家庭でもオフィスでも、そのほかいろいろな場所で使われている「蛍光灯」だが、2027年末までに製造と輸出入が禁止されることが決定している(水銀に関する水俣条約第5回締約国会議)。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた国策も関連し、今後はLED照明への置き換えが加速していくだろう。
各種の照明製品を手がけているパナソニック エレクトリックワークス社も、2024年10月1日のプレスリリースで「蛍光灯の生産を2027年9月末までに終了」と公表した。同社によると、このニュースには大きな反響があったとのことだが、「蛍光灯」や「LED照明」について間違った情報で覚えている人が思いのほか多いという。そこで、「蛍光灯」や「LED照明」に関する基本的なこと、蛍光灯をLED照明に交換するときに注意したいことをまとめてみたい。
仕事場所に行ったとき、実家に帰省したときなど、天井を見上げて「この蛍光灯、そろそろLED照明に交換しようか」と思っていただけたら幸いだ。
器具? ランプ?
「蛍光灯」と聞いて、どんなモノを想像するだろうか。多くの人は、細長い直線型の照明(直管形)や、家庭の天井でよく使われている丸形の照明が頭に浮かぶはずだ。
最初に覚えておいてほしいのは、蛍光灯の照明には「器具」と「ランプ」があること。ランプとは、文字通り上記の直管形や丸形など光る管、器具はランプを取り付ける部分や「蛍光灯」(ランプを除く)という照明を構成する全体を指す。
「LED蛍光灯」は存在しない?
蛍光灯とは、放電や電子、蛍光体を利用して光を生み出す仕組みを用いた照明のこと。仕組みについてここでは詳しく触れないが、対してLED照明は、LED素子に電圧をかけることで直接光を発する。つまり、蛍光灯とLED照明はまったくの別物だ。
ちまたでは「LED蛍光灯」なる照明が売られていたりするのだが、本来の意味ではこのような照明は存在しない。「蛍光灯」は商品名・製品名ではないのだ。ただ、それに近い認識がある程度一般的になっているのも事実だろう。そしてこの認識は、ときに発煙・発火や火災という事故を引き起こす可能性がある。
蛍光灯器具とLEDランプを組み合わせて使うことに関しては、一般社団法人 日本照明工業会(JLMA:Japan Lighting Manufacturers Association)や消防庁などから注意喚起がなされ、各地の自治体でも注意を呼びかけている。
蛍光灯をLED照明に交換するときは、蛍光灯の「器具ごと取り換え」を推奨
オフィスなど住宅以外で多く使われている直管形の蛍光灯については、現在の蛍光灯(ランプ)をLED照明に交換するだけ――というLED照明製品もあるが、一見すると問題なく使えても、蛍光灯器具の仕組み上、危険性が拭いきれない。
通常、蛍光灯の器具には「安定器」という電流・電圧を調整する制御装置が内蔵されている。安定器には複数の種類があり、それぞれに対応した適切なランプを装着しないと、やはり発煙や発火の原因となる。「形が同じだから交換すれば使えるだろう」ではすまされない。
既存の蛍光灯器具でLED照明(ランプ)を使いたい場合、器具内部の安定器を無効化する電気工事が必要だ。日本照明工業会でも規格化しており、ガイドラインを発行している。
安定器の寿命は10年程度と言われている。見た目には異常なくても内部では劣化が進み、発煙や発火、ひいては火災につながる恐れがある。
例えば、オフィスの天井にある直管形の蛍光灯を、ランプだけLED照明に交換したとする。この場合、直管形蛍光灯器具の安定器が使われ続けるため、寿命を超えた過度な長期使用になりがちだ。上図のように、古い蛍光灯器具を使い続けると、安定器以外にも器具の劣化リスクが生じる。
ではどうするかというと、蛍光灯の器具ごとまとめてLED照明に交換することだ。これは日本照明工業会も推奨している。
また、LED照明は蛍光灯と比べて、製品にもよるが消費電力が約半分と少なく、寿命も長い(一般的な蛍光灯の寿命は約6,000時間~12,000時間の点灯、LED照明の寿命は約40,000時間)。昨今は電気代が高くなっているし、蛍光灯(ランプ)の価格もかなり上昇している。長い目で見れば、LED照明に丸ごと交換するコスト的なメリットも十分あるだろう。
ややこしい「LED電球」との違い
余談だが、LED電球の存在もコトを分かりにくくしている。LED電球は、電球(ランプ)側に電源回路を内蔵しており、ソケット側にはない。よって、既存の白熱電球や、電球タイプの蛍光灯からそのまま交換するだけで使えるのだ。安全性にも問題なく、これは一般的な住宅でも住宅以外でも変わらない。
一般家庭では?
一般的な住宅の天井に取り付ける照明は、ほとんどが「引っ掛けシーリング」だ。引っ掛けシーリングと照明器具の着脱は資格なしで行えるので、やったことのある人も多いと思う。
引っ掛けシーリング対応の照明に関しては、既存の蛍光灯から新しいLED照明への交換も簡単だ。既存の照明を外して引っ掛けシーリングのタイプを調べ(スマホで写真を撮っておく)、家電量販店などで対応するLED照明を購入して取り付ければよい。また、玄関や廊下などのダウンライトは口金タイプが多いだろうから、口金に合うLED電球を買ってきて交換するだけですむ。
注意したいのは、キッチンや洗面台の手元照明だ。これらは短い直管形の蛍光灯が使われているケースが多く、上述した直管形の蛍光灯器具と同じ構造をしている。内部に安定器があって経年劣化が避けられないため、既存の蛍光灯(ランプ)だけをLED照明に交換することはおすすめできない。
結論としては電気工事が必要なのだが、キッチンや洗面台の手元照明が設備と一体的になっていたりすると、工事も面倒になる。器具とランプをまとめて交換しようと思っても、現在の設備にマッチするLED照明(特に器具)があるとは限らない。蛍光灯が製造できなくなるリミット(2027年末)が近づく中、こうした蛍光灯の存在は、電気工事士の人手不足と合わせて業界でも課題として認識されている。
まずは電気店に相談を
まとめると、電球タイプや引っ掛けシーリングの照明は、対応するLED照明へと手軽に交換できる。照明を付け替えるだけだ。
問題は直管形の蛍光灯。ランプだけをLED照明に交換することは避け、状況に応じて電気工事を依頼するか、既存の蛍光灯器具とランプをまとめてLED照明へとリプレースすることが推奨される。
ただ、世の中には非常に多くの蛍光灯製品があり、中には上記の前提が当てはまらない例外も少数ながら存在する。日ごろ何気なく使っている照明も、電気を使う機器である以上、正しく利用しないと重大な事故を招きかねない。
蛍光灯の製造と製造と輸出入が禁止となる2027年末が近づくにつれ、工事が混み合ったり製品の納期が長くなったりすることが予想される。特にオフィスや小規模事業所といった仕事の場所においては、蛍光灯からLED照明へと早めにリプレースしておきたいところだ。工事の期間や導入コストなどを一度、電気工事を請け負っている事業者に相談してみてほしい。
[PR]提供:パナソニック エレクトリックワークス社