みなさんは「STEM」という言葉をご存じでしょうか? Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、先進国のなかでも、日本はSTEM分野の仕事に携わる女性が圧倒的に少ないと言われています。
そこで、企業のSTEM分野で活躍している方々との交流を通し、「STEMの仕事をもっと身近に感じてほしい」「将来の選択肢を広げてほしい」という想いから企画されたのが、東京都主催の“女子中高生向けオフィスツアー”です。
第1回は、ユニクロやGUでおなじみの株式会社ファーストリテイリングで開催したツアーの様子をお届けします。
デジタル×アパレル
アパレル企業で活躍するIT職って、
どんな仕事をしているの?
ファーストリテイリング
オフィスツアープログラム
ファーストリテイリングのIT職とは?
ファーストリテイリングの本社を訪れた約40名の女子中高生。ユニクロやGUはもちろん知っているけど、アパレル企業でSTEM関連の仕事って? と興味津々です。
「セルフレジ」に詰まったITの力とお客様への想い
最初に登壇したのは、デジタル業務改革サービス部の杉山 聡明さん。
「IT(情報技術)と聞くと、何かのシステムを作ったり運用したりするイメージがあるかもしれませんが、我々の部署は、ITを使ってビジネス自体を革新させていくことを目標にしています」。企画、生産、販売など事業のあらゆる領域においてITが使われるのを、具体的な例を織り交ぜながら説明してくれました。
説明を熱心に聞く参加者
説明を熱心に聞き入る参加者が特に興味を持ったのが「店舗のセルフレジ」です。ユニクロのセルフレジは、レジのスペースに商品を置くだけで、瞬時に購入した点数と価格を正確に読み取り、合計金額を表示します。RFID(無線自動識別)を用いたICタグを導入することにより複数商品を瞬時に読み取ることを可能にしており、ファーストリテイリングの持つ先進的な技術を一番身近に感じられる場所となっています。
現在はBOXに買い物かごを入れるだけで正確に点数を読み取る仕組みですが、開発当初は平らなセンサーに乗せて感知する仕組みだったとのこと。このときは周囲の商品も感知してしまうなどのエラーが発生していたとのことで、改良に改良を重ねて今の形にたどり着いたそうです。また、現在はICタグで在庫数を管理できていますがこの技術を導入する前は手作業で売れた数を数えて管理していたとのこと……。ITの力が業務効率化に大きく貢献していることがわかります。
業務効率化におけるIT技術の活用方法について、興味深そうに聞いていました
「お客様には、待たずにお会計ができる仕組みを提供し、また、スタッフはレジで対応する必要がなくなり、他の作業ができるという業務効率化の面でもメリットがあります。ここで重要なのが、ユニクロのセルフレジはバーコードを読み込む従来のタイプではないということ。世の中にないものを作りたい! という考えをもとにディスカッションを重ね、お客様にとって最高に楽しいものを作り上げるのが我々の仕事です」(杉山さん)
ファーストリテイリングのIT職特徴1
IT職社員のモチベーションは「世の中にないものを作りたい!」「お客様にとって最高に楽しいものを作りたい!」という想い
ITの力でお客様が「今」欲しいものを作る、届ける
eコマースチームからは、オンラインストアやスマホアプリについて説明がありました。オンラインで商品を購入できる仕組みは「近所に店舗がない人やハンディキャップがある人など、すぐに買い物に行けない人を含め、すべてのお客様が商品を気軽に買える環境を整えたい」という想いで開発したそうです。その利便性から日本では月間1,000万人以上もの人が利用しているというから驚きです。
オンラインストアやスマホアプリの操作画面
さらに、データ分析チームによる「生成AIの力もお客様満足度の向上に大いに役立っている」という話も、興味深いものばかりでした。お客様が商品に対してどのようなことを思っているのか、傾向をAIに分析させ商品化につなげているというのです。たとえば、今年(2024年)の2月に発売し、現在も追加生産を行うほどの大ヒットとなっているGUの「バレルレッグジーンズ*」。
データ分析により、お客様が今求める商品を世に送り出すことに成功した事例です。
*太ももから膝周りがゆったりした曲線のバレルレッグジーンズ
AI分析を参考に商品化された、GUの「バレルレッグジーンズ」
ファーストリテイリングのIT職特徴2
お客様の声をITの力を使って見える化! さらなるヒット商品を作り、お客様の要望に応える!
スピーディな配送を可能にするITの力は巨大倉庫にも
サプライチェーンマネジメントチームからは、商品の保管方法や配送方法の裏側を教えてもらいました。これらの作業も自動化しているため、迅速な対応が可能なのだとか。本社の1~3階にあるという巨大な倉庫では、商品の積みおろしから、人の手が届かない天井近くでの高所作業まで、その多くをロボットが行っています。そして配送する商品は、自動かつ高速でレーンを流れてきて、再びロボットが梱包してラベルを貼ります。
お客様が、ネットやアプリで午前中に商品を注文すれば、早い場合は翌日の夕方には手元に届くのだとか。ファーストリテイリングでは、お客様に満足いただくために、あらゆる場面でSTEMを役立てているのです。
キレイ! オシャレ!
ファーストリテイリングのオフィスを見学!
