これまで計3回の連載でお送りしてきた、NEXCO東日本が実践する「高速道路事業を通したSDGs/CSRへの取り組み」について迫る本企画。好評につき続編の制作が決定! 第4回となる今回は、新潟工事事務所で「磐越自動車道4車線化工事」を担当している高鍋陽祥さんが登場します。
NEXCO東日本にて積極的に取り入れている、建設事業の生産性向上へつながる「i-Construction(アイコンストラクション)」が導入された現場での、仕事内容や地域の方々との関わりなどについてお話を伺いました。
高鍋 陽祥さん
2019年、NEXCO東日本入社。仙台管理事務所で橋梁塗装工事、土質調査、床版取替の工事と設計を経験後、本社にて東京外環自動車道事業の調整業務に従事。2023年より、新潟工事事務所新潟工事区で磐越自動車道4車線化事業(三川工区、安田工区)の工事と設計を担当している。
NEXCO東日本 新潟工事事務所の仕事内容とは
磐越自動車道 4車線化工事とは?
――高鍋さんが担当している新潟工事事務所での業務を教えてください。
磐越自動車道の三川IC~安田IC間で、暫定2車線区間を4車線化する事業を行っています。この事業には、区間内の宝珠山トンネル、小松トンネル、草水高架橋、小松上の沢橋の工事も含まれます。
――2車線の高速道路を4車線にするということですか?
そうです。2車線のままだと、上り線と下り線がそれぞれ1車線ずつしかありません。そうすると、たとえば何かしらの自然災害を受けて片方の道が使えなくなった場合、1車線しか利用できなくなり緊急車両などの通行に支障が生じます。そのため、災害への対策強化を目的に片側を2車線にする工事をしております。
最新のIT技術を導入! アイコンストラクションとは
――「磐越自動車道4車線化工事」の、他の工事現場にはない特色を教えてください。
本プロジェクトでは、建設事業の生産性向上へつながる「i-Construction(アイコンストラクション)」を実施しています。工事を発注するタイミングで、この取り組みを採用してみませんかというお話をいただき、当社で初のモデル工事としてスタートしました。
――アイコンストラクションとは、いったいどういうものなのですか?
ICT(情報通信技術)を活用して、効率性・安全性・品質が高い工事を実現させる取り組みです。「磐越自動車道4車線化工事」で実際に取り入れている技術は、3D設計データの使用やコンクリートの遠隔吹付などによる「トンネル内作業の完全自動化」を目指した検討など、多岐にわたります。
――取り入れるICT施工メニューは、どのように決めるのでしょうか?
当社では初めての試みなので、一つひとつを試しながら必要なメニューを探っている状態です。決め方としては、受注者から提案のあったメニューを基に、私が所属する新潟工事区のチーム内で話をして、支社の担当部署に相談したうえで決定します。とはいえ、予算が限られているので多くの手法があるなかで、より効果的な手法を取捨選択することが非常に難しい課題でした。
――試行錯誤のうえで取り組まれていると思うのですが、初めてのICT施工に戸惑う作業員さんもいらっしゃるのでは?
そうなんです。トンネルの作業機械にICTを初めて取り入れた際、新しい技術に戸惑われた方もいらっしゃったと思います。そのなかで、受注者(元請け)にも協力を得ながら、ご理解いただき、頑張っていただきました。
――「アイコンストラクション」の実施はNEXCO東日本のSDGs/CSR活動の一つに位置づけられると思います。導入してみて感じたメリットを教えてください。
生産性と安全性が格段に向上する点が大きなメリットです。たとえば、コンクリートの吹付作業は、以前は作業員の方が地山の近くで作業していました。ICTを活用することで、遠隔カメラで確認しながら手元のコントローラーを動かすことで吹付ができます。たとえ地山が崩れたとしても、その場に人はいないので、大きな事故を防ぐことができます。
――新技術を採用している工事区ということで、本日私たちがお邪魔している「4車線化事業情宝館」には、多くの見学者がいらしているそうですね。
ありがたいことに昨年(2023年)6月のオープン以来、すでに1,200人の方にご来館いただいています。現場との遠隔作業の立会いやVR技術の体験など、建設業界の人材育成の場にもなっています。
――NEXCO東日本のSDGs/CSR活動コンセプトは「地域をつなぎ 地域とつながり 未来につなげる」ですが、今回の工事においては地域住民の方々へどのような配慮をされていますか?
