家事・育児を夫婦で”一緒にする”ことが、浸透しつつある昨今。2人だからこそ、スムーズにこなせることも多いですが、お互いの認識の「ズレ」にもどかしさを覚える方もきっといるはず。

例えば、食器洗いひとつとってみても、片方が「食器を洗えばOK」と思っているのに対し、もう片方は、食器を洗って、シンクを掃除して、フキンを変える……までが全ての行程と認識している場合もありますよね。

本連載では、そんなタスク前後工程での夫婦のすれ違いを『ズレ家事』『ズレ育児』と称し、「なぜ起こるのか」「どうすれば解消するのか」を様々な分野の専門家をゲストとしてお招きし、共に考えていきます。

今回は、ファザーリング・ジャパンの理事である村上誠さんに、ズレ家事、ズレ育児の解消法や、家族でチームのように助け合っていける秘訣をお伺いしました。

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Talk to ... 村上誠 / ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人孫育て・ニッポン理事、NPO 法人いちかわ子育てネットワーク理事、秘密結社主夫の友総統

父親の育児・家事参画、夫婦関係、祖父母の孫育て、地域での子育て支援など幅広い家族・育児テーマを取り扱い、全国で講演活動やイベント出演をしている。兼業主夫。妻、祖父、長男(2006年生)、次男(2012年生)の3世代5人家族。


パパも子育てや家事をしたいのに、支援が少ないのでは?

――村上さんが理事をなさっているファザ―リング・ジャパンとは、どのような活動をしているのですか?

ファザ―リング・ジャパンは父親支援のNPOとして活動して、14年になります。講演活動や情報発信、国の活動のための助言などのほか、新しい言葉を広めるなど、ムーブメントを起こし、メディアに露出するといった活動も得意としています。

――父親に特化しているのは、どういう理由なのでしょうか?

諸外国では父親支援の活動が進んでいましたが、日本では母親を支援するという考え方がほとんど。ところが、父親も子育てしたい、というニーズはあるはずです。そこで、パパも手助けが必要だと定義するところからスタートしました。

――確かに「やりたい気持ちはあるけど、どうすればいいかわからない」という言葉を周囲からもよく聞きます。

男性が家事育児をしたくても、させてもらえないという社会的な目があるのも確かです。その呪縛から解放したい、させたい、という思いがありますね。近年、女性に仕事と家庭の両立が求められているのと同様、男性も仕事での責任を果たしつつ、家事育児の参画を求められます。そのため、家と仕事の間で板挟みになりがちなんです。

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夫婦の願望やボーダーライン、スイッチなどの違いが「ズレ」を生む……?

――村上さんは主夫をなさっていることもあり、家事を多く担う側の気持ちもわかると思います。両方の視点から、「ズレ家事」「ズレ育児」はなぜ起こると思いますか?

まず、理想とする暮らし方の違いがあるのではないでしょうか。ミニマム、シンプルに暮らしたい人と、コレクター気質でいろいろ集めたい人とでは、ズレが生じてしまいます。

――理想とする姿が違ったら、家の中はまとまらなくなってしまいますね。

そうなんです。他に、ボーダーラインの違いがあります。「ここまでは散らかってもOK」という許容範囲が違うんですね。同じ状況を見ても、夫が「まだ大丈夫、気にならない」、妻が「散らかっていてイライラする」と違う感じ方をすると、妻ばかり片づけることになり、夫はいつまでも気が付きません。

――それはよくありそうです……。

あとはスイッチの違いもあります。男性は、仕事のスイッチしかなくて、オンといえば仕事モード、家庭の時間はオフという人が多い。でも、女性は仕事と家庭の両方のスイッチがあるんです。帰宅する時には、仕事をオフにして家庭のスイッチに切り替えてオンにしているんですね。帰りの電車で「夕飯は何にしよう」と考えながら帰宅するわけです。

男性は、「家に帰れる」とオフにしたままの人が多い。それでは帰宅してからの行動が全く違ってしまいます。男性も、家庭のスイッチを持つ必要があるでしょう。

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――ズレが生じるにはさまざまな理由があるのですね。解消するにはどのような対策をすればいいでしょうか?

例えば耐えられるボーダーラインが違う場合は、すり合わせが必要ですよね。「気づいたほうがやる」ではなく、どこまで散らかったら片づけようといったルールや基準を決めたり、スケジュールを合わせて一緒に家事をやるといいです。特に女性は「察してほしい」人が多いように思います。男性から敏感に感じ取る努力も必要でしょうね。

――家事のほかに、子育てのズレは最初が肝心だと思いますが、何か対策はありますか?

女性は妊娠や出産で体調の変化があった時にママとしてのスイッチが入りますが、男性は父親の自覚ができるまでタイムラグがあります。パパスイッチがオフのまま子育てに入ると差が付く一方ですので、産後のママの体調やメンタルヘルスの情報を得たり、イメージしておいたりする必要があるでしょうね。ファザ―リング・ジャパンでは、早めに「パパスイッチ」が入るように、プレパパママ講座も広めようとしています。

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家族をチームとしてフレキシブルに!

――長い夫婦生活、大切にしたいことは何だと思いますか?

お互いに仕事や子育てに忙しいと、子どものことや家のことなど、夫婦の会話が業務連絡ばかりになってしまいます。でも、意識してお互いのことを話したほうがいいでしょう。デートをしたり、ランチの時間を取ったりするといいですよね。

おいしいもので満たされると、血糖値も上がり、優しい気持ちで話ができます。僕は家のいろいろなところにお菓子を忍ばせて、妻が煮詰まっている時に渡したりもしますよ。

――お菓子はいいアイデアですね! 喧嘩も減りそうです。最後に、これからの家族はどんな姿になってほしいと思いますか?

夫婦の形はいろいろあるのが当たり前。ひとつのものに固執する必要はなく、流動的でいいと思います。どちらかが忙しい時は、もう一方がカバーに回ればいいんです。スポーツのダブルスのようなかたちですね。僕は最近の情勢もあって講演などの仕事が減った分、妻の仕事に協力したり家事の割合を増やしました。

夫婦どちらも家事育児ができることは、家庭にとってリスクヘッジになる。チーム「我が家」として考え、公共のサービスや地域の仲間、便利な家電の力を借りてやりくりするといいんじゃないかと思います。

――スポーツのダブルスのように家庭を切り盛りするのは理想的ですね。村上さん、ありがとうございました。


「ママだから」「パパだから」と考えすぎることなく、「お互いの違い」を認識してすり合わせていく姿勢を持ちたいですね。

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