次は、ファーストリテイリングのオフィスを見学。はじめに、オフィス内に3ヵ所あるという食堂のひとつに向かいました。たちまち中高生から「うわー!」という歓声が。広々とした食堂からは東京湾を見渡せ、海を見ながら食事ができます。この光景を前に、中高生たちのテンションはMAXに。
食堂を見たあとは、広く長い廊下を歩いてミーティングルームへ。廊下の途中には、所々に大きめのソファが置かれ、ゆったりとしたスペースのミーティングルームでは、社員の方々が会議を行っていました。
従来の会議室のイメージとは違い、開放感のあるミーティングルーム
そして、たどり着いたのは、壁面いっぱいに多くの本が所蔵されているライブラリー。ファッションやアート関連の本、ビジネス書、雑誌など幅広いラインナップが揃い、すべて貸出が可能。コーヒーを飲みながら本を読んでいる社員の方もいて、社内のあちこちにリラックスできる空間があるのが印象的でした。
オシャレなカフェのような雰囲気のライブラリー
ファーストリテイリング社員との
トークタイム&質問会
プログラムの最後は、グループに分かれて、社員の方々への質問会が行われました。各グループにIT職の方が2名参加し、中高生からの質問に回答しました。
答えた人
-
五木 隼人さん
他社でIT職を経験後、12年前に入社。「ファーストリテイリングは、ITを活用した大規模なビジネスを世界中で展開しています。そのような大規模のITに携わることができたら、やりがいを得られるのではないかと思い転職しました」。現在は、業務効率化のためのIT機器選定を担当。
-
今野 友香さん
ファーストリテイリングのブランド「Theory」や「PLST」のシステム企画からシステム導入までを担当。10年前に入社した当時は、IT未経験。「自分が考えたことがサービスとして使われるようになるという経験はとても刺激的。未経験でも大丈夫です!」。
- Q.
国によって売られているものが違うと思います。それは、どのように選んでいるのですか?
- A.
-
「品揃えにおいても、ITの力が役立っています。国によって、気候や文化、風土は違います。さらに、各国の競合他社ではどのようなものが売れているのかなどもリサーチして、どの商品をメインで販売するかを決めます。たとえば、暑い国だからといって、ヒートテックが売れないわけではないんです。以前、シンガポールの現地責任者の発案で、ヒートテックをお店に置いたところ、かなりの売れ行きを見せました。なぜなら、国内から寒い国へ行く人がお土産として購入してくれるからです」。(五木さん)
常識にとらわれていると、なかなか考えつかないことも、ITの力を使えばビジネスのアイデアが生まれ実現するということに、中高生は驚きの様子でした。
熱心に社員の方々に話を聞く参加者たち
- Q.
仕事をするうえで大切に思っていることは?
- A.
-
「私は毎日、なんでこんなに仕事が楽しいんだろう⁈と思っています。それは、職場の人間関係が良いからなんです。向上心が高く、自分の意見を持っている人ばかりなので、交流しているだけで刺激をもらえます。ぼーっとしていると置いていかれちゃうので、食らいついていくぞ! という気持ちで、お客様に喜んでいただける企画の開発を頑張っています」(今野さん)
「あらゆることに対して、“自分ならどうアクションを起こすか”ということを大事にしています。ファーストリテイリングは、前例のない未開の地に行こうとしている会社なので、目標に向かう途中で、さまざまな問題に直面します。この時にどう意思決定して動くのかが大切。ルーチンワークはAIに任せていればよくて、人間にしかないパーソナリティや価値をどう発揮していくのかが重要です」(五木さん)
現段階よりもさらに良いものを作っていくために、お二人とも自分自身を磨く努力を重ねていらっしゃることが伝わってきました。
- Q.
学校の「情報」の授業でプログラミングを学んでいるのですが、そこで得る知識は今後必要なのでしょうか?
- A.
-
「ファーストリテイリングで仕事をする場合は、プログラムを書くといった技術面よりも、プログラムを理解することが大事だと考えています。そこで何をするのか、何ができるのかということがわかっていれば、自分の発想を実現に結びつけやすいですから。実際にプログラムを書く担当者に対して『こういうものを作りたい』という思いをいかに正確に伝えるか。そちらのスキル磨きを重視するほうがいいと思います」(五木さん)
「入社した当時、私はITの知識が全くなかったのですが、自分がこうしてみたいと思うことを絵に描いて周りの人に説明していました。そういった経験を積み重ねたことで、今があるんです。弊社代表・柳井正の言葉に『一勝九敗』というものがあります。10回新しいことを始めれば9回は失敗する、失敗を恐れるなということですが、どんなにうまくいかなくても、チャレンジを続けて、やりたいことを実現させていく。この姿勢でいれば、得られることだらけですよ」(今野さん)
参加者の感想は?
まずはITについて理解することが大事だとわかったので、これからは意識して勉強していきたいと思います。今回のオフィスツアーはとてもためになったので、機会があればまた参加したいです
IT=理系というイメージがあったけど、そうでもないのだなと思いました。私は文系ですが、この会社に入ってITの仕事をしてみたいです! そして、めっちゃ活躍したいです!
などという声が多く挙がり、大盛況でした。
最後はオフィスツアー参加者全員で記念撮影
ファーストリテイリングを支えるIT職社員から 中高生に向けてのメッセージ!
ファーストリテイリングを 支えるIT職社員から 中高生に向けてのメッセージ!
今回のオフィスツアーではテクノロジーで、どう「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」のかを軸にIT職のお仕事の紹介をしました。今後皆さまが進路を選ぶにあたって、「自身は何に貢献したいのか、そのために何を極めるか」を考える一助になればと思います。そして何年後か?…… 皆様と一緒にお仕事ができたら嬉しいです。皆さまのこれからを応援しています! 頑張ってください!(デジタル業務改革サービス部 IT戦略室 原田 綾子さん)
次回のオフィスツアーは「サイバーエージェント」お楽しみに!
[PR]提供:東京都