にも、恵理さんが不満に思っていたのは授乳のことでした。母乳をうまく飲ませられず苦労していた時に、泣いてしまうこともあったのです。

「一人で泣いていたところに夫が帰ってきて、泣き顔に気づいたはずなのに何も言ってくれなかったんです。授乳は母親の仕事だと考えてしまいがちだけど、苦労していると分かってほしかった。何も言わなくても気づいてくれるだろうと思っていたので、夫に対して感情的になってしまいました」

その時、「どうして何も言ってくれないの!?」と気持ちを伝えた恵理さん。突然責められたように感じた幸男さんはとても驚き、最初はイラっとしたものの、その時をきっかけに、本音を言える関係性を築いていくことになります。

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お互いに言いたいことを言って、建設的に話し合う

二人の間で起こった意識のズレは、どのように解消していったのでしょう。幸夫さんはこう語ります。

おむつ交換は『気づいたほうが換える』というルールにして、幸男さんはとにかくおむつ交換の数をこなしていくことに。最初は抵抗があったものの、自身で『おしりふきを大量に使ってもいい』などのルールを設けるなどして、今では「慣れれば何とかなる」と感じています。

「授乳のつらさには、気づいていなかったし、母親にしかできないことはあまり声をかけないほうがいいのかな、と考えていたのもあります。でも、はっきりと気持ちを告げられたとき、相手の気持ちにすべて気づいてあげることはできないと気づきました。だから、『俺は言ってくれないとわからないから、これからは何でも言ってほしい』と伝えたんです」

お互いにケンカのような口調になることもありましたが、それ以上は感情的にならないようにルールを決めて、「次に同じようなことが起きたらどうするか」という建設的な対話を心掛けているそうです。

恵理さんは、話し合いをしてから、夫婦の変化を感じていました。

「今までは私もどこかで、言わないでもわかってくれるだろうと思っていました。でも、夫から『言われないとわからないこともあるから、言って欲しい』と言ってもらえてから、不満を伝えたほうが解決策を一緒に見つけられると気づき、『やって』とお願いするようになりました。授乳の際にも、お願いできるシーンでは、ミルクを頼むようにしています」

「つらい気持ちをわかってほしい」と思っていた恵理さんですが、幸男さんは言葉よりも行動で示すタイプなのだそう。恵理さんが日中のお世話をしている分、幸男さんは積極的に帰宅後のお風呂や寝かしつけ、夜中の授乳もしています。恵理さんはその行動を見て、自分や子どもへの思いやりを感じているのだとか。

夜遅かった幸夫さんの帰宅時間は少しずつ早くなり、仕事を持ち帰っても、育児にも時間をあてるようになりました。

「僕が意識していない部分で怒られるのは嫌なので(笑)、できるところは全力でやっています。『気づいてほしい』と言われても、夫婦とはいえ元は他人だから難しい。気づけるように頑張るより、分かっていることに力を注ぐことにしたんです」

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変な気遣いをせずに思ったことを話し合う

さまざまなズレを解消していくことで、お互いに言いたいことが言えるようになった二人。

恵理さんは、子どもが生まれる前まで夫に「何となく気を遣っていた」と言います。

「最初のころは『育児はできるだけ私がやったほうがいいんじゃないか』と、気持ちをセーブしているところがありました。でも、『イラっとしたらその時に言ってほしい』と言われて、何でも言えるようになりましたね。それ以来、変な気を遣ってなんかいられない、と考えるようになりました」

幸夫さんも、子どもが生まれる前と後では夫婦の関係が変化したと感じています。

「結婚するのと、子どもができて家族になるのはステップが違うと感じています。言い換えると、夫になるのと父になるのは違う。仕事から帰宅した後や、休みの日の時間の過ごし方にしてもそうです。妻に余裕がなければ、話し合いをしてギャップを埋めるアクションを取る必要があります。僕の場合は、話し合いによって当事者意識を強く持てるようになったと思います」

最後に、これからパパとママになる皆さんに伝えたいことがあるかお伺いしてみたところ、恵理さんからは「今だけの二人の時間を楽しんでほしい。また、生まれた後は自分の時間が減るので、人やものなど、頼れるものは頼って一人で抱え込まないでほしいです」とのメッセージ。

幸夫さんは、「当事者意識は父親になってみないと生まれないんじゃないかと思います。ただ、子育てを始めると日に日に実感していくので、『変わる覚悟』をしておくといいかもしれませんね」と言います。

不満があれば何でも伝えて、建設的に話し合ってきた二人。それが解決につながると分かっているので、たとえケンカになったとしても、怖くないそうです。

「今後は教育のことなどでズレが生じるかもしれません」と幸夫さんは言いますが、それでも今回と同じように解決していくのでしょう。ズレ自体はどうしても起こりうるもの。大切なのは「建設的な会話をしてお互いのすり合わせを行う」ことだと、二人は教えてくれました。


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