みなさんは「STEM」という言葉をご存じでしょうか? Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、先進国のなかでも、日本はSTEM分野の仕事に携わる女性が圧倒的に少ないと言われています。
そこで、企業のSTEM分野で活躍している方々との交流を通し、「STEMの仕事をもっと身近に感じてほしい」「将来の選択肢を広げてほしい」という想いから企画されたのが、東京都主催の“女子中高生向けオフィスツアー”です。
第6回は、話題の半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)で開催したツアーの様子をお届けします。
話題のAI半導体メーカー
NVIDIAの仕事内容って?
NVIDIA オフィスツアープログラム
“謎のAI半導体メーカー”から世界が大注目の企業に! NVIDIAの仕事とは?
NVIDIAの日本オフィスを訪れたのは、20名の女子中高生。はじめに、NVIDIA日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝さんがNVIDIAの歴史やAI時代に大切となることなどをお話し下さいました。
日本トップが語る、AI時代に必要なことは?
NVIDIA日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝さん
「NVIDIAは1993年に半導体メーカーとして設立しました。高性能な3Dグラフィックスを実現するためのソフトウェアとハードウェア、特にGPUの開発に注力し、1999年に最初のGPUをリリースしました。現在では半導体メーカーとして業界トップクラスのシェアを誇っていますが、実は7年ほど前まで”謎のAIカンパニー”と呼ばれていたんですよ(笑)。NVIDIAの技術が使われているChatGPTが話題になったことで、弊社の名前を世の中に知ってもらえるようになりました」
そして「AIはこれから先、あって当たり前の時代になる」と続けました。
「今後は、パソコンがあればどんな人でもAIを作り出せるようになります。貧富の差も、住んでいる地域の差も、ジェンダーの壁もない。そこで一番必要になってくるものが、”気づき”です。感度を高めて、何が起こっているのかを知ることが大事。今日はぜひ、半導体やAIの世界で今何が起きているのかを知って、気づいて、楽しんで下さい」
NVIDIAの仕事とは? GPUって、何?
続いて、マーケティング本部広報の中村かおりさんが会社説明をして下さいました。勤続18年目の中村さんは、NVIDIAのプロモーションを担当しています。
マーケティング本部広報の中村かおりさんによる説明
説明映像は、シリコンバレーにある本社社屋の紹介からスタート。まるでSF映画に出てくるような壮大なスケールの建物で、その規模感に圧倒されます。
次はNVIDIAを紹介するにあたり欠かせないGPU(画像処理装置)についての説明がありました。GPUとは、Graphics Processing Unit(グラフィックス プロセッシング ユニット)の略で、1999年にNVIDIAが発明したものです。「一般にコンピューターの「脳」と呼ばれるCPUは逐次処理を得意としていますが、GPUは並行処理が得意なので画像の高速処理などを行うのに優れています(中村さん)」その後2006年には「CUDA」という開発環境を生み出し、それに対応するGPUの性能向上が図られたとのことです。「CUDA」とは、GPUの並列処理能力を活用して高性能な計算を実現するためのツールキット。CUDAの登場により、機械学習や画像処理などさまざまな分野で大きな進歩がありました。続いて中村さんは、AIが活躍し始めた経緯とNVIDIAの今後のヴィジョンを話してくれました。
CPUの逐次処理とGPUの並列処理の違いについて、ピザの配達を例に分かりやすく解説してくれました。
「AIをみなさんが身近に感じ始めたのは、アルゴリズム、データセット、GPUという3つの要素が揃ったからです。これらの要素を総合して初めて、開発者は開発をどんどん進められるのです。GPUの用途はゲーミングや製造、ヘルスケア、物流、気候変動予測などさまざま。NVIDIAは今後も、社会の課題をコンピューティングのパワーで解決できると信じて事業に取り組んでいきます」(中村さん)
最先端技術体験でAIとおしゃべり。「スーパーヒーロー」に変身!
その後参加者は2グループに分かれ、「AI デモツアー」と、女性社員への質問会「Ask me anything」に参加しました。
AI デモツアー体験のひとつ目は、リアルなデジタルヒューマン「James」と会話をするというもの。NVIDIA本社に勤める実在のJamesさんをベースに作ったAIで、こちらから英語で質問をすると英語で返答してくれます。参加者は「James」に対し、「好きな食べ物は?」「どこ出身?」「NVIDIAではどんな仕事をしているの?」などの問いを投げかけ、すぐに返ってくる回答に「ハンバーガーが好きなんだって!」などと、英語での会話を楽しんでいました。
「James」との会話を体験する参加者
そして会場には、「James」を動かしているというコンピュータも登場。社員の方が「この世界のことをできるだけ知ってほしくて」と、かなり貴重なものだという大型GPUとCPUを特別に持ってきてくれました。見るだけでなく触ることもでき、コンピュータに興味をもっているという参加者は、夢中で観察していました。
「NVIDIA GeForce」について説明を受ける参加者
もうひとつの技術体験は、NVIDIA開発の「NVIDIA GeForce」というGPUが入っているパソコンで生成AIを活用したデモとして「スーパーヒーロー」に変身できるというもの。参加者の顔写真を撮りそのデータを取り込むと、たちまちコミックブックに出てくるようなヒーローとなって画面に出現! 「うわー、マッチョ!」「髪の毛が緑色になったー!」などと、変身した姿を前にみんなで大いに盛り上がりました。
生成AIでスーパーヒーローになった参加者たち
「顔写真のデータをアップロードし、指示文のテキストを入力します。例えば『スーパーヒーロー』『緑と白の服を着ている』などです。さらに姿勢の参考画像をアップロードしてポーズを指定すると、AIが顔の特徴を認識抽出して画像を生成するのです。NVIDIA開発のGPUだからこそ、高速での生成が可能なんですよ」と、社員の方が説明してくれました。それぞれの「スーパーヒーロー」の画像はステッカーに加工され、参加者へプレゼントされました。
スーパーヒーローになった参加者のステッカーが配布された
女性社員への質問が続出!熱気にあふれた質問会
もうひとつのプログラムは、グループに分かれて女性社員への質問会「Ask me anything」です。デジタルマーケティング担当の藤山裕子さんと永田聡美さん、エンジニアの村上真奈さんと広報の中村かおりさんが、中高生の質問に答えてくれました。
女性社員たちへの質問会
- Q.
