サウジアラビアのアニメーション制作会社・マンガプロダクションズと東映アニメーションが共同制作したアニメ『アサティール2 未来の昔ばなし』が、毎週日曜朝7時から、テレビ東京系列にて放送されている。放送に先立ち、10月28日には、東京・TOHOシネマズ六本木にて「東京プレミア試写会」が開催された。出演声優の大空直美、野沢雅子のメッセージをはじめとするイベントレポート、マンガプロダクションズCEOであるブカーリ・イサム氏が取材陣に語ったアニメ業界の未来を通して、今作の魅力をお届けしよう。
『アサティール2 未来の昔ばなし』(以下『アサティール2』)は、2020年に公開された『アサティール 未来の昔ばなし』(以下『アサティール』)の続編にあたるアニメ作品。前作は世界40以上の配信プラットフォームにて放送され、1億回以上の視聴回数を記録。シーズン2となる今作も世界中のさまざまなプラットフォームで多言語配信されることが決定しており、日本ではテレビ東京系列にて地上波放送されている。
「アサティール」は、アラビア語で「昔ばなし」を指す言葉。今作は、今から少し未来のサウジアラビア西海岸・NEOM(ネオム)にある「オクサゴン」という海上都市に、小学6年生の少女マハの家族が引っ越してくるところから始まる。マハは、両親、弟のライアンとスルタン、猫型ロボットのアニスと楽しく暮らしているが、時に悩んだり困ったりすることも。そんなとき、いつも大好きなアスマおばあちゃんが、素敵なアラビアの昔ばなしを語り聞かせてくれて……。少し未来の風景も描きながら、サウジアラビアの昔ばなしに楽しく触れられる作品だ。
マンガプロダクションズCEOのブカーリ・イサム氏は、「日本のアニメから、日本語だけではなく、夢を諦めないこと、家族や仲間を大切にすること、さまざまなことを学びました」と目を輝かせ、「日本国内での地上波テレビ放送を発表できることを、嬉しく思います。東映アニメーションの素晴らしい制作チームとサウジアラビアの才能が協力し、国際色豊かな作品を完成させました。アラブ世界を少しでも知っていただけるきっかけになれば」と、完成の喜びを言葉にした。
東映アニメーション顧問の清水慎治氏は「2011年4月にサウジアラビア・リヤドに招待され、アラビア地方の民話集のアニメシリーズを作ってほしいと相談されました。生活も文化も風習も違う中で、中東の昔ばなしが作れるのか悩みましたが、あれから13年半が経ち、断らなくてよかったとつくづく思います」と制作のきっかけとなった日々を回顧。マンガプロダクションズのプロデューサー、アルジジャクリ・ヌール氏は「時間をかけて、愛情をこめて、アニメを作るということはどういうことなのかを、東映アニメーションの皆さまから学ばせていただきました」と、パートナーである東映アニメーションへの感謝を語った。
メインキャストの少女・マハの声を務めた大空直美は、サウジアラビアの民族衣装・アバヤを羽織って登場。「アスマおばあちゃんが語る昔ばなしをきっかけに、主人公マハやその兄弟達が背中を押されたりヒントを得たりして、前に進めるようになる素晴らしい作品です。サウジアラビアに行ったことはないのですが、食事のシーンなどを見て、どんな味がするんだろう? とか、触れたことの無い文化を感じることができました。行ってみたくなります」と、異文化交流を楽しみながら、声を収録したと話した。
マハの祖母・アスマおばあちゃん役を務めるのは野沢雅子。大空は「野沢さんは尊敬する大先輩。孫を演じさせていただけて、幸せな時間だった」と共演を振り返る。そんな野沢からはビデオメッセージが寄せられた。
「この仕事をしていて良かったのは、いろいろな国の生活を知れることです。どこの国でも人との繋がりというのは変わりないと思います。自分から行動しないと繋がることは出来ないです。またどこの国でも善悪の常識は、基本的には同じだと思います。現在世界でアニメを楽しんでいただいていますが、アニメから学ぶことは多いと思います。子どもさんにまずアニメを観ていただいて、生きていく上で大切なことを学び、年齢を重ねて大人向けの物語を観てまた学ぶことが良いことだと思います。ではまたね、マッサラーマ(アラビア語訳:またね)!」
さらに、本編第1話のプレミア上映後には、オープニングとエンディング曲を歌う渡部沙智子が登場し、オープニングテーマの「未来の昔ばなし」を歌唱。異国情緒あふれるメロディを伸びやかな歌声で響かせ、会場を大いに盛り上げた。
試写会終了後、マンガプロダクションズCEOのブカーリ・イサム氏が囲み取材に応じ、今作に込めた思いや今後の展望を語った。
――『アサティール』シリーズのアピールポイントは?