現場近くにお住まいの皆様には、高速道路工事に対して不安を持っていただきたくないので、説明会などで工事状況をきちんとお伝えしています。ありがたいことに、ご理解・ご協力をいただきながら工事を進めることができています。
NEXCO東日本だからこそ得られるやりがいとは?
――高鍋さんは、NEXCO東日本初の試みを担当されていますが、入社6年目としてはかなり大きな役割ではないでしょうか?
私自身もそう思います(笑)。最先端の工事現場をこんなに早く任せてもらえるとは思ってもいませんでした。今は、工程管理、調査、設計業務の進捗確認などを担当しており、何か不備が起きた場合は受注者と話し合い、上司に伝えるという橋渡し役のような役割を担っています。責任感と自立心、コミュニケーション能力も育まれますね。
ひとりで進められる仕事は一つもなく、工事業者の方々、県や市の方々、河川の管理をされている方など、さまざまな関係者と連絡を取りながら業務を進めています。
――工事事務所での仕事は、ご自分で希望したのですか?
そうですね。管理の仕事を3年間担当させていただいたのですが、次は造る側の仕事をやってみたいと希望しました。もともとは橋に興味があって、大学では橋梁の勉強を専攻していたんです。明石海峡大橋などの大きな橋を見るのが好きで、いずれは造ってみたいな、と。そして、大きな建造物を残す仕事がしたいと思い、NEXCO東日本に入社しました。
――それが今では、道とトンネルを造っていらっしゃるのですね!
不思議なもので、そういう展開になっています(笑)。工事事務所に異動してきたばかりの頃、4車線化工事はすでに始まっていて、わからないことだらけでした。トンネルのことも土のことも勉強不足で、専門用語が飛び交うけれど全然理解できない状態で……。幸い前任者と1ヵ月間一緒に仕事ができたので、いろいろと教わりながら自分でも勉強しました。技術的なことを学ぶ楽しさを味わえるのは、この仕事ならではだと思っています。
――事例のない段階からの数年単位の大きなプロジェクト。周りからの注目度も高いと思いますが、重圧を感じることはありませんか?
ないです! 今は目の前にあることに一所懸命で、ただ前を向くのみです。とてもやりがいを感じています。
――現在の仕事で最も達成感を味わったときのことを教えてください。
トンネルを掘っているときに出てきた土というのは、盛り土の材料として使われるのですが、一度、巨大な硬い岩が出てきたことがありました。その場合、岩を割らないと盛り土として使えません。そして、これを割るための機械を現場に搬入しないといけません。この件について、上司に相談したところ、機械搬入に納得してもらえました。予算が決められているなかで案が通ったので、このときは達成感がありました。
――普段は、何人体制で仕事をしているのですか?
新潟工事区は、社員4人(上司と、私を含めて担当者が3人)と施工管理員さん9人の13人体制のチームで動いています。
――プロジェクトがスムーズに運んでいる背景には、チームの皆さんの団結力もあるのでしょうね。
毎月1回、新潟工事区と他二つの工事区の若手社員と施工管理員さんが集まって、ミーティングを行うのが決まりになっています。毎回、10~15人で30分ほど情報交換をするのですが、この時間が楽しくて。ミーティングのあとはみんなで食事に行くのが決まりです。ちなみに、食事の時間のほうがミーティングよりも長いです(笑)
NEXCO東日本が実現する、これからのSDGs
――アイコンストラクションを最初に導入した工事事務所として、今後のビジョンを教えてください。
4車線化事業は、第一に災害に強い道路を造ることが目的です。そのうえで、産業と技術革新の基盤を造ることも意識していきたいです。たとえば、ICT施工を一般化できるよう、我々がやっている作業内容を記録に残すなどです。ミスについてもきちんと伝え、その後の工事に役立ててもらうなど、技術を次世代につないでいければと思っています。
――では最後に、高鍋さんご自身の目標や夢をお聞かせください。
入社前は「橋を造りたい」「大きいものを造りたい」と言っていた私が、今ではトンネルや土の盛り方についても知識を身につけることができました。この経験をもとに今後もいろいろなことに挑戦していきたいです。また、4車線化工事が終わって道が完成したら、1番目に車で走りたい。それが、今の私の夢です!(笑)
NEXCO東日本のSDGsとCSRまとめ
・災害対策強化のため、暫定2車線区間を4車線化へ
・「アイコンストラクション」で、生産性と、現場の安全性が格段に向上
・工事の説明会を開催し地域住民に丁寧に報告、関係性を作る
・産業と技術革新の基盤を造り、最新技術を次世代につなぐ
[PR]提供:東日本高速道路株式会社