職場はどのような雰囲気ですか?
- A.
-
NVIDIAがまだ小規模な会社だったときは、創始者も社員全員の名前を把握していました。彼は、今でも日本によく来て現場の声に熱心に耳を傾けています。アットホームな雰囲気は昔と少しも変わらないまま、プランを次々と実現させていく。本当に夢のある会社です!(中村さん)
- Q.
育児中でも女性は働きやすいですか?
- A.
-
リモートワークができるなど、子育てをしながら快適に働ける環境が整っていますよ。それに、NVIDIAではさまざまな国の人が働いています。性別も国籍も関係なく、キャパシティが大きい会社だと思っていただけるといいと思います。(藤山さん)
- Q.
文系でもNVIDIAで活躍できるのか、不安です。
- A.
-
日本オフィスには営業の仕事をする人が多いので、理系よりも文系出身の人が圧倒的に多いです。文系でもまったく問題ありません!(永田さん)
- Q.
法律に興味があります。理系の企業でも、法律の分野で役立つことは可能でしょうか?
- A.
-
理系の職場では、技術面において特許を申請することもありますし、その際に法律を専門にしている人がいると大変助かります。(中村さん)
- Q.
仕事で大変なことは何ですか?
- A.
-
大体のことは、最初は上手くいきません(笑)。ゴールを定めて、その過程でどういうことを成果と捉えるのかを、お客様とちゃんと話し合うことを大切にしています。そして事例化するところまで成果が出ると、充実感を得られます。(中村さん)
参加者の質問に女性社員たちは熱心に回答していました。
- Q.
将来の仕事はどのように決めればいいか、アドバイスをお願いします。
- A.
-
日本には「石の上にも三年」ということわざがあって継続が大切と言われることが多いですが、NVIDIAには何度もキャリアチェンジして転職してきた人が何人もいます。なので、自分自身のステージに応じてキャリアを変える柔軟さはあっていいと思います。アンテナを張りながら自分が居やすい場所を選んでいけば、新しいチャンスにつながります。(村上さん)
好きこそものの上手なれ。どんな理由でもいいから、まずは好きなことを始めてみて、合わなければ別のことに切り替えればいい。難しく考える必要は全くない。(中村さん)
何を選択しても正解! その後どうしていくのかは自分次第。(藤山さん)
少しでも何かに興味があったら、チャレンジを。そうすれば幅が広がる!(永田さん)
どのテーブルでも活発に意見交換が行われていました
そしてラストは、エンタープライズマーケティング本部 本部長の堀内朗さんが参加者にエールを送って下さいました。
「今の時代、情報を得ようと思えばデジタルですぐに調べられるのに、みなさんは今日ここにわざわざ足を運んでくれました。その行動力が、何よりも素晴らしいです。自分で切り開いてアクションを起こすのは、とても大事なこと。今日の自分の行動力を、ぜひ褒めてあげて下さい!」
エンタープライズマーケティング本部 本部長の堀内朗さん
参加者の感想は?
私はパソコンに興味があるのですが、得意な教科は文系です。NVIDIAは理系なので私は働けないのかなと思っていましたが、今日お話を聴いて、仕事をするチャンスはあるのだなと実感が湧きました。貴重な体験ができました!
私は財務の仕事とジェンダー問題に関心をもっています。そのことを社員の方にお伝えすると、NVIDIAのCFO(最高財務責任者)は女性だと教えて下さり、私が求めていた会社だ! と思いました(笑)。参加して、とてもためになりました。
女性活躍推進を担当している社員から 中高生に向けてのメッセージ!
女性の力は社会を変える原動力です。自分の可能性を信じて一歩踏み出してください。あなたの夢や目標を大切にし、自分を信じ、挑戦し続けてください。
あなたの活躍が社会を豊かにし、次の世代の道を切り開く力になります。応援しています!(人事部 光野ゆかりさん)
次回のオフィスツアーは「富士通」お楽しみに!
オフィスツアーレポート一覧
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