日本では子どもをターゲットにしたアニメが少なくなっている中で、『アサティール』は、家族で観ることのできる作品。サウジアラビアの物語を日本のスタイルで世界にお伝えできることも、とても貴重な機会だと考えています。
――前作は世界40カ国で1億人以上が視聴するなど、大きな成果を上げることができましたが、反響への思いは?
コンテンツだけでなく、「日本とサウジアラビアの協力のもと作られた作品」だという背景も評価していただけたと感じています。“MADE INサウジ”でも“MADE IN日本”でもなく、共同制作の“MADE INサウジWITH 日本”だったからこそ、世界に対して新しい価値観を提案することができたのではないでしょうか。
――日本の子どもたちをはじめ、視聴者にはどのように作品を楽しんでもらいたいですか?
私たちは子どもの時に日本のアニメを観て育ち、非常に素晴らしい影響を受けました。だから、これは日本への恩返しなのです。私たちに素晴らしい体験をさせてくれた日本の皆さまに、サウジアラビアの物語を見て、少しでも楽しんでいただきたい。それがこれからの生活のパワーになれば幸いです。
――今回のように、サウジアラビアと日本の共同制作作品が日本の地上波で放送されるというのは、非常に画期的なことですよね。
実は中東でも、影響力のあるテレビ局にて、金曜日の夕方5時という注目を集める時間帯で『アサティール2』が放送されることになっています。さらに北米、南米、欧州でも、多言語で。私たちがどんなに素晴らしいコンテンツを作っても、見ていただければ意味がありません。地上波放送されることで、日本の皆さまに少しでもサウジアラビアを近くに感じていただければうれしいですし、この作品が、また未来の日本とサウジアラビアの共同制作につながればと思っています。
――サウジアラビアでは日本のアニメはどのように受け入れられているのでしょうか。
マンガプロダクションズは、サウジアラビアの政府関係省と協力して、350万人のサウジ学生に対してオンラインで、無料でマンガを教えています。おそらく世界で唯一の試みではないでしょうか。AIの時代だからこそ、マンガやアニメというツールを用いて、次世代の想像力を養うことに投資したい。マンガを教えることで、考える力、自分のアイデアを実現する力、チームで作る力を身に着けていただきたいと思っています。私たちから見て、アニメやマンガは、商品ではなくこれからの未来を創るための大切な文化なのです。
――サウジアラビアといえば、日本の代表作『ドラゴンボール』のテーマパークができることも話題になりました。
そうなんです! マンガプロダクションでは、日本のIP(知的財産)の活用にも力を入れています。日本のIPを活用して、テーマパークやイベントなど、多くのビジネス展開をしていきたいと考えています。
――マンガプロダクションズとしての今後のビジョンをお聞かせください。
5年前は2本ほどしか制作していなかった私たちが、今は10本ほどの作品の制作を同時並行させるまでになりました。これからも日本の皆さんと一緒に多くのビジネスやプロジェクトを進めていきたいですし、一緒に世界で活躍していきたいです。日本のアニメ市場は3,400億円と言われていますが、サウジは現在1,300億円で、1/3ほどです。しかし2030年までに、2倍、3倍になる可能性を秘めていると私は考えています。まだまだ開拓できていない地域も視野に、日本の企業と一緒にアニメビジネスを拡大していきたいです。
約30年後の2055年、日本とサウジアラビアは国交樹立100周年を迎える。日本のアニメで”夢を諦めないこと“を学んだというブカーリ氏の夢は、そのとき、「日本のリーダーがサウジのリーダーが『子供のとき、アサティールを見ました』と話し、素晴らしいパートナーシップを構築すること」だという。「そのために、これからも継続してコンテンツを作っていきます。コンテンツは平和へのパスポートだから」。ブカーリ氏の夢の道しるべである『アサティール2』で、“MADE INサウジWITH 日本”を感じ、日本人もなぜか懐かしさを覚える、サウジアラビアの昔ばなしを是非楽しんでほしい。
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